78 / 544
辺境伯の提案
しおりを挟む結局レティシアは、ウィルフレッドの膝に乗せられたままである。
「アバンス団長、婚約についてです。明日、こちらから公爵家に訪問させて頂いて書面を交わそうと思っております」
「はい、両親にも話はつけております。明日午後という事で」
「えぇ、私はそれでかまいません。して、一つ聞きたい事がありましてね」
「何でしょうか?」
「昨日、夜会でおっしゃっておられた事ですが・・・何故、公爵家の嫡男であられるあなたが、辺境への婿入りを希望されていたのです?」
「それは・・・一年前に視察に行った際に、辺境の騎士の強さを知りました。私はまだまだだと痛感したものです。この環境でもっと高みを目指したいと思いました。しかし、それは建前の話です。実のところ、近衛騎士の団長というのは、中々私的な時間がとれないのも事実なのです。このまま騎士団長を続けていけば、きっとレティシア嬢との時間がとれない。そんな状態など、今の自分には耐えれません。一時たりとも離れたくないのです。ならば、辺境の騎士達と鍛錬に励み、あの環境でレティシア嬢とたくさんの時間を過ごしたかった。だから辺境に行きたいと望んだのです」
「そうでしたか・・・そこまで娘を望んでもらえるのは嬉しい事です。アバンス団長、一つ提案なのだが」
「はい・・・提案とは?」
「昨晩の夜会でお話ししたように、辺境は、アルバート殿下を婿として受け入れるつもりです。その為、アルバート殿下付きの護衛や側近は辺境への同行を希望するでしょう。それを無碍にするのも可哀想だ。しかし、全ての者が辺境へ行くわけではありません。王都に残る騎士達は、別へとまわせるはずです。そして、提案というのが、視察の際にアバンス団長に稽古をつけてもらった若い騎士が多数、王都への騎士団へと転属を希望しております。騎士団長の任はお忙しいのはわかる。しかし、あなたに憧れている騎士達がいるのも忘れないでやって欲しいのですよ。実際の職務は若い者を育てると思って、指揮に重きをおいてはどうかと思うのです」
「辺境伯・・・宜しいのですか?辺境の騎士が減っては戦力が・・・」
「大丈夫ですよ。辺境の騎士達は強い。次々に次世代が育っています。そしてアルバート殿下の外交の手腕にも期待しているのです。大いに利用させて頂きますよ。他国との外交がうまくいけば、小競り合いも無くなるでしょうし、なんとかなりますよ」
辺境伯ギルベルトは自信あり気に笑って見せた。
ーーーーーーーーーーーーー
次回
アバンス団長は警備や護衛などで娘と話す時間などなかったのではないですか?
7
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。
※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる