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辺境伯の提案
しおりを挟む結局レティシアは、ウィルフレッドの膝に乗せられたままである。
「アバンス団長、婚約についてです。明日、こちらから公爵家に訪問させて頂いて書面を交わそうと思っております」
「はい、両親にも話はつけております。明日午後という事で」
「えぇ、私はそれでかまいません。して、一つ聞きたい事がありましてね」
「何でしょうか?」
「昨日、夜会でおっしゃっておられた事ですが・・・何故、公爵家の嫡男であられるあなたが、辺境への婿入りを希望されていたのです?」
「それは・・・一年前に視察に行った際に、辺境の騎士の強さを知りました。私はまだまだだと痛感したものです。この環境でもっと高みを目指したいと思いました。しかし、それは建前の話です。実のところ、近衛騎士の団長というのは、中々私的な時間がとれないのも事実なのです。このまま騎士団長を続けていけば、きっとレティシア嬢との時間がとれない。そんな状態など、今の自分には耐えれません。一時たりとも離れたくないのです。ならば、辺境の騎士達と鍛錬に励み、あの環境でレティシア嬢とたくさんの時間を過ごしたかった。だから辺境に行きたいと望んだのです」
「そうでしたか・・・そこまで娘を望んでもらえるのは嬉しい事です。アバンス団長、一つ提案なのだが」
「はい・・・提案とは?」
「昨晩の夜会でお話ししたように、辺境は、アルバート殿下を婿として受け入れるつもりです。その為、アルバート殿下付きの護衛や側近は辺境への同行を希望するでしょう。それを無碍にするのも可哀想だ。しかし、全ての者が辺境へ行くわけではありません。王都に残る騎士達は、別へとまわせるはずです。そして、提案というのが、視察の際にアバンス団長に稽古をつけてもらった若い騎士が多数、王都への騎士団へと転属を希望しております。騎士団長の任はお忙しいのはわかる。しかし、あなたに憧れている騎士達がいるのも忘れないでやって欲しいのですよ。実際の職務は若い者を育てると思って、指揮に重きをおいてはどうかと思うのです」
「辺境伯・・・宜しいのですか?辺境の騎士が減っては戦力が・・・」
「大丈夫ですよ。辺境の騎士達は強い。次々に次世代が育っています。そしてアルバート殿下の外交の手腕にも期待しているのです。大いに利用させて頂きますよ。他国との外交がうまくいけば、小競り合いも無くなるでしょうし、なんとかなりますよ」
辺境伯ギルベルトは自信あり気に笑って見せた。
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次回
アバンス団長は警備や護衛などで娘と話す時間などなかったのではないですか?
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