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【ウィルフレッドside】辺境への婿入り希望
しおりを挟むヴィンセント殿下を盛大に振ってくれという事ではなかったんだが・・・
でも、レティシア嬢が俺の腕の中にいる・・・
うっ・・・もう・・・無理だ・・・
涙がとまらない
叶ったんだ・・・
「アバンス団長様、お顔を上げてください?」
ん?
もう、何だっていい・・・
どんな俺でも受け入れてくれる
どんな格好の悪い俺でもな
涙拭いてくれるのか・・・
なんだか子ども扱いされているみたいな気分になるな
でもいい・・・それでもいい
「もう、泣かないの。格好悪いですわよ?」
うっ・・・うぅ・・・
言葉にされると辛い・・・
「でも、好きですわ」
ふぇっ!?
・・・
・・・
う・・・嬉しい・・・
レティシア嬢の口からそんな言葉が聞けるなんて・・・
「はっはっはっ、面白いもんを見せてもらったな」
・・・
なんだか見せ物になってしまったな・・・
「しかし、本当に勿体ないな。次代の王妃として申し分ない」
へ、陛下!?だ、ダメだ!!
レティシア嬢は渡さない!王妃なんてダメだ!!
「しかし、二人を引き裂くのも忍びないな」
「ち、父上!?」
「ヴィンセント、今回はお前の負けだ。その差は歴然。残念だったな」
よ、よかった・・・
陛下の命なら冗談では済まされない事になってしまうからな・・・
「それにアバンス団長ほどの男をここまで飼い慣らすとは、一体どんな手を使ったのか教えて貰いたいものだ」
飼い慣らされたか・・・
確かにそうかもしれんな
もう、なんでもいい
レティシア嬢が側にいてくれるなら何だっていい
「あら、私は何もしておりませんわ。400通の手紙の締めくくりに必ず書いてあった事に従っていただけですもの」
「ほぅ・・・それは何だ?」
「I like you just the way you are. そのままの君が好きだそうですので」
「アバンス団長、いい女を捕まえたようだな。くくくっ」
あぁ、いい女だ
真っ直ぐな彼女が好きになったんだ
相手によって態度を変える女なんていくらでもいる
媚を売ってくる女なんてどこにだっている
しかし、レティシア嬢のような自分をしっかり持った令嬢はそうはいない
だからこそ、もう、ここで決めてしまいたい
いい返事がもらえるだろうか・・・
「えぇ、ずっと恋焦がれてきたいい女です。もう、離しません。その為に一つ確認したい事がございます」
「なんだ、申してみよ」
「はい・・・辺境伯当主!当主に問いたい。私をレティシア嬢の夫として、辺境伯に婿入りさせてもらえるだろうか?」
「こんな・・・文句のつけようもない男を選ぶなど、断る理由が見つかりませんな!」
よし!これでレティシア嬢と辺境で・・・
「ちょっと待った!!」
な、なんだ!?
ア、アルバート殿下!?
・・・もしかしてレティシア嬢を狙っていたというのか!
ダメだ!どいつもこいつも何故彼女を欲するんだ!
ギルベルトの言葉に待ったをかけた人物がいた。その方向を見ると、ダークブロンドの髪を揺らし、優雅に歩く
「あぁ、ウィルフレッド、レティシア嬢はとらないから安心して」
え?
ち、違うのか・・・
じゃあ、何だ?
「兄上が色々先走っちゃって、レティシア嬢の面白い余興が始まるし、ウィルフレッドは大泣きで、何だか変なことになっているけど・・・辺境伯、ちょっと待っててくれる?」
アルバート殿下どこに・・・
あっ・・・
「マリーリア・・・僕は学園で君と出会って一目惚れをした。僕はずっと君がすきだった。君しか見えていないんだ。今まで婚約者がいなかったのも、君が諦めきれなかったからなんだ。マリーリア・・・好きだ。一生かけて君を幸せにする。僕と将来を歩んではくれないか?」
「あっ・・・えっと・・・お願いします?」
アルバート殿下とマリーリア嬢は学園では同学年だったか
アルバート殿下も片想いをなさっていたのだな
「辺境伯、マリーリア嬢の夫として、辺境には僕が婿に行く」
「はっ、はぁっ!?」
えぇぇぇ!?
ちょっと待ったって、そっちか!
レティシア嬢がとられないなら別に・・・
いや、近衛騎士の団長を辞するために辺境への婿入りをと思っていたのに・・・
このままでは騎士団長は継続
レティシア嬢との時間がとれなくなる・・・
辺境伯はどうお返事をするのだろうか
「くくくっ、辺境伯よ、選択肢ができたな。しかし、私としてはアルバートを辺境に婿にやり、ウィルフレッドにはこのまま騎士団長として王都に残って貰いたい。どうだろうか?」
陛下・・・
あぁ・・・
もう、これ断れないやつだ・・・
はぁぁぁ・・・
・・・レティシア嬢には・・・王都に残ってもらって・・・うぅぅ
・・・公爵家に・・・
はっ!住んで貰えばいいじゃないか!
もう離したくない!遅かれ早かれ一緖に住むんだ
そうしよう
はぁ、しかし、この後夜会の警備の任務がある・・・
嫌だ・・・離れたくない・・・
「団長、そしてベルモンド辺境伯令嬢、この度は・・・おめでとうございますでいいのですかね?」
「団長、良かったですね」
「あぁ、ありがとう」
「ふふっ、皆様、ありがとうございます」
「団長が辺境伯のご令嬢に恋をしていたなんて知りませんでしたよ」
「俺はそうじゃないかなと思ってたぞ?」
「知ってたのか?」
「以前、随分と熱心に一人のご令嬢を探していたことがあってな。その時に団長の言っていた特徴を持つご令嬢が、このレティシア嬢そのものだったんだよ」
「・・・そう言えば、相談したな」
「今日の夜会でレティシア嬢を見たときに、間違いなく団長が探していたご令嬢だと確信しましたよ」
「・・・そうだな」
「団長、この後の事・・・」
「あぁ・・・」
「いいですよ」
「?」
「俺達で何とかなりますから」
「そうですよ、任せてください」
「お前達・・・」
「アバンス団長様、皆様の好意を無碍にはできませんわね」
「・・・あぁ、すまない・・・頼む」
みんな・・・俺の為に・・・
ありがとう・・・
今は
今はこの喜びを噛み締めていたい
夢ではないんだ・・・
あぁ・・・離れ難い・・・
でも、明日辺境伯のタウンハウスに訪ねる事を約束した
辺境伯当主殿とも話をして、正式に婚約者へとなる為に
そうだ・・・
レティシア嬢の部屋を整えなくてはな
すぐにでも使えるように明日整えさせよう
住んで貰えば毎日会える
毎朝おはようを言って、騎士団から戻ればおかえりと迎えてもらえる
夜はおやすみと言って眠りにつける
ずっと想像でしかなかった事が、叶う日が近い・・・
今は離れたくないが・・・
正式な婚約者になる為に
早く明日が来る事が待ち遠しい
「アバンス団長様、それでは明日屋敷にてお待ちしておりますわ」
「あぁ、必ず行く」
「えぇ、おやすみなさいませ」
「っ・・・あぁ、おやすみ・・・」
やはり公爵家に住んでもらおう・・・
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
ウィルフレッドだ
ウィルフレッド!
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