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もう一つのプロポーズ
しおりを挟むウィルフレッドは突然、辺境伯当主であるギルベルトに、レティシアの夫として辺境伯に婿に入りたいと請う。
「こんな・・・文句のつけようもない男を選ぶなど、断る理由が見つかりませんな!」
「ちょっと待った!!」
ギルベルトの言葉に待ったをかけた人物がいた。声がした方向を見ると、ダークブロンドの髪を揺らし、優雅に歩く一人の青年がいた。今度は何が起きるんだという様子で全員の視線が注がれる。レティシアを抱きしめていたウィルフレッドの腕に力が入る。
「あぁ、ウィルフレッド、レティシア嬢はとらないから安心して」
待ったをかけたのは第二王子のアルバートだった。アルバートはギルベルトに歩み寄る。
「兄上が色々先走っちゃって、レティシア嬢の面白い余興が始まるし、ウィルフレッドは大泣きで、何だか変なことになっているけど・・・辺境伯、ちょっと待っててくれる?」
ギルベルトはどういう事かと不思議そうな表情を見せる。アルバートは踵を返しホールを進んで行くと、一人の令嬢の前にたどり着く。床に膝をついて令嬢の手をとった。
「マリーリア・・・僕は学園で君と出会って一目惚れをした。僕はずっと君がすきだった。君しか見えていないんだ。今まで婚約者がいなかったのも、君が諦めきれなかったからなんだ。マリーリア・・・好きだ。一生かけて君を幸せにする。僕と将来を歩んではくれないか?」
辺境伯令嬢、レティシアの姉でもあるマリーリアは、突然の事に真っ白になった。
「マリーリア?」
「あっ・・・えっと・・・お願いします?」
返事を聞いたアルバートは立ち上がり、マリーリアを抱きしめた。しばらくして解放すると、辺境伯ギルベルトに向かって声をあげる。
「辺境伯、マリーリア嬢の夫として、辺境には僕が婿に行く」
「はっ、はぁっ!?」
もう、ギルベルトは何がなんだかわからなくなっていた。一夜で娘二人の婚約者候補が現れ、その上二人とも辺境の婿に入りたいと申し出てきたのだ。
「くくくっ、辺境伯よ、選択肢ができたな。しかし、私としてはアルバートを辺境に婿にやり、ウィルフレッドにはこのまま騎士団長として王都に残って貰いたい。どうだろうか?」
「私は・・・かまいませんが」
「では決定だな」
余興たっぷりの夜会は幕を閉じた。近衛騎士達が、団長の為にと、その後はウィルフレッドを護衛任務から外した。ウィルフレッドは、結局最後までレティシアを離さなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
・・・もしかしてレティシア嬢を狙っていたというのか!
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