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400通の手紙

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「それに、手紙の内容も素敵でしたわ。

森の中に綺麗な湖があるらしいのです。ぜひ連れて行って欲しいですわ。

私は甘いものが好きです。男一人では入りづらいカフェがあるらしいのです。それは、ご一緒して差し上げませんとね。デートの計画を練っているらしいので楽しみにしていますの。

私、馬は乗れませんの。でも、アバンス団長様が今度愛馬のブルーノに乗せてくれるらしいのです。楽しみにしてますのよ。

街の花屋の前を通るたびに、どの花なら喜んでくれるかなんて考えるらしいですわ。決めきれないくらい悩む必要はないのです。だって、どの花だって嬉しいのですから。

他の人の話を聞いて羨ましかったのでしょう。ピクニックで手作りのお弁当を食べて、膝枕して欲しいんですって。ブルーノに乗って遠乗りしたいですわね。

アメジストを見ると、私の瞳を思い出すらしいですわ。そんなに色味が似ているかしら?

夜会の警備中に、他の令息を見るたびに羨ましいって思っていたらしいのです。こんな事を考えながら仕事をしていたら、私に怒られるかもしれない。でも、怒られたいんですって、どう思います?

会えないからって寂しくて枕を抱きしめながら眠る騎士団長様って可愛いでしょう?夢の中に私が出てくるだけで幸せな気分になるんですって。起きたら目の前にいなくて絶望するらしいのです。

アバンス団長様の瞳の色はサファイアと同じ色らしいのです。青いドレスが似合うなんて言うものですから、今日はお望みを聞いてみましたの。エスコートしてダンスしたいなんて言ってましたけど、鍛錬ばかりでダンスの腕前、落ちてないかしら。

変わらぬ愛をなんて言うのは簡単ですわよね。でも、やっぱり人の気持ちは変わるものなのです。好きが大好きになるんですの。それを気持ちが変わってしまったって表現するんですのよ?可愛いでしょう?

でも、そんな手紙の中にも、一通だけ聞けないお願いがありましたのよ」


まくし立てるように手紙の内容を暴露していたレティシアの話を、みんな興味津々に静かに聞いていたが、一人だけ反応を見せる。レティシアの肩に頭を乗せていたウィルフレッドがビクッと身体を揺らした。


「あれは聞けないお願いでしたわね・・・」


皆がレティシアの次の言葉を待っている。みんな、もう、楽しくて仕方ない。騎士団長のラブレターの中身の暴露は格好の話題になりそうだから。


「だって・・・君が他の令息に恋をしてしまったら、一番近くで見せてくれ。そうしないと、君を諦める事はできなさそうだ。目の前で失恋したら、諦める事ができるかもしれない。その時は、容赦なく振ってくれ。君への気持ちが跡形も残らないようにですって。ねぇ、無理でしょう?・・・

・・・

はっ!そう言う事でしたの!?」


何かを思ったらしいレティシアがヴィンセントをニヤリと見る。


「私とした事が、今、気付きましたわ。ヴィンセント殿下に向けてやってくれって事でしたのね?ようやく理解ができましたわ!!」


手をぱちんと合わせて、満足そうな笑みを浮かべてヴィンセントを見るレティシア。いろいろ聞かされ、とどめを刺され、ヴィンセントから表情は抜け落ち、もう・・・無だった。




ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

や・・・や、やめてくれ!!




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