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夫にすると決めた男は
しおりを挟む「誰なんだ!」
「・・・そんなに知りたければ教えて差し上げますわ」
ヴィンセントは、自分の求婚を断ってまで選ぶ男を教えろと大声を出している。レティシアは、一人の男に歩み寄っていく。
「彼を夫にすると決めましたの」
男の前に立つと、レティシアは腕を伸ばして首の後ろへとまわした。
「・・・えっ・・・」
そのまま顔だけをヴィンセントへと向けて笑みを浮かべる。
「私の未来の夫を紹介しますわ。ウィルフレッド・アバンス騎士団長様ですわ」
「なっ・・・なんだと・・・」
ヴィンセントは驚き、口を大きく開けて唖然とし固まった。敵は身近にいたのだ。
「レ、レティシア嬢・・・?」
「なんでしょう?」
「これは・・・夢?だろうか・・・?」
「夢の方がよかったのですか?」
「そ、そんな事はない!ただ、これは現実なのかと信じられないだけだ・・・」
レティシアは首にまわしていた手で、ウィルフレッドを自身にぐっと引き寄せると、そのまま唇を重ねた。
「んっ・・・!?」
ウィルフレッド驚きで目を見開くが、その感触に夢ではないのだと目を潤ませた。
「夢ではないの、信じて頂けまして?」
ウィルフレッドは、瞳を潤ませたまま何度も首を縦に振った。レティシアはウィルフレッドから手を離すと振り返ってヴィンセントを見やる。ウィルフレッドはレティシアが離れた事に寂しさを覚えたが、すぐにまた安堵に変わる。ウィルフレッドを背に身体を預けてきたのだ。片腕を掴まれた事で、もう逃すまいともう片方の腕もレティシアの身体にまわしてしっかりと抱きしめた。自身の腕の中の存在を確かめるように、甘えて肩にぐりぐりと額を押し付ける。
「嘘だ・・・嘘だろ・・・何故ウィルフレッドなんだ!」
「ふふっ、彼、一途なんですのよ?この一年、毎日私に愛を伝えてくれてましたの」
「はぁ!?何だって!君は王都にいたと言うのか?」
「いいえ、辺境から出ていませんわ」
「では、何故・・・」
「あぁ、それはですね・・・」
レティシアは、この一年の事を思い出すように語った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
腕の中に・・・レティシア嬢がいる・・・
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