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押し付けの愛などいらない
しおりを挟む「未来の夫にする男を決めているだと?」
「えぇ、もう決めてますの。私も殿下と同じで、相手がどう返事しようと、彼以上の男は見つからないと思いますの」
国王の後ろでレティシアの言葉を聞いていたウィルフレッド。心は荒れ、気持ちも落ちるところまでとことん落ちた。レティシアにこんなにも想ってもらえる男がいる。それが悔しくてたまらなく、そして、失意はどん底に。
「そいつが夫にならないと言ったらどうするのだ?」
「彼以外はいりませんので、余程の事がない限りは一生独身のままでしょうね」
「納得できん!そんな賭けのような事をせずとも、私と一緒になればいいではないか!必ず幸せになれる!」
「何を幸せと感じるかは人それぞれですわ。殿下の押し付けの愛などいりません」
ホールが静まり返った。全員の目の前で、こともあろうか国の第一王子がフラれて抗議している場面に居合わせている。貴族達はただただ見ているしかできなかった。
「押し付けだと?」
「はい、手紙を送ってきては、王都に会いに来い、次の夜会には出ないのか?夜会がいやなら茶会はどうだ?俺に会いたくなってきただろう?俺の事が好きだろう?俺の妃になれ?これが押し付け以外のなんでしょうか」
「・・・一つも聞いてはくれぬだったではないか。私は王都の街を案内したかったし、君に会いたかった。君と夜会でダンスを踊りたかったし、茶を飲みながら何でもない話で楽しく過ごせたらと思っていただけだ」
「殿下、全てあなたがしたかった事の望みを聞かされていただけでしょう?私の事は何一つ聞かれた事はありませんわ。お気に召して頂けたのは光栄ですわ。しかし、こちらの気持ちはどうなりますの?結婚してからもそうやって全てを押し付けて決めつけて・・・そういう未来しか想像できませんわ」
「・・・誰だ」
「はい?」
「誰なんだ、君が夫にしたいと思っている男は!」
「知ってどうしますの?」
「俺が納得する男なんだろうな?」
「さぁ、どうでしょう」
「誰なんだ!」
ヴィンセントはもうおさまりがつかず、レティシアがその相手の名を言うまでこのやり取りを続けるつもりのようだ。
「・・・そんなに知りたければ教えて差し上げますわ」
ヴィンセントは掴みかからんばかりの勢いでレティシアを見ている。
ウィルフレッドは国王の後ろで、もう、これでもかというくらい打ちのめされて、うなだれ力なく床をぼーっと眺めていた。
コツ、コツ、コツ、コツ
レティシアが歩き始め、ヒールの音が静まり帰ったホールに響く。
「彼を夫にするって決めましたの」
レティシアは一人の男の前に立つと、少し背伸びをして首に腕を回した。
ーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
目の前で失恋・・・させられるんだな・・・
これがフラれるって事か・・・
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