騎士団長様からのラブレター ーそのままの君が好きー

ヴィンセントの焦りと訴え

「殿下、離して下さいませ」

「何故？手に入れたい者の手を離すなど、そんな愚行私にはできないぞ？君はこのまま私の妃になれ」


ヴィンセントの言葉に会場中が静まり返り、固唾を飲んで様子を伺っている。


「強引すぎますわ」

「君は中々私に振り向いてはくれぬな」

「とりあえず手を離して下さいませ」


その言い合いが行われているところに、ウィルフレッドを従えた国王が近づいてきた。


「父上！私はレティシア・ベルモンド辺境伯令嬢を妃に迎えたい！」


ウィルフレッドは表情に影を落とす。今目の前で自分の恋が終わったのだと宣言されたような気持ちになった。


「ヴィンセント、待っておれと言ったであろう・・・」


国王は残念なものを見るような目でヴィンセントを見ている。


「待てませんよ！会場中の男達が彼女を狙っている。今日改めて実感しました。私は一年待ちました。しかし、やはり彼女以上の女性はいなかった。私は彼女を妃に迎えると決めたんです！」


フロアにいる貴族達は、事の展開を見守っている。プロポーズまがいのこの状況にワクワクする者、第一王子の意中の相手がどんな女なのかと見定めている者もいる。当主達は、勢力図がどうとか、どう動くか、どこにつくかなど頭の中で画策を始めていた。


「ヴィンセントの気持ちは聞いてはおったが・・・レティシア嬢の気持ちはどうなのだ？」

「陛下、お言葉ですが、私はヴィンセント殿下の妃になるつもりはありません」

「何故だ、レティシア嬢！君は私の妃になれば、ゆくゆくは王妃になれるのだぞ！」

「そんなもの望みませんわ」

「では、私の愛が信じられんと言うのか？」

「殿下からの愛も求めてはおりません」

「では何なのだ！私以上の男はこの国にはいないのだぞ！」

「ふふっ、殿下は本当に自信家でいらっしゃるのですね」

「何がおかしい」

「私、殿下の事は何とも思っておりませんの。ですから結婚も考えることなどできません。それに私には、未来の夫にすると決めた方がおりますの。ですから諦めて下さいませ」


ヴィンセントは眉間に皺を寄せた。国王の後ろに控えていたウィルフレッドは、拳をぐっと力一杯握りしめて目を閉じていた。聞きたくない気持ちと、諦めなければいけないという辛さで、立っているのがやっとだった。



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次回

私も殿下と同じで、相手がどう返事しようと、彼以上の男は見つからないと思いますの