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再度の辺境騎士との稽古
しおりを挟む「近衛の団長様、今日はえらく集中できていませんね」
「あぁ、そうだな・・・」
「あのままだと怪我しかねんな、止めたほうがいいかもしれん」
辺境の騎士達の稽古に、ウィルフレッド滞在中何度も参加した。しかし、今日のウィルフレッドは、誰が見ても集中できていないのがわかるほどに荒れていた。昨日のヴィンセントの行動を目にしてから、焦りの感情が行動に出てしまっていたのだ。
「アバンス団長、どう見ても集中できていない。怪我をしたら元も子もないぞ?殿下の護衛があるだろう?」
「・・・あぁ、すまない・・・俺は焦っているのかもしれないな」
「焦っている?」
「あぁ、王都では誰にも負けた事はなかった。この辺境でも負けてはいないが、自分とは全く違うものを持っている辺境の騎士達に焦りを感じている。このままではいけないと思ってな・・・」
「適材適所って奴だ。アバンス団長は剣術のセンスは素晴らしい。近衛の騎士団長を務めている事は誇っていい事だ。なりたくてもなれるもんじゃない」
「・・・冷静さを欠いていては俺もまだまだだな・・・」
「何も焦る事はないさ」
辺境騎士団の副騎士団長であるジョセフは、ウィルフレッドの肩をポンと叩くと稽古へと加わっていった。呆然と佇むウィルフレッドの背中を、物陰から見ていた人影があった。
「私の言葉をそんなにまに受けなくてもいいのに・・・」
ヴィンセントの護衛で来ていた騎士達は、誰一人自主的に鍛錬する姿は見せていない。ウィルフレッドは、辺境の騎士達に混ざりながら稽古をし、自らも空き時間に剣を振るっていた。その姿をレティシアはきちんと見ていたのだ。
「戻るか・・・冷静にならんとな・・・」
ぽつりともらすと、ウィルフレッドは別邸へと戻っていった。
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次回
君が笑っているのを初めて見た気がするな
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