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レティシアが街に行く理由
しおりを挟むヴィンセントは、ウィルフレッドと数名の護衛騎士を連れ、街でレティシアを探していた。
「殿下、見当たりませんよ」
「屋敷に戻られたのでは?」
「そうか・・・入れ違ってしまったのかもしれ・・・なんだ、いるではないか!」
ヴィンセントの視線の先に、街の花屋の一角で、小さな子ども達、数人の面倒を見ているレティシアがいた。子ども達は、片親が騎士という家庭も多く、共働きの家庭も珍しくないため、どこかの店先で持ち回って預かっているのだ。今日は花屋の店主カレンが預かっている。レティシアはこうして子どもを預かる店先に、面倒を見るためにしばしば現れる。辺境伯当主が言う、いきなりいなくなるはこの為であった。
ウィルフレッドはその光景を見て、レティシアの為に花が咲いているように見え、彼女に見惚れてしまっていた。気づくとヴィンセントがレティシアに声をかけていた。
「偶然だね、レティシア嬢」
「・・・ヴィンセント殿下。どうなされたのです?」
「いや、街を見てみたくてね」
「そうですか、ごゆっくり見て回ってください」
レティシアは無表情で答えると、子ども達に視線を戻す。
「レティシア嬢、この後の予定は?」
「なんでそんな事を確認されるのです?」
「よければ街を案内してもらえないだろうか?」
「それは姉のマリーリアが承っていると申しましたよね?本邸に行けば会えると思いますので、どうぞ姉に声をかけてください」
「つれないなぁ・・・私はね・・・君がいいんだよ」
「お断りします」
レティシアは貼り付けた笑みで即答した。
「あれ?ウィルフレッド、今、断られた気がするんだが、気のせいかな?」
「いいえ、殿下、間違いなくお断りを受けました」
「・・・ほぉ・・・初めての経験だ」
レティシアは店主のカレンに何かを話すと、ヴィンセントに向き直る。
「まったく・・・ほら、行きますよ!」
「うむ、やっぱり私の誘いを断る女性はいないようだ」
ヴィンセントは満足気だが、ウィルフレッドは胸に痛みを感じていた。
しかし、この時のレティシアの胸中は・・・。
(店先で目立つ騎士がぞろぞろいたら、商売あがったりだわ・・・邪魔にしかならないじゃないの・・・連れて離れるしかないわね。はぁ、疲れるわ)
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
街なんか全然見て回ってもいないっていうのに・・・
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