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辺境騎士との稽古
しおりを挟む「えっ!近衛騎士の団長様と手合わせできるんですか?ぜひ、お願いします!」
「あぁ、こちらこそよろしく頼む」
翌日、ウィルフレッドは視察から戻ると、すぐさま辺境の騎士達の元へと向かった。
ーあなた辺境の騎士に勝てる?きっと無理だと思うわ。一度手合わせしてみるといい。彼らが命を懸けて戦っている事がきっとわかるわよー
レティシアの言葉に突き動かされていた。自分だって、10年以上騎士をしている。その上、近衛の騎士団長の座は己の腕で勝ち取ったと自負している。負けるはずがない、そう思っていた。
カンッ、カンッ
真剣よりも鈍い音が響く。模擬刀のぶつかる音だ。ウィルフレッドと辺境の騎士が、模擬戦をしているところを他の騎士達が見学している。
「さすが近衛の団長様だ・・・動きが早いな」
「あぁ、剣さばきが早い」
「いやぁ・・・格好いい、様になるな。力任せの俺達とは格が違うな」
様々な意見が飛び交う。
「しかし、力ではジンの方が上だな?」
「反応は早いんだが、正面からの素直な攻撃には防戦一方だな・・・」
次第に指摘の声もあがりだす。近衛騎士は、基本的に王族や要人の護衛や警備などが主な任である。そのため、気配の察知や、思わぬ攻撃への対応は早い上、瞬時の判断ができる。しかし、屈強な辺境騎士の正面からの力強い攻撃に押されてしまい、まともに受け止めることができずにいた。攻撃を受け流し、隙をついていく。この方法でしか勝てる道筋が見えないウィルフレッドは焦っていた。簡単に勝てるはずだった。騎士になって、長年鍛錬を欠かした事もなければ、力に満足して驕ってきたわけでもなかった。
「今日はここまでにしよう。君の剣は力強い。しっかり鍛えられている」
「ありがとうございます!」
「また、手合わせを願う。それでは」
ウィルフレッドは稽古場を後にし、別邸の自室に戻ってシャワーで汗を流した。
「・・・剣では負けていなかった・・・でも、俺には力が足りない・・・悔しいが、レティシア嬢の言う通りだな・・・まだ・・・足りない・・・」
暖かいお湯が、ウィルフレッドの汗と一緒に自信までも流していった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
負けてはいない。だが、勝つこともできなかった・・・
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