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王子様ではない白馬の主
しおりを挟む第一王子であるヴィンセントを乗せた馬車と馬の隊列は、王都を出て5日をかけて辺境へとたどり着いた。街道を進む隊列に、領民が一目ヴィンセントの姿を見ようと集まっていた。
小さな男の子が街道に飛び出した。
「うわぁ、白いお馬さん!」
男の子が近寄ろうとすると、馬の足で蹴られそうになり転んでしまった。このまま放置すると大怪我、ましてや小さな子ども、死さえありえる。咄嗟に駆け出した女性が男の子を抱き上げ道端に連れ戻す。
「飛び出しちゃダメよ、お馬さんがビックリしてしまうわ。乗っている騎士様も危ないのよ?」
「ごめんなさい・・・」
「怪我したわね、ちょっと待って」
ポーチからハンカチを取り出し、男の子の膝の血を拭き取る。ふと気配がし、顔を上げると、先ほどの白馬に乗っていた騎士がいた。
「あの、もしかして、辺境伯のご令嬢では?」
「えぇ、そうですが。それが何か?」
「あの、お会いしたかった。あなたの名前を伺ってもい・・・」
「私の事を聞く前に怪我人の心配はできないの?あなたが故意にした事でなくても、あなたの白馬がこの子を害するところだったのよ。悪気はないかもしれませんが、ご心配ぐらいなさいませ!」
「それはすまない・・・君、大丈夫だったか?怖い思いをさせたな・・・」
白馬に乗っていたのはウィルフレッド。男の子に詫びを入れているうちに、女性は男の子の母親に声をかけその場を去っていた。ウィルフレッドは母親にも詫びを入れると、女性の姿がない事に気付く。
「先ほどのご令嬢は・・・」
「辺境伯家のご令嬢、レティシア様です」
「どちらへ行ったんだろうか?」
「私はもう行くからとだけ告げられてここを後にされました」
「そうか・・・すまない」
ウィルフレッドが母親と話をしていると、少し離れたところから声がする。
「ウィルフレッド、どうした、出るぞ!」
「はい、ただいま!」
呼んでいたのは第一王子、ヴィンセント・マグノリア。これから辺境伯邸へと向かう。念願叶い、探していたご令嬢をやっと見つけたウィルフレッドは、再会に胸を躍らせていた。
ーーーーーーーーーーーーー
次回
【ウィルフレッドside】
俺の事を覚えてくれているだろうか?
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