紅雨短編

法月

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秋夜(十誕生日話/十里)

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毎年の事だった。この日の夜、龍の住む洞窟のようなあの部屋に、少年は呼ばれる。
栗色の美しい髪を秋の風に任せ優雅に揺らしながら、主人の待つ暗がりへと足を踏み入れた少年は、柔らかくも鋭い声で主人の名を呼び、薄く微笑みながら賀詞を述べた。主人は凛とした美しさすら放つ少年を側へと呼び寄せると、満足げに目を細め、まるでこの世で一番愛しいものに触れるかのような手つきで少年の美しい長髪を撫でた。そのまま白い指先で頬、唇、と順になぞり、邪魔をするように差し込む月明かりさえ我が物としてしまう彼に〝いつもの通り〟に命じるのだった。龍が遥か昔に失った光覚を初めからなかったと思えるほどに、共に闇で眠ることを。
無情にも一つしかない選択肢に少年は素直に従い、主人に寄り添った。

「心からお慕いしております、十様」

静かにそう言って主人に顔を寄せる。その肌を撫でる風は、少年の言葉とよく似て秋冷なのだった。

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