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2章
桜花視点②
しおりを挟むイムが姿を見せなくなってから、どれくらい経ったのだろう…。
今では、イムと会う前に行っていた、魔力を貯える為に、魔物を狩る事さえ…どこか物足りぬ。
イムがいれば、こう退屈はしなかった…。
どうか無事に、魔王に勝利し、妾に元気な姿を見せてほしい。
心の底から、そう願った。
それから1年ほど経ってから…かの魔王の魔力が消失した。
そうか…。
イムよ、やったのだな。
よかった…。
自分でも驚くほど、気が抜けて地面に座り込んだ。
どうやら、妾が思っていたよりも…気が張っていたのやも、しれぬな。
情けない…と、思う気持ちもあるが、心のどこかでは、それも仕方ない。
と…感じていた。
何せ、初めて出来た友なのだ。
妾の心をこんなにも、埋めてたのだ。
イムよ…。
勝手に妾の前からいなくなるのは、許さんからな。
イムが妾を変えたのだ、そのツケは最後までキッチリと払ってもらおうぞ。
覚悟するのだな、イムよ。
妾は其方を逃がすつもりは、微塵もありはせぬ。
そして…再びイムは人間と共にやってきた。
転移でた。
恐らく、此奴がイムの主人で、魔王を討った者だろう…。
魔力量が、イムよりも…。
…なぬ?
いや、待て…。
イムよ、お主の魔力量が、最後に会った時よりも倍近く増えているのは、どういうことぞ!?
何?
大きなドラゴンを食べた?
いったいお主は、どんなドラゴンを喰らったのだ…。
久しく笑えていなかった事もあり、自然と笑みが溢れた。
ああ…。全く…心配する必要など、無かったみたいよの。
全く…お主は…人の気持ちも知らないで。
妾は、眼の前でピョンピョン跳ねる、イムを抱き抱え…左右に引っ張る。
これぐらい許されるであろう?
それから50年後だろうか…。
突然、イムの魔力が、この星を包み込んだ。
魔力に帰るとは、即ち死。
妾は悲しみにくれた。
どうして、魔力に帰ようなどと考えた…。
どうして、妾に心の叫びを言ってはくれなかった…。
そして、何より。
何故、妾はイムが苦しいでいる時に、気付けず側にいられなかった…。
思い返せば、最近様子がおかしかった…。
後悔と不甲斐なさ、そして…もう2度とイムと会えぬ悲しみ。
自然と一雫が眼から溢れた落ちる。
すると…。
降り注いでいた、イムの魔力が妾を包み込むように流れ込んだ。
温かい…。
まるで、泣かないで…と、イムが言っているように感じた。
更に、7本だった尻尾が…一気に9本に増えた。
これで、妾は完全な九尾となった。
イムよ…。
お主は、この力で世界を守ってくれ。と…いうことかえ?
それがイムの願いならば…叶えるしかないの。
全く…。
イムは魔力に帰って、妾を働かせるなど失礼よの。
この働きの報酬は、また会った時に返してもらうとしようか…。
それが、何百年、何千年経とうが関係ない。
言ったよな? イムよ。
妾はお主を決して、逃がさぬ。
待っておれよ…妾は諦める事は無い故、覚悟しておる事よ!
300年後、人間になったイムと再開するのは、また先の話…。
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