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2章 

桜花視点①

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 かの不思議なスライムに会ったのは、300年程前。

 妾がまだ、7尾の妖狐だった頃。

 あやつは現れた。

 会ったばかりのイムは、水色で丸々としたスライムだった。

 一見すれば、どこにでもいるスライムのように見える。

 だが…そのスライムには、膨大な魔力を宿していた。

 離れた場所に、5つの魔力を感じられるゆえ…恐らくその者達の従魔だと予想がついた。

 そのスライムは妾を見ると、触手を上げて『こんにちはー!』と…念話を使い、話しかけてきおった。

 その様子に何か、別の思惑があるのでと、思い…警戒した。

 返事を返さなかったら、スライムが何を思ったのか…妾に向かって何かを投げてきおった。

 本性を表したな! と思った妾は、投げられた物を受け止め、反対の手を広げ、咄嗟に無数の狐火をスライムに向けて飛ばした。

 森に火が広まらないように、改築し…更に通常より、多くの魔力を込めた事により、熱量は計り知れぬ。

 そして、何を投げられたのか気になり…閉じた手を開くと、紙に包まれた丸い物があった。

 ガサガサ…と音を立て、紙を開くと。

 「なんぞこれは?」

 『それはアメだよ!! 美味しいよ!』

 「!!」

 地面が黒く染まった、その上にスライムがおった。

 妾は咄嗟に距離をとる。

 確かに膨大な魔力宿しているのは知っておった。

 だが…無傷なのは許容できぬ。

 そして、何より気になるのは…。

 手の平にある、アメという物。

 「スライムよ、どうゆうつもりかえ? 何故妾に飴を渡す?」

 幸い、飴は知っておる。

 昔、お婆様から貰ったことがあるが故に…。

 『あげる!!』

 このスライム…何が目的かえ?

 妾の魔力を狙っておるのか?

 『オヤツを交換したから、これで僕達友達だね!!』

 これが不思議なスライム、イムとの出会いだった。

 イムはそれから、毎日のように妾の元を訪ねてきおった。

 いくら妾が拒絶しても、イムはしつこく話しかけてきおった。

 イムの主人はどうしたのかと聞くと、暫くここで体を休めるとの事で…自由に過ごしていいとの事。

 おもわず、ため息吐くのも仕方ない事よな…。

 暫くイムと一緒にいて、分かったがコヤツは裏の顔なんてないと気づいた。

 何で分かったと言えば、簡単よ…。

 単純なイムには、そんな器用な真似など不可能と…いうことえ。


 いつからか、妾はイムとの時間が楽しみになった。

 初めて出来た友のような存在に、妾は心が満たされた。

 妾を世話してくれるような、者はおるが…皆、妾から1歩引いておった。

 誰かと笑い話す事が、こんなにも楽しい事など、気づきもしなかった。

 …だが、そんな楽しい時間にも終わりが近づいてきおった。

 何と、イムは勇者の従魔で、これから魔王を討ちに行くという。

 妾は初めての友を、失いたくなかった。

 妾は引き止めるが…イムは主人の後をついて行き、魔王を討ちに行った。

 
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