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2章 

20話 暴食のグラン

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  いつもより、ちょっと長め(*´-`)


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 大きな悪魔さんを、胃の中に閉じ込めた後…。

 先程見た、城の中から数百以上の悪魔さんが僕に襲いかかってきた。

 大きな悪魔さんみたく…嫌な予感はしなく、数が多かったので、今回は両腕をスライム触手(硬化)に変え…ぶんぶん振り回して吹き飛ばした。

 流石に、こんなに多く襲われたら思う所があるよ…。

 悪魔さんって、もしかして全員悪い人なのかな?

 僕はどんな種族にも、悪い人や、良い人がいると思っていた。

 でも…。

 ひょっとしたら悪魔さんは違うのかもしれない。

 そんな事を考えながら、大量の悪魔さんに襲われてから30分程…。

 1軒のお家が眼に入った。

 その家は、木製で大きくもなく、小さくもない。

 屋根は瓦で、パッと見…地味に見えるが、どこか味のある家に見える。

 「何だろう…ここに来た事ある…? いや、でも悪魔界に来たのは初めてだし…んん?」

 分からない…分からないけど、あの家に

 「!」

 ふと…リュークの脳裏に、誰かの記憶が流れた。

 「ーーうぞーーめーーーがーーい」

 その人は、長い髪を後ろに纏め…ご飯を作っているように見えた。

 誰だろう…?

 その人の顔に白いモヤが、まとわりついており…よく見えない。

 家の前に降りた僕は、自然と足が動いた。

 なんの迷いもなく、家の扉を開け…美味しそうな匂いが鼻に入る。

 「

 なんでだろう…。

 その言葉は、何の抵抗もなく…僕の口から出た。

 家の奥から、バタバタと、誰かが走ってくる音が聞こえ…人影が飛び出した。

 黒い髪に角は無い。黒い翼にツリ眼な彼女はエプロンを着ていた。

 その人は、僕を見ると…眼を見開き、ポロリと涙が溢れる。

 ああ…僕は、いや、知っている。

 名はーーー

 「シスイ」

 トン。と…胸に軽い衝撃を感じた。

 眼線を下げれば…シスイは、俺の胸に頭を擦り付けていた。

 「グラン様…グラン様…おかえりなさいませ…。」

 「ああ…ただいま」

 そう言って、俺は彼女の頭を撫でた。



 ………


 「皆、待たせて悪かったな…」

 30人くらいの悪魔の前で、俺は口を開いた。

 「いえ…私達はグラン様が邪龍に喰われてから、いつか邪龍を倒し…帰って来て下さると私達は信じておりました」

 その言葉を聞き、グランは言いづらそうに…頭を下げた。

 「悪い…俺はもう死んでいるんだ」

 「え…?」

 「やはり…」

 セバスン…やはりお前は気付いていたか。

 俺は白い髭を生やし…清潔そうな服をキッチリと身につけている若い老人の見た目をした友人に眼を向けた。

 コイツは何故か、あえて老人の見た目にしている…何でも拘りがあるとか…。

 そんな奴だが…セバスンがいてくれたおかげで、まだこの場所が残っていたんだろうな…。

 コイツには感謝しかない。

 まぁ、絶対に言わないがな。

 「今、俺がこうして話せているのは、この体の持ち主、リュークというんだが…ソイツのおかげで、少しだけお前らとこうしていられるんだよ。
 馬鹿だよな? ソイツ? 俺が体をのっとる…何て微塵も思っていないんだぜ? と…今、馬鹿って言ったから「馬鹿じゃないもん!」って怒らせちまった! やべぇな!」

 おかしそうに笑う、グランに【暴食】の配下の部下達は…懐かしそうにしながら泣いていた。

 「おいおい! 何で泣くんだよ! セバスンまで…。ほら、笑えよ? な?」

 「笑えるわけないじゃですか!! 帰ってきたと思ったら直ぐにお別れなんて!! そんなの酷すぎます!!」

 「いや、それは悪いと思っているがな…」

 グランは気まずそうに…頬をポリポリとかき、詰め寄ってくるシスイの迫力で後ろに下がる。

 「悪いと思っているなら…本当にその体をのっとればーー「シスイ」」

 シスイはビクン! と体を跳ねらせる。

 「それはやらない。いや、正確には出来ない。俺の【暴食】は長い年月が経ちリュークに定着した。
もう、【暴食】はコイツの物だ。
 それに…だ。お前は、そんな俺を見たいのか?」

 「私…私は…それでも! グラン様にいてほしかった!!」

 嗚咽がこみ上げるシスイの頭を、グランは困り顔で撫で…小さな子供あや好きように優しい声で話しかけた。

 「最後にお前の飯が食いたい。
一生忘れられないような飯を…な…。俺の最後の願い聞いてくれるか?」

 「ッツ! ズルイ! ズルイです! 貴方はいつもそう! 自分の願いばかり言って…困らせて」

 胸をドスドスと…叩くシスイに、グランは冷や汗をかきながら、頭を撫で続ける。

 「そうだな…」

 「そんな…貴方が好きだった…」

 「ああ…知ってた」

 その場は、シスイの頭を撫でる音だけが聞こえた…。

 どれくらいそうしていたのか、分からない…。シスイは突然立ち上がり…グランの手をどかした。

 「…分かりました。そんなに私の手料理が食べたいなら作ってあげます…。死ぬぐらい美味しい物を作ってあげますから覚悟していて下さいね!!」

 「ハッハッハ! そりゃあ楽しみだ! もう死んでるけどな!!」

 無理やり作っているような笑顔で舌を出すシスイに…グランは笑って見送った。

 そんなグランの心の中では…リュークが「僕も食べてもいい?」と聞かれ「もう少し待ってくれ」と答えると、むくれたリュークに謝っていたのだった…。

 
 
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