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2章
8話 おうちゃん
しおりを挟むプロローグに修正をし、スライムだった頃の名前をイムにしました。
今更と感じる方がいるかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。
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『おうちゃん?』
皆が固まる中、僕は気にせずおうちゃんに抱きついた。
「んな! 桜花様に何て事を!」
「そ、そんな…リュークさんが…大人の魅力に…。」
「そなた急に何を…、離れ…!? この懐かしき魔力…まさかイムかえ!?」
おうちゃんは抱きついた僕を引き剥がそうと、腕を伸ばし…ピタリと止まり、驚きの表情を浮かべた。
「そうだよ!! 凄い久しぶり!! 元気だった!? 僕は元気だよ!!」
「うむ、イムは相変わらず元気よの…それより! お主…300年前、自身を魔力に変え世界に命を与えたのではなかったのか!?」
「うん! そうだったんだけど神様が人間に生き返らせてもらったんだ!!」
えへへ~、と笑っていると…おうちゃんが泣きそうな顔になりながら、ギュッと僕を抱きしめた。
「あの時、妾はイムが魔力に帰って、凄く寂しかった…どうして、妾に何も言わずにいなくなってしもうた…? せめて…せめて、一言別れを告げてから行ってくれてもよかったのではないか…?
妾達は友人ではなかったのか?」
おうちゃんの涙が僕の頬に落ちる…。
僕はご主人様を無くした悲しみを、同じようにおうちゃんを悲しませてしまった事に初めて気がついた。
「ごめん…おうちゃん…。僕…あの時、ご主人様が死んじゃって、もう自分には何もないって思っちゃって…寂しくて、寂しくて…。
ごめんなさい…ごめんなさい…。」
「よいのだ…。イムはこうして、妾にもう1度会いに来てくれた。
今はそれで充分。後生だから今度は急にいなくならないでおくれ…。」
「ごめんなさい…ごめんなさい」
「よい、よい。ただ…今だけはこうさせておくれ…。」
「ゔん…」
その場には、2人のすすり泣く音が…静かに響いた。
それから、どれくらいが経っただろうか…。
2人は泣き疲れたのか、抱き合ったまま…眠りについた。
レイム視点。
(あんなに、泣いているリュークさん初めて見ました…。)
その場にいた、誰もが急な出来事に動けずにいる中、スッ…と引き戸が横にズレ…狐耳と尻尾1本のおばあちゃんが入ってきた。
「おや…? これはいったい…琉月ここで何があったんだい?」
「こ、これは結弦葉様! 挨拶が遅れて申し訳ございません!」
「いいよ、それより…詳しく教えてはくれないかい?」
「勿論でございます!」
琉月さんは膝をつき…頭を下げながらお婆ちゃんに、今起きた事を話して行った。
「ふむ…、今の話が本当だとすると…孫と抱き合っているのは、300年前に魔力となり、魔王によって枯れた世界を自身の命を犠牲にし、再び世界に多くの命を生み出した者…イムに間違いないようだね」
「えっ!? リュークさんはそんな事をしたんですか!?」
前世がスライムだということは、聞いていたけど、リュークさんがそんな事していたなんて聞いていません。
「あっ…」
つい、大声を出してしまった事で、周りの視線が向いた。
「おや? アンタは誰なんだい?」
「え、ええ…と私は…レイム・イシュタム・ユーメニアといいます」
ぺこりと頭を下げ、挨拶をすると…お婆ちゃんは、何かを考えるかのように手に顎を当てて口を開いた。
「とりあえず、今日は休みな。
2人がこんなんじゃ何もできやしない。」
お婆ちゃんは、手をパンパンと叩くと引き戸から狐の獣人女性が現れた。
「この子を客間に案内しな、孫の友人かもしれない連れだ。丁寧に対応しな」
「畏まりました」
お婆ちゃんはそう言って、出て行く。
私は狐の獣人女性の後をついて行き…1つの部屋に着いた。
そこには布団とテーブルの上にお菓子や水差し、湯呑みが置かれていた。
「では、何か御用がありましたら、そちらのヒモを引っ張って下さい。」
「はい、分かりました。」
「では、失礼します」
女性は足を折りたたみ…ゆっくり扉を横にズラし、出て行った。
「チロちゃん、一緒に寝よ?」
「キュ」
少し、疲れていた私は布団に入ると、直ぐに眠りについた。
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