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2章
7話 九尾の妖狐
しおりを挟む「ふぅ~御馳走でした!」
「御馳走でした」
「キチュ」
「コン」
夕食を食べ終わった僕は、汚れた土鍋や食器を1カ所に並べ…右腕をスライムの触手に変えた。
それを見た、狐がギョッ! としたように目を大きく開き、レイムさんの胸に顔を埋めた。
僕はそんな事は気にせずに、【身体変化】で右腕を大きくさせ…汚れた食器を飲み込み、汚れだけを食べた。
汚れを取った食器は、僕が事前に出しておいたお水でレイムさんが濡らし…拭いてくれた。
洗い物も終わり、一息ついた所に…狐がビクビクしながら僕の服を咥え、ぐいぐいと引っ張ってきた。
「ん? どうしたの? もう、怒ってないよー?」
僕がそう言うと、狐は僕から離れ…森に近づき、こっちに視線を向け1鳴きした。
「ん? どうしたの? オヤツ食べる?」
僕はアイテムボックスから、神様から貰ったおまんじゅうを手にとり…狐に腕を向けると、狐は首を横に振った。
ん~、じゃあ分からないなぁ~
「あの、リュークさん、もしかしたらついて来て…と言っているのではないのでしょうか?」
「ん? そうなの?」
「コン!」
今度は、頭を縦に振ったので、正解みたい。
「じゃあ、レイムさん、チロも一緒に行こう!! もしかしたらお礼で、美味しい物を貰えるかもしれないよ!!」
「た、多分…違うと思います…。」
「キュ~」
僕達は期待に胸を膨らませ…狐の後をついて行った。
………
狐の後をついて行く事、10分…僕達の目の前に、赤い柱が両端にあり、潜れるようになっていた。
「あっ! これだよ! 僕が空から見た赤い建物? 何なんだろうねこれ! 君はこれ知ってるの?」
「ッ!」
赤い建物の近くで、動揺したような雰囲気が感じとれた。どうしたんだろう…。
「リュークさん? 急にどうしたんですか?」
「ん? ほら、あの赤い建物の近くに木があるでしょ? そこに人がいるから、何か知ってるかなー? って思ったんだー!」
「えっ!?」
返事を待っていると、諦めたように黒い服を全身に身に纏い…狐のような耳と尻尾が生えた女性が姿を見せた。
「はぁ…こんなに直ぐにバレるなんて自信を無くしますね。どうして分かったか聞いてもいいですか?」
「うん? だって気配が完全に消えていたら、その場所だけポッカリ穴が開くから普通に分かるよ?」
「あはは…それはリュークさんだけだと思うんですが…」
えっ? 普通じゃないの?
僕は視線を、黒い服の人を見ると…目をパチパチさせ、納得したように頷いき、深々と頭を下げた。
「なるほど…盲点でした。
貴重なご意見ありがとうございます」
「そう? よく分からないけど、喜んでくれて良かった?」
僕は首を傾げつつ、返事をすると…狐は女性の肩に座り…先に進み、振り返った。
「皆様の事は、神、アトゥムから聞いております。なんでも私達の王を蝕む物から解き放ってくれるとか…」
「ん? 僕は、おまんじゅうの神様から妖狐を助けてあげてくれって言われただけだよ!」
僕がそう言うと、服の袖を引っ張られるのを感じ…振り向くとレイムさんが口を開いた。
「リュークさん…おまんじゅうの神様じゃなくて、神様からおまんじゅうを貰ったんだよね?」
「そうだっけ?」
そう言われると、そうだったような…そうじゃないような~
「皆様、主が住う場所に着きました。少々お待ち下さい。」
「えっ? ここには何も…」
「へ~、凄いね! 見事な幻惑と結界だね!!」
そんな言葉に、「リューク様は本当に規格外ですね」と女性が言い…、ブツブツと呟くと、何も無かった場所から正面に2つの狐の像と、立派な神社が現れた。
驚くレイムさんを、満足そうに見た女性は、像を通り過ぎ…神社の入り口で座りノックした。
「桜花様、琉月でございます。
神、アトゥムのお告げ通り…救いの者がいらっしゃいました」
「うむ、入れ」
その声は、どこか懐かしく…聞き覚えがあるような気がした。
僕の脳裏に1人の少女の顔が浮かび上がる…僕は確かめるように、神社の中に入る。
そこには、九つのフサフサな黄金色な尻尾を生やし…金色のつり目に大きな胸…その姿はかつての少女と重なった。
「おうちゃん!!」
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次回のお話は、いつもより倍近く時間がかかっております。
では、お楽しみに。ばいちゃ!
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