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1章 

29話 カルカンが人族を恨む理由

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 イグアスさんとの手合わせを終えた僕達はレイムさんのお家に戻ろうとすると…上から魔力が感じて、見てみると…。

「キュキューー!! ギュギュウ! キュ~! キュキュキュ!!」

「痛! チロ?今までどこ行ってたの? 痛い!ごめんごめん、忘れてた! …痛い!」

 そういえば最後に見たのが…豚箱に入れられる前だった…。

 思い出すと、今でも豚箱なのに豚さんがいなかった事にムカムカしてきた…

 今度会ったら、僕を騙したあの、オーガの筋肉魔族さんにお仕置きするもんね!

 僕が違うことを考えていた事に気付いたのか、またチロが僕の顔の上で暴れ出した…鼻に体を巻き付けたり…尻尾で顔を叩いたり…


「痛い! 謝るから~! …ってチロ…何か小さくなってない?」

 最後に見たチロの大きさが80㎝だったのに…今は僕の顔に乗るくらいの大きさになっていた

「キュキュキューー!!」

 チロが鳴くと…体が光って…「ボフン!」 …と音と共に顔に乗っているチロの重さが大きく増えて、僕は頭から地面に倒れた…。

「いたた…いつのまにチロが身体変化できるようになって驚いたよ…。痛い!」

「キュ!」

 これで許してやるでしゅ! ってチロが言っているような鳴き声を聞いて…ズボンについた土を払いながら立ち上がると、レイムさんが駆け足で近づいてきた…。

「チロちゃん!」

「キュ?キューー!!」

 まるでレイムさんが主人のように、チロが胸に飛び込み、それをレイムさんが抱きしめて、ゆっくりとチロの頭を撫でた。

もちろん…チロは重すぎないように、小さくなって…。

「よ…良かった…。チロ…ちゃん急にいなくなったから…心配…したんだよ…?」

「キュ…」

 チロがごめんなちゃい…って言うみたいにレイムさんの顔をチロチロ…と舐めた


「えっと…チロ?こっちに来てもいいんだよ?」

「キュ!」

 何だか寂しくなった僕は、腕を広げたけど…チロはプイッ…と顔を僕の反対に向けた…。







 チロに僕の大事なオヤツをあげて、何とか機嫌を取ると…渋々ながらも僕の頭の上にどくろを巻きながら乗った…。

 大きさは80㎝あるから重いけど…

 チロとレイムさんと共にレイムそんの屋敷に入ると…僕はメイドさんに案内されながら、お爺さんの部屋の前に着いた…

 チロはレイムさんと一緒だけどね…

「…来たみたいじゃの…。呼び出して済まなかった…お主には話しておかなくてはならないと思ったのじゃ…」

「それって…」

「うむ…」

「「息子―「この大陸の美味しい食べ物の事だよね!」」

「………」

 「この大陸の美味しい物は何かな~? お肉? 野菜? それともデザート? ムフフフ~想像しただけで涎が…。」

「違う…。」

「えっ…。」

 …また僕は何かやってしまったのかな?…さっきもイグアスさんとの手合わせの前で変な空気になったし…。

 どうしてだろう…?変なことは言ってないと思うんだけどなぁ~。

「ゴホンッ…お主の想像通りじゃ…息子は…「やっぱりごは…」」

 ギラリ!!

 何かお爺さんが人を殺すような目で見てきた…最後まで話を聞けってことなのかな?

「お主の想像通りじゃ…息子は人族を恨んでおる…息子の妻は人族が原因で死んでしまったのじゃ…。」

 …僕はそんな想像をしていなかったので、驚いて手を口に当てた…。

 そっか…それでレイムさんのお母さんがここにいなかったのか…。

「息子の妻…メクメイは優しき女性であった…。攻略結婚じゃったが、息子はメクメイの優しさに惹かれ…それはもう不器用ながらも大切にしようと色々とアプローチをしたのじゃ。

 そんな息子にメクメイも少しずつ惹かれていき…やがて攻略結婚だったのじゃが…それはもう、儂から見ても幸せいっぱいじゃった…。

 そんな2人の間に子供が出来た…。それがレイムじゃ…2人はもちろん喜んだ、息子もメクメイのお腹を撫でたり、耳を当てていたのをよく覚えておる…。ここからじゃ…徐々に幸せが崩れていったのは…」


 お爺さんは机に置いてあった紅茶を飲み干し、悲しそうな顔をし…辛そうにしながらも口を開いた…。

「メクメイは体が弱くレイムを体に宿してから、ベットにいる時間が長くなっていきあった…。
息子も仕事の合間に何度も様子を見に行き世話をしておった…。

 そのかいもあってか…メクメイは笑顔を絶やす事も無く幸せそうじゃった…そして、レイムが産まれた…。そこで体力を使い切ったのじゃろ…レイムを1度見て倒れてしまったのじゃ…。

 息子は意識を取り戻さない、妻の為に伝説のポーション、エリクサーを手に入れようとしたのじゃ…エリクサーは万能の薬で飲めば、病人ならばたちまち治り、老人ならば全盛期に若返る薬じゃ…。

 結果だけを言えばエリクサーは見つからんかった…だが…それでも息子は諦めんかった…。
多額な金を使い何とか材料を集め、この街でたまたま来ていた、今最も凄腕と言われる人族の薬師に依頼をしたのじゃ…。

 息子はこれでやっと妻が元気になる! …と喜んでおった…それは、この屋敷に住んでいる皆が同じ気持ちじゃった…。

 …だが…事件は起きた…。薬師は素材と前金を持って姿を消したのじゃ…。

 …奴は息子がエリクサーの素材を集めていると聞き…色々と嘘の情報を流していたのじゃ…。この事が分かった時にはもう、手遅れじゃった…メクメイは息を引き取った…。

 息子は人族を恨み…そして妻が死んだ原因ともなったレイムを娘と見ず、ただの道具ときて見ておる…。

 これが人族を恨む理由と…孫を娘として見ない理由じゃ…。」
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