孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

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10話 猫になって初めての街

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 ガタンガタン…。

 僅かな振動も心地がいい、のだが…。

 「猫ちゃ~ん」

 すりすり…。

 「猫ちゃ~ん」

 すりすり…。

 ええい! 鬱陶しいわ!

 俺は少女の膝の上に、座らせられていた。

 少女を助けた後、気持ちよく眠っていると…。

 再び、ヒョッコリと顔を出した(クソ野郎も一緒)少女に捕まったのだ。

 人が大人しくしている事をいいことに、馴れ馴れしくしやがって…。

 クソ野郎は、俺を蹴飛ばそうとしやがった。

 あの時は、本気で殺意が湧いた。

 娘の命の恩人になんて事をしやがる!

 まぁ、その後は…少女に「猫ちゃんに酷い事するパパなんて嫌い!」と言われたクソ野郎の顔は見ものだった。

 その後は、少女の機嫌をとるのに必死なクソ野郎は、娘にずっと無視されている。

 ククク…ざまぁ!

 ん? 何だ? そんな俺を睨んでてもいいのか? もっと娘に嫌われるぞ? いいのか? ん?

 クソ野郎に、ドヤ顔…出来ているか分からんが決めてやると。

 「コイツッ…!」

 青筋を立てた、クソ野郎が今にも、殺しそうな眼で睨んでいた。

 「パパ?」

 「ぐぬぬぬぬぬ…」

 ふん…テメェは、そこで俺の為に馬車わ動かす事だな!

 ハッハッハッハ!


 €€€€€


 それから、3日…。

 馬車生活は、大きな問題はなく…無事に壁に囲まれた街が見えてきた。

 問題があったとすれば…この3日間、少女がずっと俺を離さなかった事だ。

 クソ野郎の顔は愉快なものだが…。流石に疲れてくる。

 さて…と街も見えてきた事だし、そろそろコイツ等ともお別れだな。

 俺は少女の膝の上から降りる。

 「猫ちゃん?」

 「にゃあ(じゃあな)」

 スキル…隠密。

 「! パパァ!! 猫ちゃん消えちゃった!!」

 「お! それは嬉しーゴホンッ! 残念だな…でも、猫には猫の生活があるんだ。無理やり縛るような事は駄目だぞ?」

 「ヴン…」

 「いやぁ…残念だな~」

 嘘つけこの野郎!! テメェ、めちゃくちゃ笑顔じゃねぇか!!

 今度街中で、見つけたら…恥でもかかせてやるか。

 クックック…その時が楽しみだなぁ?


 さて…。じゃあ街に入る為に、並ぶか。

 街に入るのに、身分証が必要なんだよな…。

 身分証が無かったら、銀貨3枚払わなくちゃいけない。

 まぁ、その街や国によって、いくらか変わるが、この人の出入りからして、少なくとも…そこまで高くはないだろう。

 念の為、銀貨5枚を小さな布袋に入れておくか。

 そして、布袋にヒモを通して、首にぶら下げる。

 完璧だ。

 では、行くとしようか。

 「おい…見ろよ。猫が律儀に並んでいるぜ?」

 「猫ちゃん可愛い!」

 「不思議ね~」

 前や後ろから、多少見られる事は想定していたから問題ないな。

 む…次は俺の番か。

 「次! 前へ」

 「あの…私の前に、この子がいるんですが…」

 「にゃあ(よう)」

 後ろの女性が、優しい人でよかったな。

 しかも、美人ときた。きっとモテるだろう。

 だが、容姿がいい奴の8割は、クソみてぇな奴等だ。

 だが、世の中は顔がいい者がモテる。

 それは、俺が人間だった時で証明されている。

 金目当てで、近づいてきた者が何人かいたが…無視すると消えていったのをよく覚えている。

 …と、いかんいかん。

 それより、兵士よ銀貨を受け取れ。

 俺は布袋を咥え、兵士の前に置くと…不審そうに拾い、布袋を開いた。

 「なるほど…。
 この賢さからすると、魔法生物といった所か…。通っていいぞ、後、銀貨は3枚でいい」

 「にゃあ(なるほどな、覚えておこう)」

 兵士から布袋を返してもらい…首に通して街に入った。

 後ろから不穏な視線を、無視して。

 何にせよ…ようやく街についたな。

 俺は、人に潰されないように…屋根の上に登るのだった。
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