異世界にきたら天才魔法使いに溺愛されています!?

猫山みぶ

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第四章 王都での出会い

41犯行現場を目撃する

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「わ、あ、これが通信石と転移の石」

 通信石が真珠のように貝の中に収められているオシャレな白い石で、転移の石が首から下げる赤い石。

 どっちもエレーナが選んでくれた。センスいいなぁ。綺麗な人というのはこういうところから違うのか。すごい。

「通信石は石と石を重ね合わせて、予め登録しておく必要がありますのよ。こんな風に」

 エレーナが自分の通信石を私の通信石に軽く重ねた。へぇ、これだけでいいんだ。

「あとは石を握って会話したい人を思い浮かべれば通信ができます」

 ふむふむ。
 貝殻を握ってエレーナの顔を思い浮かべる。

「できた?」

 エレーナの持つ通信石が震えていた。エレーナがそれを握ると、ザワザワと声が響く。おお、電話みたい。

「本当だ、私にも使えるんだ」
「よかったですわね。転移の石は同じように石を握って行きたい場所を思い浮かべれば使えますわ。ただ、結界の外から中という風には行けませんので、そこは気をつけてくださいね」
「う、ん? つまり?」
「街には結界が張ってあるのです。なので、街の中に入るのは、転移の石ではできません。転移装置を使ってください。結界の中であれば移動は自由です」

 なるほどね。わかりやすい。
 転移の石だと結界に弾かれるってことか。そして、やたらと転移装置を使う理由も納得。結界があったからだ。

「結界があるってことは、外は危険なの?」
「魔力を帯びた野生動物たちがいますわね。一応許可があれば外にも行けますが、討伐隊以外ほとんどいませんわ」
「なるほど。私も外には出ないようにする」
「ミツキは身を守る方法がありませんし、外に出たらペロリですわ」

 綺麗な顔をして怖いことを言う。
 軽く身震いして、首からかけられている赤い転移の石を持ち上げる。
 でもこれでエヴァンさんがいなくても自由に買い物できるってことだよね。それはちょっと嬉しいかも。

「ほかにもなにか買われますか?」
「うーん、せっかくだから、ウィンドウショッピングしない?」

 うなずいたエレーナの細腕を引いて駆け出した。


 私たちは『空飛ぶエメラルドチップ』という、勝手に口までやってくる怪しげな緑のポテチを食べながら街を歩いていた。
 エレーナはエメラルドチップを見ては「いいんでしょうか、こんな」とか、「でも、食べたい、美味しそう」となにやら葛藤していた。
 お嬢様というのもなかなかに大変らしい。食べたいものも食べれないなんて、私には耐えられない。

 サクサクのポテチを咥えて、サッと通り過ぎた右手の細道。

 ん?

 今なんか、見覚えのある後ろ姿があったような?

 私は巻きもどる。戻って、そーっと細道をのぞく。

「ミツキ?」
「しっ」

 エレーナが不思議そうに私の後ろからのぞきこんだ。

「エヴァン様……」

 やっぱり、あれ、エヴァンさんだよね。しかも近くにいるのはルシアさん。やっぱり元カノじゃん。絶対そうだよ、あれ。なんか親しげというか独特だもん。

 それにしても美人だなぁ。
 エヴァンさんああいう人が好きなんだ。
 もしかして、私はパートナーとして無理矢理決められたようなもので、本当はああいうボインな美人がタイプなんじゃ?

 なに話してるんだろう。
 さすがに話し声までは聞こえない。

「ミツキ、声かけなくてよろしいのですか?」
「うーん、かけられそうな雰囲気じゃないしねぇ」

 じーっと見てると、美女ルシアさんが動いた。
 ふらりとよろけた、ように見せて、それを支えたエヴァンさんの首に手を回して、ぶちゅっとした。
 うん、したね。ぶちゅっと。

「ミツキっ、もう、行きましょう? いや、それよりエヴァン様にっ」

 わたわたと慌てるエレーナがかわいい。

 やっぱり、元カノかぁ。女の勘は鋭いって言うもんね。なんか嫌な感じしたんだ。
 だって、この世界の人たちって私を見ると異邦人様って、神を見るような恍惚とした危ない目をするんだけど、あの人にはそれがなかった。だからなんか嫌な感じだなーって。
 あの人、まだエヴァンさんのこと好きだったのか、なるほど。

 じーっと凝視をしていると、ルシアさんを振り払ったエヴァンさんが襟を正す。そしてふと、後ろを見て──私と視線が合った。

 エヴァンさんは口をポカンとあけて、次には顔面蒼白になる。
 浮気現場を見られてしまった男の絵面だ。

「み、み、ミツキさん……」

 名前を呼ばれ、私はにこっと笑った。

 エヴァンさん、お話、ありますよね?
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