異世界にきたら天才魔法使いに溺愛されています!?

猫山みぶ

文字の大きさ
上 下
40 / 48
第四章 王都での出会い

40異世界の友だち

しおりを挟む

「だからね、もうあれはぜーったい元カノ! だって空気が違ったもんっ。なんかちょっと気まずい空気って言ったらいいの? でもさぁ、エヴァンさんちょっと面食いすぎじゃない? あんなに美人だなんて聞いてないよっ。私月とすっぽんだよ、恥ずかしいっ。ねえ、聞いてる? エレーナ!」

 さっきから返答がないことに気づいて、むーっと顔をあげる。

「ええ、聞いてますわ。手、止まってますわよ」

 おっと、今は一応勉強中だった。
 ノートに答えを書きつつ、またおしゃべりと言う名の恋の相談をする。

「そのあとね、二人して見つめ合っちゃって。で、美人の元カノ、ルシアさんが私を見て、あって顔してお辞儀して行ったの。それで去り際なんて言ったと思う? またね、エヴァン、って」
「……そうですか」
「エヴァンさんってやっぱりモテモテだったんだなぁ。でも美人すぎない? スタイルもすっごいよかった。背高くてウエストくびれてて、胸がおっきい!」

 力を込めたら紙にインクがにじんでしまった。

「あなた……本当にミツキなんですの?」
「ええっ? 光希だよ? なんで自分の名前嘘つかなきゃいけないの?」
「いえ、ちょっと思っていたのとイメージが……」
「ええ、なにそれ、どんなイメージ? 黒で神秘的だからさぞかし本人も神秘的で清楚で、可憐なんだろうみたいな?」
「……まあ、それに近いでしょうか」
「うそ、無理無理。そういう柄じゃないよ。え、もしかしてエヴァンさんも私のことそんなだと思ってるのかな。うわ、それはちょっとなぁ、無理あるよ」

 なんたって私は干物でヒモ女だ。
 だっさいジャージで日中ウロウロしちゃうような女だぞ。神秘的とは無縁もいいとこだよ。

 能面のような顔をしていたエレーナが、ちらりと私を見た。

 誰もが振り返るような、お人形さんみたいな美少女、エレーナ・カストラーナ。

 王宮にいたときに、唯一いた女の子だ。なんと、王子様の婚約者らしい!
 しかも成績優秀で魔法にも詳しいと。
 これはぜひお友だちになっておかないと! ということで、私から猛アプローチをかけて、学校の図書館で居残り勉強中だ。

 エレーナは高貴な方らしく、気軽に話しかけてはいけなかったらしい。
 学校で話しかけたらみんなギョッとしてたけど、黒の異邦人様がだからいいのか……みたいな反応してた。

 いやいや、そういうのは、もっとはやく言ってほしいよね。そもそも私、王宮で会ったときに気安く話しかけちゃってたよ。「かわいい!」って。
 でもおかげで、こうして気にかけてくれるようになったんだけど。結果オーライだよね。

 しかも、学校がお休みの日は、こうして勉強を見てくれるらしい。優しいよね!
 ふふふ、美少女の友達ゲット!

「ミツキは、本当にエヴァン様がお好きなんですね」
「ん……そう、なのかな。たぶん好きだと思うよ。でもね、なんか、ちょっと今までと違う感じで、変な感じなの」

 元カノの出現でこんなに心がザワついたのははじめてだ。
 百戦錬磨のエヴァンさんだ。これから先また何人もの美女を見ることになるかと思うと、ちょっと心配だ。私の心が。美女にけちょんけちょんにされないだろうか。大丈夫か。

「エレーナ、私、おうち帰りたくないよ」
「……なら、わたくしの家に来ます?」

 ……え?
 えっ!

「いいのっ?」
「部屋ならいくらでもありますもの。それにわたくしも、もっとミツキとお話してみたいと思いまして」

 ええっ、なにそれっ、すっごく嬉しいっ!
 だってお人形さんみたいな美少女からの愛の告白だよ。胸がときめかない方がおかしいよね。うわぁ、どうしようっ。顔にやけて止まらない。

「あっ、でもエヴァンさんに連絡する方法が……」

 そう言うと、エレーナが少し顔をしかめた。

「通信石と、転移の石はお持ちではないのですか?」

 ……なにそれ?


 エレーナの話によると、魔石と呼ばれる石と術式を組み合わせて、簡易的な魔法が使えるようになる石だとか。
 いくら魔力があると言っても、人それぞれ魔力保持量は違うから、移動や通信なんかは魔石を使う人が多いんだとか。

「それ、私にも使えるの?」
「使えるはずですよ。ミツキは、魔力は持ってますから」
「そうなのっ? 知らなかったよ」

 うーん? つまり、私は術式が書かれている魔法道具なら使えるってこと?
 あ、でも魔石が必要なんだっけ。なんだかややこしいな。

 でも、移動も通信も私にもできるのなら、どうしてエヴァンさん教えてくれなかったのかな。知らなかったとか?

「たぶんわたくしは、エヴァン様に恨まれてしまいますわね」
「ええ、なんで?」
「ミツキを独占する権利を、無理やり引き剥がしてしまいましたので」

 クスクス笑うの、かわいいなぁ。お花みたい。かわいい。
 ぽーっと見惚れていると、エレーナがにこりと笑う。

「あとで街に行って通信石と転移の石を買いましょうか」
「うんっ」
「では、今日はこの本一冊終わらせてくださいね」
「……スパルタだね。鬼教師」
「……なにか言いまして?」
「ううん、なんにも」

 慌てて机に向かった。

 勉強を終えて外に出ると、エヴァンさんが門のところで待っていた。
 いや、転移の石があるならこんなに待たせることもなかったのに。もっと早く教えてほしかったよ。

 エヴァンさんに今日はエレーナの家に泊まるから帰らないと伝えると渋い顔をされた。
 友達ができたからとなんとか丸め込むと、エヴァンさんは寂しそうにこちらを振り返りながらも帰って行った。
 飴と鞭は必要だよね、うん。


「エレーナ、行こう」

 そしてこの世界ではじめてできた友達と、街に繰り出す。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...