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第四章 王都での出会い

37恋の相手は自分で決めます!

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 王都に来た!
 観光らしい観光はあまりせず、とにかく転移を繰り返したおかげで、なんと一日で!

 いや、本当にすごいな。お金があればビュンッとひとっ飛び。お金があれば。

 聞くのが怖くてしっかり聞いていないけれど、エヴァンさんは一回の転移二人分で五万くらい支払っていた。
 それを五回くらい繰り返した。

 つまり、二十五万! 百万を覚悟してたから安いなと思ってしまったけど、高い! 十分高い! でも生活費がないだけで結構浮くね!
 私のエヴァンさんへの借金は、おおよそ十五万。

 王都に来たからには、なんとか稼ぐぞ。とりあえず私は、地球の文化を売り渡す!



 まずは城に行きましょうと言うエヴァンさんの言葉に従って、立派な白いお城へとやって来る。
 城はなんていうか……シンデレラ住んでます? って感じだった。

 白い壁に、屋根は青。てっぺんに金の飾りがついていた。遠くてよく見えないけど、丸い感じだった。

 昔のヨーロッパのお城という感じがすごくしたけど、なんていうか、剣とか槍とか物騒な物を持っている人がほとんどいなかった。
 治安がいいのかな? と思ったけど、理由はすぐにわかった。

 魔法の世界だからだ!
 彼らに剣はいらない。必要なのは、魔力!

 お城の周りには、水晶玉がグルリと囲むように置かれていて、それに超強力な結界の術式が組み込まれているとか。しかも、三重結界!
 その結界を通るための、通行証のようなものを渡された。赤黒い石がついたペンダント。

 エヴァンさんにこれ無くしたらどうなりますか? と聞いたら、「警備兵たちに警報音が伝わり、結界を通ろうとした瞬間拘束と電気ショックの魔法が発動します」とのことだった。
 こ、こわっ。絶対無くさないようにしなくちゃ。あぁ、でもこういうことを思うと危険なんだっけ?

 なんだっけ、フラグ?



 と、そんなこんなで、広くて豪華な応接室で待たされていた私たちは、灰色のローブをまとった魔法使いに、王族たちのいるという広間へと呼ばれた。

 大きな金属扉が自動で開く。
 門番なんてものはいない。自動扉である。ただし、どうやら許可制の。
 大きな大きな扉が、ゆっくりと招くように開いていき、私は中へと足を踏み入れた。

 当然だけど、礼儀なんてわからない。無難な日本人の礼儀ならあるけど。

 とりあえず、あまり話さず、もらう物をもらって、帰る。よし、完璧。


「花野川 光希です」

 フードを取った状態で簡単な礼をして名前を名乗った。そして、とりあえず離れないぞ、とアピールするために、入った時からエヴァンさんの側にいた。

 エヴァンさんがやたらと王都を警戒していたので、「もうエッチしませんよ?」と脅して薄情させたら、なんと、王族は、私を王子のうちの誰か一人と結婚させようとするだろうと。
 代々の異邦人は、権力者と結婚することが多かったんだとか。とくに、黒となれば目の色を変えるだろうと。

 そういう大切なことは、ちゃんと言っといてもらわないと困ります!

 ということで、私は腕にあるという証が見えるようにこれ見よがしに袖をまくり、ピトッとエヴァンさんにくっついているのである。


 呼ばれた場所にいたのは、全部で十人ほど。
 真ん中にドカンっと置かれている、王が座る椅子に腰かける豊かな白いヒゲの男の人。王様。

 そして、その少し下、三段ほどだけある階段の下に、エヴァンさんと同じくらいだと思う男の人が三人。
 グレーの髪、濃い紫の髪、金の髪をした男のひと。

 身なりからして、この人たちがエヴァンさんの言ってた顔のいい王子かもしれない。
 たしかに、顔がいい。スラッとしたイケメンだ。

 そして、壁側に、小さく息をひそめて頭を下げている一人の女の子。これがもう、めっちゃくちゃ可愛い!
 て、天使……?
 と思ったほどだ。女の子に生まれてはじめて見惚れてしまった。心臓がキュンっとした。私、一応ノーマのはずなのにっ。どうしようっ?
 髪切ってイケメンに転身しちゃうかも!

 ぽーっと女の子に見惚れていると、王様が引きつった顔でエヴァンさんを呼んだ。
 エヴァンさんは跪いて頭を垂れると、王様の言葉に丁寧に説明を始める。

 私とどこで出逢ったのか、その時の状況を説明しつつ、あらかじめしたためていたらしい紙を王様へ両手で献上していた。

 そして、その時に、やはりまたピシッと空気が固まる。
 そして、王様がこわごわといった様子で、エヴァンさんを示した。

「……その紋様は?」
「この紋様は、彼女に触れた時に浮き上がりました。古代文献に残る、パートナーの証です」

 エヴァンさんが堂々と言い切ると、静かに成り行きを見守っていたらしい王子たちがざわりと揺れ、ヒソヒソと話し出した。
 
 なんだか不穏な気配を察知し、私はまたエヴァンさんにピタッとくっついた。
 私を見たエヴァンさんが少し目を瞠って、やがて目尻を下げる。


「異邦人とパートナーというのは、前例がない。何か変わったことはあるか?」

 王様の一言で、一旦その場が静かになった。
 エヴァンさんは、しばらく悩むように沈黙をしていたが、やがて覚悟を決めたみたいにひとつうなずいた。

「魔法が……魔法が使えるようになりました」

 私は何度瞬きした。
 えっ、どういうこと? だって、エヴァンさん魔法使いで元々魔法使えてたんでしょ?

 疑問符を浮かべる私と違い、王様たちはまたざわりと揺れた。
 王様なんか、「なんと!」と大袈裟に驚いてた。

「ならば、今魔法を使ってみせよ」
「承知いたしました」

 エヴァンさんは立ち上がると、少しだけ悩むようにアゴを触った。

「あまり被害のない氷の魔法でいいでしょうか。かなり寒くなりますが」
「まぁ、よかろう。許可する」
「ありがとうございます」

 エヴァンさんは、クルリと後ろを向いて、何もないその場に右手をかざした。
 そして、エヴァンさんの体に光の粒子が集まったかと思うと、突如とてつもなく巨大な氷の塊を出現させた。
 三メートルはありそうな天井に届くほどの巨大な氷塊。

 さむっ! 冷蔵庫の中に来たみたいだよっ。

「よかろう。わかった。消しなさい」
「はい」

 エヴァンさんは氷の塊を熱し、綺麗に霧散させる。床にできてしまっていた水溜まりも、魔法で綺麗にしていた。

「……どうやら本当らしいな。して、ミツキよ」
「えっ、はい!」

 いきなり話の矛先を向けられて背筋を伸ばす。

「お主の希望を聞こう」
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