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第三章 逃げる者と追う者
30ラブバード
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運命とは。
頭の中に疑問符を浮かべていると、エヴァンさんが顔を擦り寄せてきた。
こ、これは、キスをしたいってこと?
どうしよう。心臓が変だ。
壊れたみたいにドキドキしてる。
だってカッコよくて優しくて優秀で、将来はこんな人と結婚したいなーと思ってた人から、求婚!
いや、求婚なの? どうだろう。違うかも。
あ、も、もしかして。魔力を自分にだけ渡して欲しいってこと? 確かにそれなら、メロメロにさせるのが手っ取り早い。方法はキスだからね。
「え、えっと、その運命っていうのは、魔力が?」
「えっ。はい。そうですけど……知っていたんですか?」
なんだ。やっぱりそういうことか。
そりゃあそうだ。そんな都合良く行くわけない。
じゃあ、まさか今までのも全部……? なんてこった。これじゃあ、浮かれてときめいた私がバカみたいだ!
「なんとなく、そうなのかなと」
「なんだ。知っていたんですね」
エヴァンさんが嬉しそうにしながら髪にちゅっちゅしてくる。ハートが飛んでいそうな雰囲気だ。
魔力のためにそこまで出来るなんて、こわい男!
「あ、あの。お礼の魔力ならお支払いするので大丈夫ですよ。そんなに気を遣わなくても……」
「え、なんの話ですか?」
「えっ? だ、だから、魔力。私の魔力が欲しいんですよね?」
「え。それは、欲しい、ですけど……。でも別になくても……。えっと、ミツキさんの言ってる魔力って、どれのことですか?」
「どれって、異邦人が持ってる魔力の他に、なにかあるんですか?」
エヴァンさんが、後ろで小さくため息をついた。そして、「確認してよかった……」と小さな声で呟く。
「この世界にある、運命のパートナーの話は、知っていますか?」
パートナー?
そういえば、ヘルセミーナの人たちが、そんなようなことを言っていたかも?
私も気になったけど、詳しく教えてくれなかったんだよね。
「え、と、エヴァンさん教えてくれなかったので、とくには。腕になにか見えるかとかは言ってましたけど」
エヴァンさんが、チラリと私の腕を見た。手首の辺り。手の甲から手首の上にかけてを、エヴァンさんが指先で撫でた。
その撫で方、ゾワゾワするからやめてほしい。えっちな気分になっちゃうでしょう!
「ココ、何か見えますか?」
「と、特には……。何かありますか?」
話し方的に、何かあるんだろうなとは思うけど、何も見えない。
魔法の才能がない人には見えないんじゃない?
「俺には──いや、この世界の魔道士たちには、俺とミツキさんの腕に、紋様が見えます。そろいの紋様で、古代文字でヘルクラーゼと刻まれてます」
「ヘルクラーゼ?」
「運命という意味ですよ」
それで、運命ってこと?
つまりどういうこと?
ヤバい。さっぱり理解できない!
「えぇと、つまりどういうことですか?」
そう訊ねると、エヴァンさんは悲しそうに眉を下げた。それはもう、キュッと下げて、目もなんだか悲しそうで。
間違いなく、言ってはいけないことを口にした。
だって、めちゃくちゃショック受けた顔してるもん!
「ご、ごめんなさい。この世界のこと、まだよくわからなくて」
必死にフォローする。
淡い期待が砕けた死人みたいな顔をしていたエヴァンさんは、気を取り直したようにかすかに首を振って、また私の腕を撫でた。
紋様があるというところを。
そこ、くすぐったいんだけどなぁ。
でも、今「触らないでください」って突っぱねたら、エヴァンさん穴掘って埋まっちゃいそう。
「いえ、そうですよね。この世界には、魔力同士が惹かれ合う、運命のパートナーが存在するんです」
「な、なるほど?」
「パートナー同士は強くひきつけあい、生涯を共にすると言われています」
生涯を共にするパートナー。
なんか、そんな感じの鳥がいたような。ラブバードなんてキュートな命名をされて、浮気をしないラブラブな鳥。
片方が死ぬと、寂しくてもう片方も死んでしまうこともあるという、まさに一蓮托生の鳥。
「つまり……?」
嫌な予感が背後から忍び寄ってくる。
これまで出会った人たちは、エヴァンさんを見て、驚いていた。そして、「異邦人様と、パートナーなのか?」と、そう言っていた。
ダラダラと冷や汗が流れた。
いやぁ、まさか。まさかね?
「……信じてもらえないかもしれませんが、俺とミツキさんが、そのパートナーなんです」
沈黙が流れた。数秒、頭を抱える。
うわぁぁ! やっぱりそうだったんだ。エヴァンさんと私が、パートナー!?
もしかして、離れたらラブバードみたいに死ぬ!?
やけにエヴァンさんが気になったのは、もうラブバードになってたからってこと!? そうなのっ?
「み、ミツキさん、落ち着いて」
頭を抱えて足をバタバタさせる私を、エヴァンさんが宥める。
「パートナーって、な、何ですか!? 離れたら死にますかっ!?」
「死……? どうでしょう。パートナーはみんな生涯を共にしたそうなので……」
なんてこと!
前例がない! でも私、地球人なんですけどぉ!?
頭の中に疑問符を浮かべていると、エヴァンさんが顔を擦り寄せてきた。
こ、これは、キスをしたいってこと?
どうしよう。心臓が変だ。
壊れたみたいにドキドキしてる。
だってカッコよくて優しくて優秀で、将来はこんな人と結婚したいなーと思ってた人から、求婚!
いや、求婚なの? どうだろう。違うかも。
あ、も、もしかして。魔力を自分にだけ渡して欲しいってこと? 確かにそれなら、メロメロにさせるのが手っ取り早い。方法はキスだからね。
「え、えっと、その運命っていうのは、魔力が?」
「えっ。はい。そうですけど……知っていたんですか?」
なんだ。やっぱりそういうことか。
そりゃあそうだ。そんな都合良く行くわけない。
じゃあ、まさか今までのも全部……? なんてこった。これじゃあ、浮かれてときめいた私がバカみたいだ!
「なんとなく、そうなのかなと」
「なんだ。知っていたんですね」
エヴァンさんが嬉しそうにしながら髪にちゅっちゅしてくる。ハートが飛んでいそうな雰囲気だ。
魔力のためにそこまで出来るなんて、こわい男!
「あ、あの。お礼の魔力ならお支払いするので大丈夫ですよ。そんなに気を遣わなくても……」
「え、なんの話ですか?」
「えっ? だ、だから、魔力。私の魔力が欲しいんですよね?」
「え。それは、欲しい、ですけど……。でも別になくても……。えっと、ミツキさんの言ってる魔力って、どれのことですか?」
「どれって、異邦人が持ってる魔力の他に、なにかあるんですか?」
エヴァンさんが、後ろで小さくため息をついた。そして、「確認してよかった……」と小さな声で呟く。
「この世界にある、運命のパートナーの話は、知っていますか?」
パートナー?
そういえば、ヘルセミーナの人たちが、そんなようなことを言っていたかも?
私も気になったけど、詳しく教えてくれなかったんだよね。
「え、と、エヴァンさん教えてくれなかったので、とくには。腕になにか見えるかとかは言ってましたけど」
エヴァンさんが、チラリと私の腕を見た。手首の辺り。手の甲から手首の上にかけてを、エヴァンさんが指先で撫でた。
その撫で方、ゾワゾワするからやめてほしい。えっちな気分になっちゃうでしょう!
「ココ、何か見えますか?」
「と、特には……。何かありますか?」
話し方的に、何かあるんだろうなとは思うけど、何も見えない。
魔法の才能がない人には見えないんじゃない?
「俺には──いや、この世界の魔道士たちには、俺とミツキさんの腕に、紋様が見えます。そろいの紋様で、古代文字でヘルクラーゼと刻まれてます」
「ヘルクラーゼ?」
「運命という意味ですよ」
それで、運命ってこと?
つまりどういうこと?
ヤバい。さっぱり理解できない!
「えぇと、つまりどういうことですか?」
そう訊ねると、エヴァンさんは悲しそうに眉を下げた。それはもう、キュッと下げて、目もなんだか悲しそうで。
間違いなく、言ってはいけないことを口にした。
だって、めちゃくちゃショック受けた顔してるもん!
「ご、ごめんなさい。この世界のこと、まだよくわからなくて」
必死にフォローする。
淡い期待が砕けた死人みたいな顔をしていたエヴァンさんは、気を取り直したようにかすかに首を振って、また私の腕を撫でた。
紋様があるというところを。
そこ、くすぐったいんだけどなぁ。
でも、今「触らないでください」って突っぱねたら、エヴァンさん穴掘って埋まっちゃいそう。
「いえ、そうですよね。この世界には、魔力同士が惹かれ合う、運命のパートナーが存在するんです」
「な、なるほど?」
「パートナー同士は強くひきつけあい、生涯を共にすると言われています」
生涯を共にするパートナー。
なんか、そんな感じの鳥がいたような。ラブバードなんてキュートな命名をされて、浮気をしないラブラブな鳥。
片方が死ぬと、寂しくてもう片方も死んでしまうこともあるという、まさに一蓮托生の鳥。
「つまり……?」
嫌な予感が背後から忍び寄ってくる。
これまで出会った人たちは、エヴァンさんを見て、驚いていた。そして、「異邦人様と、パートナーなのか?」と、そう言っていた。
ダラダラと冷や汗が流れた。
いやぁ、まさか。まさかね?
「……信じてもらえないかもしれませんが、俺とミツキさんが、そのパートナーなんです」
沈黙が流れた。数秒、頭を抱える。
うわぁぁ! やっぱりそうだったんだ。エヴァンさんと私が、パートナー!?
もしかして、離れたらラブバードみたいに死ぬ!?
やけにエヴァンさんが気になったのは、もうラブバードになってたからってこと!? そうなのっ?
「み、ミツキさん、落ち着いて」
頭を抱えて足をバタバタさせる私を、エヴァンさんが宥める。
「パートナーって、な、何ですか!? 離れたら死にますかっ!?」
「死……? どうでしょう。パートナーはみんな生涯を共にしたそうなので……」
なんてこと!
前例がない! でも私、地球人なんですけどぉ!?
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