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第三章 逃げる者と追う者
29その求婚、本気ですか?
しおりを挟む「エヴァンさんは、いいんですか? どこかに所属になっても」
「まぁ、身分が必要とか、いろいろあるかもしれませんし、一応考えてはいましたよ」
そうなのか。元々どこかに所属を考えてたってことか。なんだか優秀な人みたいだし、引く手数多なのかも。
「どこかに所属となると、やっぱり面倒ですか?」
「まぁ、自由度はなくなりますね」
やっぱりそうなのか。
嫌だなぁ。のんびり平和が一番だよ。
それからも、エヴァンさんと話を続けたけれど、難しい話になってきたこともあって、睡魔に襲われた。
「大丈夫ですか?」
「だ、ダメかもです。眠気が……」
よく考えたら、まだ異世界二日目?
今日一日で、森に行って変な獣に会って激しいえっちして、新しい街に来てって……私わりと体力使ったよね。タフすぎる。
「すみません。エヴァンさん、先、お風呂いいですか?」
「いいですよ。場所はわかります?」
「大丈夫です」
一度お風呂には入ってるから、ざっと体と髪を洗って、湯船にのんびり浸かって上がる。
髪の毛はエヴァンさんが魔法で乾かしてくれた。すごいな、魔法。
ベッドに転がってウトウトしてると、隣に誰か潜り込んでくる。って、エヴァンさんしかいないんだけど。ベッドひとつしかないもんね。
ちょっと横にずれる。でもすぐに、後ろから腰に腕が回ってきて、ぐっと、引き寄せられた。
背中にピッタリと、エヴァンさんの体がくっつく。
「エヴァンさん……?」
「ミツキ」
鼻先がうなじに擦り付けられて、ちゅっと、首筋にエヴァンさんの唇が触れた。
えっ!
えっ!? ま、まさか。えっちするつもりですか!?
「え、エヴァンさん!」
「明日起きて、またいないとか、ダメですからね」
あ、なんだ違った。そっちか。
びっくりするほど信用がないな。
まぁ、確かに、えっちしてポイ捨てしたようなものだもんね。追いかけてきてくれると、思ってなかったし。
……追いかけてきて、くれたんだよね?
まぁ、私を王都まで連れて行くのが、エヴァンさんの義務だったからだろうけど。
でもちょっとだけ、ときめいてしまった。
「エヴァンさん、来てくれて、ありがとうございました」
「ミツキ……」
「ひとりで飛び出したけれど、お金もないし、知り合いもいなくて、途方に暮れてたんです。あぁ、これは体売って生活しなきゃダメかなぁー、なーんて、思ったりして、とりあえずキスで魔力を売ろうと……」
「……」
「うわっ、エヴァンさん、力、力強いっ」
体がミシミシいった。気のせいだろうけど、そのくらいエヴァンさんの腕の力が強くなった。
「す、すみません、ミツキさん。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。骨折れたりしてないので」
背後で息を吐いたエヴァンさんが、後ろから私の肩口に顔を埋める。ギュッと抱きしめられたまま、手を絡めるようにつながれた。
「えっと、エヴァンさん」
「キス、しましたか」
「え? ま、まだ。これからしようかと思ってたら、エヴァンさんが……。あ! でも、お、お金は稼ぎますから!」
一応寄生するつもりではないとアピールする。
そりゃ、エヴァンさんと暮らせたら、楽しいし何の心配もいらないだろうけど。さすがに、ねぇ。ずうずうしいというか。
「そんなことしなくても、ミツキさんの面倒くらいみれるって言ったじゃないですか」
「いやぁ、でもそれは、社交辞令ですよね?」
「違いますが」
「……え?」
首だけ動かして、背後のエヴァンさんを見る。
めちゃくちゃ近い位置で目が合ってしまって、ドキッとした。
「社交辞令だと思ってたんですか?」
「えっ、まぁ、はい。違うんですか?」
「違いますよ。本気です。本気で、ミツキさんと暮らそうと考えてました。そのために、どうやって王族を納得させようとか、考えて……」
「……」
え。
えっ、えっ!?
い、いいいいったい、いつからそんなことに!?
だってまだ出逢って二日くらいですよ!? まぁ、えっちはしたけど。だいぶ濃いめの激しいやつ。体の相性が良かったからとか?
確かに良かったけど……。
溺れて依存症になる心配をするくらいには、良かった。あぁ、思い出したらムラムラしてくる。
「ど、どうしてですか? 暮らすって、本気で……?」
戸惑いつつ問いかけると、エヴァンさんは寂しそうに微笑んだ。
「ミツキさんは、俺の運命ですから」
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