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第三章 逃げる者と追う者
25異世界は世知辛い
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小さくため息をついて、ちょっとズレていたフードを直し、民間魔道申請所をあとにする。
帰るときも、星のマークのところからすり抜けられた。
まぁ、ほとんどの魔法使いたちは、上から飛び立って行ってたから、下の道を使うの、私くらいだったけどね……。
それにしても、王都までの旅費が高すぎる。
そりゃあ、エヴァンさんもいい顔しないはずだよ。だって高いもん。
でもよかった。エヴァンさんのお世話にならなくて。絶対エヴァンさん、言わない。王都までいくらかかったとか。
それできっと、私はなーんにも知らないで、さも当然みたいな顔してお世話になっちゃうんだよ。
うわー、無知ってこわいね。
普通に王都に行くだけで、二人で百は行くんじゃないかな。
特急便みたいなのを使ったらだけど。いや、使わなくても三ヶ月待ちだし、その間の宿泊とか生活費考えると……百いくね。
エヴァンさんに百万の借金……考えるだけで恐ろしい。
見ず知らずの女を、たまたま、本当にたまたま見つけてしまっただけで、百万の出費とか考えられない。
私なら絶対やだ。だって百万だよ? 百万。下手したらもっと!
異邦人って、神は神でも貧乏神じゃん!
気づいたら金を吸い取って、後ろからずっとついてくるあれ! 嫌すぎる。
急ぐために最上位の特急便使ったら、二人で四百万吹っ飛ぶんだから、頭おかしい……。
でも、これからどうしようか……。
行くあてもなく、トボトボと歩く。
相変わらず、魔法使いたちは自由に空を飛んでいた。地面を這う私がなんだか惨めだ。
王都へ行くためのただの申請で、五万。
近くの街まで行くのに、二万七千。そこから先また移動するだろうから、余分な移動費で十……いや、二十。
許可待つ間の宿泊費もろもろ、五十、じゃ少ない?
うん、ざっと百万は必要かな!
行き着いた結論に白目になる。
結果必要なのは百万……。
私は一文無し。しかも、荷物はローブ。以上。
いや、無理だよ。無理!
絶対無理だけど、でもやらなければ野垂れ死にだ。こんなとこで死ぬなんて嫌だ。
親も友達も誰もいないところで、「誰こいつ?」、「知らね。異邦人じゃね?」、「あーあ、野垂れ死にしてかわいそー」なんてクスクス笑われたら……!
絶対嫌だ!
なんとかして、お金を稼がないと!
と思ったものの、できることがない。
魔法の使えない私ができる手伝い……。思い浮かばないな。掃除も洗濯も料理も魔法だろうし。この街の人みんな空飛ぶから、お使いもできるかわからない。
……世知辛い。
魔法使えない人に、もうちょっと優しくてもいいのに……。
うーん。あとは、なんだろう。異邦人だと明かして、本を書くとか?
日常話を売り渡したり。エヴァンさんの家に異邦人の本があったくらいだから、多少は興味持ってくれる人もいそうだけど。
それか、あとは……。
魔力。
エヴァンさんにしたみたいに、魔力を売り渡したら、多少はお金になるのかも。
ただ、方法が、キスなことがね……。いやいや、でもこの際、選り好みしてる場合じゃないのかも。
生きるために、キッスの一つや二つ、することも大切なのかもしれない。
もうエヴァンさんにしたし!
なんなら、エヴァンさんとは、最後までいたしてしまったし!
で、でも、エヴァンさんはちょっと特別だし……。
イケメンで優しくて気遣いも完璧な優良物件だからね!
そうそう。むしろこっちが「ご馳走様でした」って頭下げなきゃいけないくらいだよ。
そんなことを考えていたから、エヴァンさんの優しそうな神秘的な紫の瞳を思い出してしまった。
綺麗な目だったなぁ。
くっきり二重で、少し切れ長な感じ。
黙ってるとすっごく綺麗だけど、くしゃりと目尻を下げて、人が良さそうな雰囲気を出して笑ってくれた。
異世界に迷い込んで、最初にエヴァンさんに助けられたの、本当に幸運だったのかもしれない。
だってエヴァンさん、当たり前みたいに面倒みてくれたもんね。
知らないジャージ干物女を、お姫様抱っこだよ。普通しないよ、そんなの。
ふわっと風が駆け抜けて、フードが取れないように押さえる。
当てもなく歩いてるけど、人が少なくなってきたな。空飛ぶ人も減ったかも。
空を見上げて、目を細める。
ああ、夜なのか。家が高く積み上げられてるからわかりにくいけど、よく見たら月が出てる。
あれ、でも今日は赤じゃないんだ。ちょっと大きいけれど、普通に金色をしてる。
夜、泊まる場所……。
やっぱり、お金も行き場もない女の人が手っ取り早く生き抜く方法っていったら、体を売る、とかになるのかなぁ。
夢も希望の欠けらも無いな、異世界生活。
帰るときも、星のマークのところからすり抜けられた。
まぁ、ほとんどの魔法使いたちは、上から飛び立って行ってたから、下の道を使うの、私くらいだったけどね……。
それにしても、王都までの旅費が高すぎる。
そりゃあ、エヴァンさんもいい顔しないはずだよ。だって高いもん。
でもよかった。エヴァンさんのお世話にならなくて。絶対エヴァンさん、言わない。王都までいくらかかったとか。
それできっと、私はなーんにも知らないで、さも当然みたいな顔してお世話になっちゃうんだよ。
うわー、無知ってこわいね。
普通に王都に行くだけで、二人で百は行くんじゃないかな。
特急便みたいなのを使ったらだけど。いや、使わなくても三ヶ月待ちだし、その間の宿泊とか生活費考えると……百いくね。
エヴァンさんに百万の借金……考えるだけで恐ろしい。
見ず知らずの女を、たまたま、本当にたまたま見つけてしまっただけで、百万の出費とか考えられない。
私なら絶対やだ。だって百万だよ? 百万。下手したらもっと!
異邦人って、神は神でも貧乏神じゃん!
気づいたら金を吸い取って、後ろからずっとついてくるあれ! 嫌すぎる。
急ぐために最上位の特急便使ったら、二人で四百万吹っ飛ぶんだから、頭おかしい……。
でも、これからどうしようか……。
行くあてもなく、トボトボと歩く。
相変わらず、魔法使いたちは自由に空を飛んでいた。地面を這う私がなんだか惨めだ。
王都へ行くためのただの申請で、五万。
近くの街まで行くのに、二万七千。そこから先また移動するだろうから、余分な移動費で十……いや、二十。
許可待つ間の宿泊費もろもろ、五十、じゃ少ない?
うん、ざっと百万は必要かな!
行き着いた結論に白目になる。
結果必要なのは百万……。
私は一文無し。しかも、荷物はローブ。以上。
いや、無理だよ。無理!
絶対無理だけど、でもやらなければ野垂れ死にだ。こんなとこで死ぬなんて嫌だ。
親も友達も誰もいないところで、「誰こいつ?」、「知らね。異邦人じゃね?」、「あーあ、野垂れ死にしてかわいそー」なんてクスクス笑われたら……!
絶対嫌だ!
なんとかして、お金を稼がないと!
と思ったものの、できることがない。
魔法の使えない私ができる手伝い……。思い浮かばないな。掃除も洗濯も料理も魔法だろうし。この街の人みんな空飛ぶから、お使いもできるかわからない。
……世知辛い。
魔法使えない人に、もうちょっと優しくてもいいのに……。
うーん。あとは、なんだろう。異邦人だと明かして、本を書くとか?
日常話を売り渡したり。エヴァンさんの家に異邦人の本があったくらいだから、多少は興味持ってくれる人もいそうだけど。
それか、あとは……。
魔力。
エヴァンさんにしたみたいに、魔力を売り渡したら、多少はお金になるのかも。
ただ、方法が、キスなことがね……。いやいや、でもこの際、選り好みしてる場合じゃないのかも。
生きるために、キッスの一つや二つ、することも大切なのかもしれない。
もうエヴァンさんにしたし!
なんなら、エヴァンさんとは、最後までいたしてしまったし!
で、でも、エヴァンさんはちょっと特別だし……。
イケメンで優しくて気遣いも完璧な優良物件だからね!
そうそう。むしろこっちが「ご馳走様でした」って頭下げなきゃいけないくらいだよ。
そんなことを考えていたから、エヴァンさんの優しそうな神秘的な紫の瞳を思い出してしまった。
綺麗な目だったなぁ。
くっきり二重で、少し切れ長な感じ。
黙ってるとすっごく綺麗だけど、くしゃりと目尻を下げて、人が良さそうな雰囲気を出して笑ってくれた。
異世界に迷い込んで、最初にエヴァンさんに助けられたの、本当に幸運だったのかもしれない。
だってエヴァンさん、当たり前みたいに面倒みてくれたもんね。
知らないジャージ干物女を、お姫様抱っこだよ。普通しないよ、そんなの。
ふわっと風が駆け抜けて、フードが取れないように押さえる。
当てもなく歩いてるけど、人が少なくなってきたな。空飛ぶ人も減ったかも。
空を見上げて、目を細める。
ああ、夜なのか。家が高く積み上げられてるからわかりにくいけど、よく見たら月が出てる。
あれ、でも今日は赤じゃないんだ。ちょっと大きいけれど、普通に金色をしてる。
夜、泊まる場所……。
やっぱり、お金も行き場もない女の人が手っ取り早く生き抜く方法っていったら、体を売る、とかになるのかなぁ。
夢も希望の欠けらも無いな、異世界生活。
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