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第三章 逃げる者と追う者
21第二の街シルバーナ
しおりを挟む「うわぁ、ここが、シルバーナ」
すごいすごい、あちこちの煙突から、もくもくと煙が上がっている。
煙突初めて見た。おお、あれなにっ? ながーい像みたいな、時計台みたいなもの。一番上には、キラキラ光る星型の文字盤みたいなの。真ん中には、針がある。
それがてっぺんきた、と思ったら、地面が動いた。
「う、わ、なにっ? 地震!?」
慌てて時計台にくっつく。この柱、ポッキリ折れたりしないよね?
動揺しながら辺りを見るけど、周りの人は平然としていた。
よく見たら、地面の一部が動いて回転していた。ガチャンッと接合され、繋がっていた道が変わる。
うへぇ、なにこれ。まさに魔法の国っ。
家の上に家があるというか、家と道が無造作に積み上げられた街。
それが、このシルバーナという街の印象だった。
家の形が四角いから、パズルのように適当に組み合わさっている。
横に広くはないけど、縦に伸びた街のようだ。そしてどうやら、もくもくと煙が出てる家が上になるようになっているみたい。煙出すのにも順番があるのかな。
わけわからないけど、そのわけわからなさが魔法という感じでワクワクする。
本当に、魔法の国に迷い込んだんだ。
でも、上って、どう行けば?
魔法使いたちは、空飛んでいるんだけど……。ほうきに乗ってたり、単純に宙に浮いてたり、バイクみたいなのに乗ってたり。
……私、魔法使えないんだよね。
まずい、どうするか。
とりあえずフードを深くかぶり直す。
エヴァンさんと出会った街は、ヘルセミーナという街らしいんだけど、そこはのどかな感じだった。
空を飛んでいる人もいなかったし、街並みも、ヨーロッパのような感じだった。エヴァンさんの家は木だったけど、他は普通の家だったし。
あんまり魔法! と強調してくることもなく、ゆーったりと時間が過ぎる感じ。まぁ、住んでる人はみんな、魔法使いなんだけど。
まあそれは置いといて、ヘルセミーナから王都へ行くには、転移装置で移動を繰り返していけばいいと知ったときは、文明──いや、魔法に感動した。
街から街へ、一瞬で移動できるって、すごすぎるよね。日本だってまだそんなのないというのに。やっぱり魔法、バンザイ。
ただ、ヘルセミーナから王都直通がないのは、正直不思議だった。
どこへでも移動できるのなら、王都直通でもいいはずなのに。
まぁ、そんなこと言っても、私は異世界から来た文明の部外者だからしかたがない。
私の移動費用と、移動の前に買ったローブの費用は、エヴァンさんのツケにした。
ごめんね、エヴァンさん。
でもエヴァンさんの信用ってすごいね。あと知名度。エヴァンさんの名前出したら、みんなツケでお買い物させてくれたよ。
絶対返しに行くから、会いに行ったとき鬼のような顔しないでね。たぶん、ちょっとショック受けちゃう。
ヘルセミーナはエヴァンさんの名前でチケット買えたけど、たぶんここは無理。こんなところまでエヴァンさんの名前でお買い物できたら、逆に私びっくりだよ。
とにかく、チケット代をなんとかしないと。
日払いのバイトとかあるかな?
あるよね、人がいるんだし、仕事の一つや二つ。
まずはチケット代いくらか確認しておこうか。
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