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第二章 二人の関係

14異邦人のお仕事

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 エヴァンさんの話によると、異邦人は基本的に王都に住むらしい。

 というのも、魔力供給を必要とする人、つまり王宮に仕える魔道士とか、魔法の研究をしてる人とか、そういう人に貢献することが、異邦人の仕事の一環だからだそうだ。


 なるほどねー。王都に行けば、私にも仕事があるってことか。

 確かに過去の異邦人がどうやって暮らしてたのか、気になっていたんだよね。なるほど、王都で無限にある魔力を提供して生きていたのか。

 でもさ、それって、王都である必要ある?

 魔力供給が仕事になるなら、どこでも仕事できるってことでしょ?
 王都とか堅苦しそうだし、どうせなら、エヴァンさんみたいな優男イケメンがいるとこがいい。

 私はすっかり胃袋をつかまれた。私はこの料理が食べたい。
 しかも、私が飛ばされたのはココだし、ここに居たら帰れるかもしれないし。

 王都で暮らしたくないんですよね~、ということを、さりげなーくエヴァンさんに伝えてみた。

 エヴァンさんは少し驚いた顔をしつつも、「なら、俺と暮らします?」と言ってくれた。

 ええっ! いいんですかっ!?
 お世話してくれちゃうんですかっ?

 ちょっと期待してたけどねっ? でもエヴァンさん、軽々しくそんなことを女に言っちゃいけませんよ。

 こんな優男イケメン、数多のハンターが飛びかかって来ちゃいますよ。まったく、危機感のない人だな。

「エヴァンさん、もっと自分を大事にしたほうがいいですよ」

 優男すぎて私は心配だよ。老婆心だよ。

「うーん。なにはともあれ、永住権と身分証は必要ですね。今後のためにも」
「そうですね。まあ、帰ること諦めてるわけではないですが、そっち方面を調べるためにも、王都には行った方がいい気がしますし」
「……そうですね。王都には、すでに異邦人が一人いたはずですので」

 えっ。
 ……えっ!

 ええっ! 王都に異邦人いたの!? 聞いてませんけどぉっ?

「……言ってませんでした?」
「言ってないですね」

 もう、このおっちょこちょいさんめっ。そういうことは早く言ってくれ。ぜひお話を聞きたい。

 その人も小指ぶつけてここに来ていたら、もう絶対小指のせいだよね。間違いない。足の小指が異世界への道だ。私は足の小指を守らねば。

 おいしいステーキを食べ終えて、ちゃっかりデザートも食べて、手を合わせる。

 王都に行くのはいいとしても、私には気になってることがある。

「あのー、エヴァンさん」
「どうされました?」

 魔法で洗い物をしてくれているエヴァンさんに声をかける。本人は座ってのんびりお茶してるんだけどね。魔法、すごい。

「えっと、私その、お金今持ってないんですけど。食費とか、あとこれからの旅費とか、出世払いでもいいですか?」

 そう。何を隠そう、私は一文無し。

 だっていきなり異世界だからね。しかたないよね。スマホもないし。身につけてたの、だっさいジャージだけだし、売れるようなものもない。

 なし崩しで甘えきっているけど、これはよくない。
 エヴァンさんは優しいから、そういうこと言わないけど。いきなり家に押しかけるなんて、絶対迷惑。

 私なら迷惑だと思うし。いつ出ていくのかなぁーと思う。私なら。

「そんなこと、気にしなくていいですよ」

 いいや、ダメだ。
 エヴァンさん、優男なのもいいですが、経費はしっかりと請求しないとダメですよ。本当に、私は優男すぎるあなたが心配ですよ。

「王都で仕事とか、どうにかするので、そのときにお返ししますね」
「俺と一緒にいるのは、嫌ですか?」

 ええ、それはなんか違くない?
 いや、私も一緒にいたいですけどね。エヴァンさん優しいし、イケメンだし、なんかいい匂いするし、優良物件だしっ。

 でもほら、甘えすぎはダメって言わない? え、言わない? そうですか。でもダメだと思うんですよね。

「王族や貴族と比べられるとアレですが、俺、これでもまあまあ稼いでいるので、ミツキさんの面倒くらいみれますよ」

 うっ、その魅惑の言葉、弱った心に忍び寄る悪魔のようだ。

「で、でも、見ず知らずの人の面倒を見るなんて……」
「俺は、ミツキさんと一緒にいたいです」

 ちょっと待って。
 なにそれ、プロポーズですか?

 いやいや落ち着いて。しっかりするんだ、花野川光希! 彼は優しい善意で言っている。それになし崩しに甘えたら、ただのダメ女だ。
 干物から完璧なヒモ女になってしまう。干物でヒモ女とか、救いようないよ。
 しっかりするんだ。気を強く持て!

「え、と、お気持ちは嬉しいですが、あんまり迷惑をかけるわけには……」
「迷惑だと思ったことは、一度もないですけどね」

 うっ。

 エヴァンさんがいい人すぎて、つらい……。

 私はナマケモノなんだよ。洗い物も洗濯物も課題も後回しにするような、ぐーたら女なんだよ。

 そんな私を甘やかしたら、どんどんぐーたらするようになっちゃうよ。やめてくれよ。一度甘えたらエヴァンさんが迷惑に思っても寄生しちゃうよ。
 なんなら、家に帰ることも諦めちゃうかもしれないよ。

「エヴァンさん、そういうのはもっとこう、えーと、大切な人にというか、えーと、その、もっと自分を大事にしてくださいっ!」

 叫んで立ちあがる。

 ちょっと外の空気吸ってきます!
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