異世界にきたら天才魔法使いに溺愛されています!?

猫山みぶ

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第一章 出逢い

9魔力のたまり場

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 靴だけ買ってもらい、エヴァンさんの瞬間移動の魔法で、森の中へとやってくる。

 ここは魔力のたまり場と呼ばれてるらしく、誰でも入れるわけではないそうだ。

 ある程度力のある魔法使いだけが、足を踏み入れることができるらしい。


 魔力のたまり場は、普通なら育たない、魔力の影響を受けた希少価値の高い植物があったりするから、ある意味宝物庫のような場所でもあるそうだ。

 そんな場所に私は突然やって来た、と。

 絶対その魔力のせいじゃん。絶対そう。魔力が憎い! 私は魔法使えないのに!


 荒ぶる私を、エヴァンさんが私と出会ったという場所まで連れて来てくれる。

「ここ、ですか?」
「はい。あそこですね、ミツキさんがいたのは」

 エヴァンさんが示した位置まで歩く。

 う~ん、本当にここ? なにもない。草がちょっと顔を出してるくらい。こんなだったっけ。
 まあ、夜だったから、あんまり覚えてないんだけれどね。月があったことくらい。不気味な紅い月。


 しゃがみこんで、地面をガン見する。
 転がってる小石から、砂の一粒一粒まで見逃すまいと、目に力を込めて見た。

「ミツキさん、目、乾きません?」
「あ、瞬き忘れてました。目薬あればなぁ」

 ドライアイにはつらいよ、まったく。

 草をかき分けて、なにか落ちてないかと見てみるけど、なにもなし。手がかりはない。犯人は現場に戻るというのは、デマだったのか。

 ブチブチと草をちぎっていると、ふと影ができる。

「エヴァンさん?」

 なんか険しい顔してますけど、どうしました? お腹でもすきました? 奇遇ですね、私もです。

「ミツキさん、動かないで」

 え、なになに。ピリッと張り詰めた空気に、どうもお腹がすいているわけではなさそうだ、と私も顔を引きしめてみた。

 なんだろう。あ……そういえば、ここ獣いたよね。まさか、またアレ?

 ガサガサと草を踏む音がした。音がした方を、ドキドキしながら見る。
 エヴァンさんって、戦えるのかな。どうしよう。ここ、トラさんが出るような場所なのに。

 私が深く考えず森に行きたいとか言ったから、エヴァンさんを巻き添えにしちゃったかもしれない。

 ゴクリと唾を飲む。

 そして、草むらから影が飛び出してきた。
 ぎゃーっ! 出たァァァァ! 見よう見まねのボクシングの構えを取って、飛び出てきてそれを見る。

 あ、れ。ウサギ?
 いや、ウサギにしては可愛くないな。
 でっかいし。牙生えてるし。目、血走ってるし……。

 ウサギのようなその生き物は、私たちの方を見ると、「ギョ、ギュエ」と鳴いた。

 ……なにそれ。
 かわいくない。かわいくないよ、その鳴き声。
 ウサギってさぁ、もっとこう、可愛いじゃん。「ふんふん、きゅーん、ふがっ」て鳴かない?
 鳴くよね? 絶対に「ギュエっ」とは鳴かない。ウサギの皮を被った別物だっ!

 ウサギに向かって眼光を放つと、バチッと一瞬光って、ウサギがその場に倒れた。
 ……えっ。えっ!

 嘘。
 もしかして私、魔法使えちゃった?
 魔法の才能開花!? うわぁ、すごいすごい!

「大丈夫ですか? ミツキさん」
「エヴァンさん、エヴァンさんっ。見ました? 今の。バチって光ってパタって!」
「ああ、少し電気ショックを与えて気絶させました。死んではいないですよ」
「……」

 へ、へぇー、そ、そう。知ってた。
 エヴァンさんがやったってことくらい、すぐわかったし。

「……ミツキさん? 顔赤いですけど、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですっ!」

 ひょいと顔をのぞき込まれた。キラキラの紫の瞳と視線がバッチリ合ってしまって、いたたまれなさと羞恥心がぶわっと湧き上がる。

 眉を下げるエヴァンさんには、心配の文字しか見えない。

 大丈夫。気づかれていない。
 私が倒したと、恥ずかしい勘違いをしたことを。


 エヴァンさんが、電気ショックでパタっと、ウサギもどきを気絶させたあと、次から次へとネズミもどきとか、リスもどきとか、本当ならば、モフモフしたくなるはずの可愛い生き物たちがやって来た。

 エヴァンさんは「少しおかしい」と言いながらも、やって来た生き物をパタっとさせては、どこかへと送り返していた。

 その間、私は草むしり。
 いやぁ、もしかしたら、魔法陣とかあったりするかもしれないからね。

「エヴァンさん、この森の動物って、ちょっと変ですね」

 ブチブチと草をむしりながら問いかける。

 ん? 返事がない。

 おかしいな。エヴァンさん、私のくだらない話にも「そうですね」とか「はい」とか、なにかしから付き合ってくれていたのに。

 根っこのついた草を持ったままくるりと振り返って、ギョッとする。

「え、エヴァンさんっ?」

 立ったまま顔をしかめ、肩で息をしながら額を押さているエヴァンさんがいた。
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