異世界にきたら天才魔法使いに溺愛されています!?

猫山みぶ

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第一章 出逢い

6エヴァンの評判

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 食堂にいた人たちが、あんぐりと口を開けて私を見た。


 そう、人だ。

 異世界とは言っても、おんなじ人。

 まあ、ちょっと、髪とか目とか派手だったり、おおよそ日本人とは思えないような背の高い人ばかりだけど。
 広い目で見たら、同じ人。


 同じ人、なんだけど……。

 こわい。


 嫌な汗が背中を伝って流れ落ちた。

 なにこれ。なんでそんなに見てるの。
 目が、ギラギラしてる。金銀財宝を見つけた海賊みたいだ。

 悲鳴が口から飛び出そうになった。
 ぎゅうっと着ていたエヴァンさんの上着の前を握りしめた瞬間、突如目の前に人の背中が現れた。

 今度こそ悲鳴を上げそうになって、ふわりと揺れたシルバーの髪を見て、堪える。

「え、エヴァンさーん……」

 エヴァンさんだった。
 見知った人だとわかった途端、体の力が抜ける。

「なぜ部屋から出たんですか」

 いや、本当にねぇ。数分前の自分をタコ殴りだよ。

「お、おなかが、すいちゃって……」

 嘘ではない。本当でもないけど。

 エヴァンさんは困ったように笑って、大きな手のひらを私の頭の上に置いた。

「ミツキさん、あなたの色は特別なんです。ちょっとこの世界の人間には、刺激が強い」

 あらためてその意味を噛み締める。
 エヴァンさんの肩越しに、この世界の人を見る。そしてすぐに隠れた。

 興奮したように顔を上気させて、舐めるように私を見ている。瞳がギラギラと光っていた。
 なんだか、ヤバい人たちに出会ってしまった気分だ。体格もいいのでよけい怖い。


「エヴァンっ、そ、その方……っ」
「どういうことだっ、エヴァン!」

 うわぁ、エヴァンさんが集中砲火されている。ごめんよ、私が迂闊な行動したばっかりに。

「見ての通り、この方は異邦人だ。今日森で見つけた。まだ混乱している。とりあえずそっとしておいて欲しい」

 興奮しきった人を前にしても、動揺もせず冷静に対処するエヴァンさんに、ちょっとキュンとした。ちょっとだけ。
 元々ずば抜けたイケメンさんだし。こんなに整った顔の人、CGでしか見たことないよ。

「なっ! エヴァンっ……、おまえ、その腕っ」

 一人の中年男性が、震える声でそう言って、エヴァンさんを指差す。

 腕? と思って、エヴァンさんの腕を見てみるけど、なにもない。一体どうしたというのか。

 首をかしげる私とは違い、お店の中は、私を見たとき以上にどよめいた。

 悲鳴のような、歓喜の声のような。
 怒号、歎美、驚愕、憧憬。
 人の顔色がこんなにもコロコロ変わるの初めて見た。圧巻だった。

「エヴァンっ、神の使いと、パートナーなのかっ?!」

 ……パートナー?
 神の使いって、私だよね。なんかそんな感じのこと言ってたし。

「エヴァンさん、エヴァンさん。パートナーって、なんですか?」

 くいとエヴァンの服を引いて、注意を向かせる。エヴァンさんは、ただニッコリと微笑んだ。

 いや、教えてくれよ。私は興味津々だよ。野次馬だよ。対岸の火事だよ。好奇心ムキムキと育ってるよ。

 エヴァンさんは私ではなく、どよめいていた人たちに向かって言葉を放つ。


「察しの通りです。今はそっとしておいてください。彼女はこれを知らないようで、まだ伝えていません。王都にも行かねばいけませんし」

 エヴァンさんの言葉で、その場にいた人たちの好奇心の炎は鎮火されていく。私の好奇心の炎は熱く滾ったままだけど。

「そ、そうか。こんな奇跡、あるものなんだなぁ。すげぇ」
「エヴァンさん、おめでとう。なんにも関心なかったあなたにも、こんな素晴らしいことが訪れるなんて……」
「クソ真面目で術式にしか興味がないと思っていたが、そうか、そうかぁ」
「俺もエヴァンは魔術と結婚するんじゃないかとヒヤヒヤしていたよ。よかったなぁ」

 エヴァンさん。あなたの評判、なかなかにあれですね?

 胡乱な目を向ける私を、エヴァンさんはチラリと一瞬だけ見て、次に涙をすする人々に目を向け、サッと一礼した。

「それでは」

 エヴァンさんは、私の手をつかんだ。
 えっ。
 身を引く前に、ぐにゃりと時空が歪む。視界がハッキリとしたときには、もう野次馬民衆たちはどこにもいなかった。

 って、ここどこっ?
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