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刈谷青翔
1話
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刈谷青翔は学生時代から目立っていた。
素行不良とまで行かないが、生活指導の教師に軽く注意される程度の校則違反はするタイプだ。コミュ障お化けと言われる人付き合いの良さと派手な見た目から、生徒教員問わず人気が高かった。
その青翔こそ、卒業前に告白してきた生徒の一人だ。
そう。
生徒、だった。
穂高は生まれて初めて頭から血が下がる音を聞いた気がする。
指先どころか心臓もすらも冷たく感じ、呼吸は浅く繰り返すばかりで肺がきりきりと痛む。
「……え? ……ひら、いずみ……センセ?」
大きく見開かれた青い瞳は記憶にないもの。おそらくはカラーコンタクトだろうが、今はどうでもいい。学生時代の髪色は淡い茶色だったが、染色された髪は紫がかった赤となり髪型も違っている。染毛にカラーコンタクトまで使用すれば、同級生でもひと目で学生時代の刈谷青翔だとは気づかないだろう。
だが穂高には分かる。
教師として生徒の顔が分かるというよりも、告白してきた相手――ましてや憎からず思っていたのだから、見間違うはずもない。
衝撃的な再会にパニック状態になり、慌てて穂高は立ち上がろうとした。
逃げたい。その気持ちが脳を圧迫する。
だが長く正座していたせいで足がもつれる穂高より、立っていた青翔のほうが動きは早かった。
起き上がりかけた穂高の背中を青翔が踏みつける。素肌に押し付けられる靴底の感触に、逃げようと藻掻いていたはずの穂高がぶるりと震えてしまった。
ここから存在ごと消え去りたいのに、背中に感じる理不尽な圧が穂高を留まらせてしまう。
いつも年下のキャストに踏まれるたびに喜びを感じていた穂高だが、今日の靴底の圧はいつもと違っていた。
――怖い? 違う。
――情けない? 違う。
――恥ずかしい? 違う。
去年卒業したとはいえ、実際の教え子に見下されながら踏まれている。
押し隠して来た歪な肉欲。年下の、それも生徒に陵辱されたいと乞い願う醜悪な希望。そのあり得ない希望が事実となったことを背中の圧が知らしめ――狂喜する。
「……ん、ッ、ぅ……」
押し殺せない歓喜の声を必死で堪えた。できれば屈辱か哀願の声だと元生徒は勘違いしてほしい。
「……へえ? なにその嬉しそうな声。平泉センセ、こういうのが好きな変態教師だったんだな?」
冷ややかな、学生時代には聞いたことがない嘲りを含んだ声に踏まれた背中が揺れる。いつもの快活さを消して緊張した面持ちで告白した声なのに、心臓の裏側が軋むほど冷徹な声を作っている。
「……なんかガッカリ。センセってクールで理知的な大人だって信じてたのにさぁ……裏切られた感が半端ないね」
ドアマットで汚れを落とすみたいに踵が穂高の背中を踏み躙った。皮膚が擦れる痛みと、それを上回る快楽が背骨を這って床に額をつけたまま震えるしか出来ない。
「あーあ、センセに告白したの、マジで黒歴史。こんな変態なら告白なんかしなかったのに……俺たちを振ったの、他所で他のチンポに媚びんのに忙しかったんだ? 胸糞わりぃ。そのモブチンポに捨てられて、わざわざここまで年下チンポ漁りに来たんだろ?」
踏まれた背中を靴裏で揺すられて穂高の体が揺れる。穂高という器の中、羞恥と快楽が撹拌されて1つになっていく。
爛れた歪な希望の熱量に溶けて膿んでいく脳の中、一筋だけ冷静な部分が残されていた。
青翔の言葉は侮蔑混じりで、罵る声音は唾棄するかのよう。
だがここはSM倶楽部であり、どういった経緯かわからないが彼はこの店のキャスト。
会員制で個人情報が秘匿される名無しは最高のサービスと最高の設備、そして最高のプレイが約束されている店だ。
ならば――青翔の態度は。
「ほらなんとか言えよ。年下のチンポじゃなきゃ満足できねえんだろ?」
ならば、ならば。
「……はい、年下おチンポ様が……好きです」
素行不良とまで行かないが、生活指導の教師に軽く注意される程度の校則違反はするタイプだ。コミュ障お化けと言われる人付き合いの良さと派手な見た目から、生徒教員問わず人気が高かった。
その青翔こそ、卒業前に告白してきた生徒の一人だ。
そう。
生徒、だった。
穂高は生まれて初めて頭から血が下がる音を聞いた気がする。
指先どころか心臓もすらも冷たく感じ、呼吸は浅く繰り返すばかりで肺がきりきりと痛む。
「……え? ……ひら、いずみ……センセ?」
大きく見開かれた青い瞳は記憶にないもの。おそらくはカラーコンタクトだろうが、今はどうでもいい。学生時代の髪色は淡い茶色だったが、染色された髪は紫がかった赤となり髪型も違っている。染毛にカラーコンタクトまで使用すれば、同級生でもひと目で学生時代の刈谷青翔だとは気づかないだろう。
だが穂高には分かる。
教師として生徒の顔が分かるというよりも、告白してきた相手――ましてや憎からず思っていたのだから、見間違うはずもない。
衝撃的な再会にパニック状態になり、慌てて穂高は立ち上がろうとした。
逃げたい。その気持ちが脳を圧迫する。
だが長く正座していたせいで足がもつれる穂高より、立っていた青翔のほうが動きは早かった。
起き上がりかけた穂高の背中を青翔が踏みつける。素肌に押し付けられる靴底の感触に、逃げようと藻掻いていたはずの穂高がぶるりと震えてしまった。
ここから存在ごと消え去りたいのに、背中に感じる理不尽な圧が穂高を留まらせてしまう。
いつも年下のキャストに踏まれるたびに喜びを感じていた穂高だが、今日の靴底の圧はいつもと違っていた。
――怖い? 違う。
――情けない? 違う。
――恥ずかしい? 違う。
去年卒業したとはいえ、実際の教え子に見下されながら踏まれている。
押し隠して来た歪な肉欲。年下の、それも生徒に陵辱されたいと乞い願う醜悪な希望。そのあり得ない希望が事実となったことを背中の圧が知らしめ――狂喜する。
「……ん、ッ、ぅ……」
押し殺せない歓喜の声を必死で堪えた。できれば屈辱か哀願の声だと元生徒は勘違いしてほしい。
「……へえ? なにその嬉しそうな声。平泉センセ、こういうのが好きな変態教師だったんだな?」
冷ややかな、学生時代には聞いたことがない嘲りを含んだ声に踏まれた背中が揺れる。いつもの快活さを消して緊張した面持ちで告白した声なのに、心臓の裏側が軋むほど冷徹な声を作っている。
「……なんかガッカリ。センセってクールで理知的な大人だって信じてたのにさぁ……裏切られた感が半端ないね」
ドアマットで汚れを落とすみたいに踵が穂高の背中を踏み躙った。皮膚が擦れる痛みと、それを上回る快楽が背骨を這って床に額をつけたまま震えるしか出来ない。
「あーあ、センセに告白したの、マジで黒歴史。こんな変態なら告白なんかしなかったのに……俺たちを振ったの、他所で他のチンポに媚びんのに忙しかったんだ? 胸糞わりぃ。そのモブチンポに捨てられて、わざわざここまで年下チンポ漁りに来たんだろ?」
踏まれた背中を靴裏で揺すられて穂高の体が揺れる。穂高という器の中、羞恥と快楽が撹拌されて1つになっていく。
爛れた歪な希望の熱量に溶けて膿んでいく脳の中、一筋だけ冷静な部分が残されていた。
青翔の言葉は侮蔑混じりで、罵る声音は唾棄するかのよう。
だがここはSM倶楽部であり、どういった経緯かわからないが彼はこの店のキャスト。
会員制で個人情報が秘匿される名無しは最高のサービスと最高の設備、そして最高のプレイが約束されている店だ。
ならば――青翔の態度は。
「ほらなんとか言えよ。年下のチンポじゃなきゃ満足できねえんだろ?」
ならば、ならば。
「……はい、年下おチンポ様が……好きです」
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