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幕間⑤
マウントしたいお年頃
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倫は推しに対して狭量で嫉妬深い自覚がある。
たとえ誰であろうとも、どんな熱量を示されようとも、推しへの同担拒否の姿勢は崩さない、それが倫という男なのだ。
だが同時に年期が入ったヲタクの嗜みとして、推しを全人類に履修させたい、世に知らしめたいという、荒ぶる気持ちを持っているのも揺るぎない事実である。
推しを自慢したい。
でも推しを隠したい。
推しのイイトコロ見せつけたい。
でも推しをイイブブンは秘匿したい。
相反する気持ちが鬩ぎ合い、常に理性と欲望が主導権を取り合っている状況だ 。
一進一退の攻防、負けられない戦いがそこにある、まさにこれは聖戦
陰キャなのになぜか義兄に関してだけ、妙にアグレッシブな態度の倫を神は哀れんだのだろう。
倫の前に一つのゲームを与えてくれたのだ。
それは無駄に凝り性なヲタ友が趣味で作り上げたインディーズの2Dゲームであり、まさに隠れて推し自慢をしたい倫にお誂え向きな内容だった。
タイトルは、【エロい恋人】。
北の大地で土産物として有名な美味しいお菓子ではない。いつの世もなぜか有名な名前をもじってしまうエロ商品は、版権スレスレの問題でもある。
パンパンマンとかパイパンマンとか。
愛と勇気が友達のヒーローに是非とも謝って欲しいと、倫は頭の隅でどうでもいいことを考えながら、 絶賛キャラメイク 中だ。
友人が製作したインディーズゲームは、タイトルの妙はともかく、内容は倫の胸がときめく内容だったので、ついついキャラメイクも張り切ってしまう。
インディーズ ゲームのわりに、幾万通りもあるキャラメイク素材にどれだけ時間を溶かしたことか。
しかし妥協はできなかった。なぜなら内容こそが人を選ぶのだが、倫は選ばれし勇者側の人間だ。
しかも楽しむためには初期投資として、モバイルモーションキャプチャーデバイスが必要となる。
インディーズゲームのくせにゲーム起動前からハードルが高いが、そもそもヲタクとは好きなものに金も労力も惜しまない生き物だ。好きなゲームにオプションが必要? ほーんと頷いて買い物カートに商品を入れてしまっても仕方がない。
進化が著しい最近のモーションキャプチャーデバイスは、500円玉ほどのセンサーを額や両手両足にベルトで装着して使用する。自分でキャラメイクした2Dキャラやアバターが、センサーに反応して画面の中で同じ動きをしてくれるのだ。
VTuberやメタバースでもよく使われているモーションキャプチャーは実に便利だ。アバターがより人間に近しい動きを与えてくれるのだから。
友人はそのモーションキャプチャーを利用した、オリジナルのエロゲーを製作して倫にテストプレイを頼んできたのだ。
既存のキャラを動かしてR18なスチルを見るのではなく、モーションキャプチャーで動く自分のアバターを画面の外の人間に見せつける露出使用。
現実社会でやれば有罪でも、ゲームの中なら無罪だ。
ゲーム内に用意されたキャラクターをパートナーに選ぶことは可能だし、別のプレイヤーと遊べる協力プレイも可能だ。
相手もモーションキャプチャーを着けていれば、それはもうリアルな動きを互いに見せれつけられるのだから。
才能の無駄遣いを惜しみ無く発揮したヲタ友のゲームは、様々なメジャーゲームを制覇してきた倫から見ても造り込みが素晴らしかった。
メジャーゲームにはない混沌とした内容が陰の者の魂を刺激し、キャラの操作性と無限のキャラメイクは美麗グラフィックと相俟ってこの上なく心臓に刺さる。
倫理的に一般流通には難しい内容なら、即売会で売ればいいじゃないと思えるゲームシステムなど最高だった。
倫の野望。
それは自分の独占欲が邪魔をして、世に雄哉の可愛さを周知できなかった今までとサヨナラすること。
エロ可愛い雄哉の姿を自分の瞳と脳内で独占したいが、誰彼構わず自慢したい気持ちもある。
男だもの。
オスだもの。
早い話が世のカップルにマウントを取りたいのだ。
だが衆人環視での露出プレイを雄哉は好まないし、公開調教はまだ早いと思う。同好の士以外に調教を見られたら、社会的に死ねる自信があった。
倫のモットーは安心安全SMプレイだ。雄哉を第一に考えなくてはならないのは義務だし、雄哉を大事にするのは自明の理だと分かっていた。
だがこのゲームを使えば、問題のほとんどはカバーできるではないか!
キャラメイクで実際の姿の雰囲気とボイスチェンジャーで声を変えれば、安心安全に雄哉のマゾ家畜ぶりを配信しても許されるのでは? ――倫は拳を握り締めた。
決意を固めた男の姿がそこにあった。
彼がその配信を見つけたのは、アングラよりもさらに深く潜り込んだ、セキュリティがしっかりしたSMに特化した裏サイトだった。
自分のパートナーや奴隷、あるいは御主人様を見せつけたい配信サイトは今日も賑わっている。
セキュリティを信頼して堂々と顔を晒している者いるし、マスクやメイクで顔を隠している者もいたりと様々だ。
最近の流行りとしては、2Dや3Dのアバターを使う者もいる。
彼が視聴中の配信は、流行りのアバターを使うものだ。
アバターは日本人離れした顔とスタイルを持った青年と、顔の半分を黒いマスクで隠した青年の二人組だった。
今風のデザインで作られた2Dアバターを使用 しているアバターカップルも、自分と同じくSMプレイを趣味としているようだ。
いや、自分の場合は仕事なのだが。
養豚場と書かれたルームの背景画像は、青い空と緑の牧草が風にたなびく長閑な風景だ。木の柵で囲われ、サイロが見えることから牧場という設定なのだろう。
ますます親近感が湧く。
「……ひ、ッ……ん……ッ」
かすれた声が聞こえた。 どうやらこのルームの使用者が画面に登場したようだ。
見れば大人の腰ほどの高さがある木の柵を跨ぎ、全裸の青年アバターが腰をうねらせながら歩いてくる。
全裸の青年が見に着けているのは、右耳に『01』と数字が書かれた黄色いイヤー タグ、『メス豚調教中』と書かれた木製の札をぶら下げた首輪だけだ。
跨いだ木の柵に股間を擦り付け、少し立ち止まっては前後に腰を振って声を上げる青年の顔は、アバター越しに恍惚の表情を浮かべていると想像できるほどの艶かしさを含んでいた。
たとえ誰であろうとも、どんな熱量を示されようとも、推しへの同担拒否の姿勢は崩さない、それが倫という男なのだ。
だが同時に年期が入ったヲタクの嗜みとして、推しを全人類に履修させたい、世に知らしめたいという、荒ぶる気持ちを持っているのも揺るぎない事実である。
推しを自慢したい。
でも推しを隠したい。
推しのイイトコロ見せつけたい。
でも推しをイイブブンは秘匿したい。
相反する気持ちが鬩ぎ合い、常に理性と欲望が主導権を取り合っている状況だ 。
一進一退の攻防、負けられない戦いがそこにある、まさにこれは聖戦
陰キャなのになぜか義兄に関してだけ、妙にアグレッシブな態度の倫を神は哀れんだのだろう。
倫の前に一つのゲームを与えてくれたのだ。
それは無駄に凝り性なヲタ友が趣味で作り上げたインディーズの2Dゲームであり、まさに隠れて推し自慢をしたい倫にお誂え向きな内容だった。
タイトルは、【エロい恋人】。
北の大地で土産物として有名な美味しいお菓子ではない。いつの世もなぜか有名な名前をもじってしまうエロ商品は、版権スレスレの問題でもある。
パンパンマンとかパイパンマンとか。
愛と勇気が友達のヒーローに是非とも謝って欲しいと、倫は頭の隅でどうでもいいことを考えながら、 絶賛キャラメイク 中だ。
友人が製作したインディーズゲームは、タイトルの妙はともかく、内容は倫の胸がときめく内容だったので、ついついキャラメイクも張り切ってしまう。
インディーズ ゲームのわりに、幾万通りもあるキャラメイク素材にどれだけ時間を溶かしたことか。
しかし妥協はできなかった。なぜなら内容こそが人を選ぶのだが、倫は選ばれし勇者側の人間だ。
しかも楽しむためには初期投資として、モバイルモーションキャプチャーデバイスが必要となる。
インディーズゲームのくせにゲーム起動前からハードルが高いが、そもそもヲタクとは好きなものに金も労力も惜しまない生き物だ。好きなゲームにオプションが必要? ほーんと頷いて買い物カートに商品を入れてしまっても仕方がない。
進化が著しい最近のモーションキャプチャーデバイスは、500円玉ほどのセンサーを額や両手両足にベルトで装着して使用する。自分でキャラメイクした2Dキャラやアバターが、センサーに反応して画面の中で同じ動きをしてくれるのだ。
VTuberやメタバースでもよく使われているモーションキャプチャーは実に便利だ。アバターがより人間に近しい動きを与えてくれるのだから。
友人はそのモーションキャプチャーを利用した、オリジナルのエロゲーを製作して倫にテストプレイを頼んできたのだ。
既存のキャラを動かしてR18なスチルを見るのではなく、モーションキャプチャーで動く自分のアバターを画面の外の人間に見せつける露出使用。
現実社会でやれば有罪でも、ゲームの中なら無罪だ。
ゲーム内に用意されたキャラクターをパートナーに選ぶことは可能だし、別のプレイヤーと遊べる協力プレイも可能だ。
相手もモーションキャプチャーを着けていれば、それはもうリアルな動きを互いに見せれつけられるのだから。
才能の無駄遣いを惜しみ無く発揮したヲタ友のゲームは、様々なメジャーゲームを制覇してきた倫から見ても造り込みが素晴らしかった。
メジャーゲームにはない混沌とした内容が陰の者の魂を刺激し、キャラの操作性と無限のキャラメイクは美麗グラフィックと相俟ってこの上なく心臓に刺さる。
倫理的に一般流通には難しい内容なら、即売会で売ればいいじゃないと思えるゲームシステムなど最高だった。
倫の野望。
それは自分の独占欲が邪魔をして、世に雄哉の可愛さを周知できなかった今までとサヨナラすること。
エロ可愛い雄哉の姿を自分の瞳と脳内で独占したいが、誰彼構わず自慢したい気持ちもある。
男だもの。
オスだもの。
早い話が世のカップルにマウントを取りたいのだ。
だが衆人環視での露出プレイを雄哉は好まないし、公開調教はまだ早いと思う。同好の士以外に調教を見られたら、社会的に死ねる自信があった。
倫のモットーは安心安全SMプレイだ。雄哉を第一に考えなくてはならないのは義務だし、雄哉を大事にするのは自明の理だと分かっていた。
だがこのゲームを使えば、問題のほとんどはカバーできるではないか!
キャラメイクで実際の姿の雰囲気とボイスチェンジャーで声を変えれば、安心安全に雄哉のマゾ家畜ぶりを配信しても許されるのでは? ――倫は拳を握り締めた。
決意を固めた男の姿がそこにあった。
彼がその配信を見つけたのは、アングラよりもさらに深く潜り込んだ、セキュリティがしっかりしたSMに特化した裏サイトだった。
自分のパートナーや奴隷、あるいは御主人様を見せつけたい配信サイトは今日も賑わっている。
セキュリティを信頼して堂々と顔を晒している者いるし、マスクやメイクで顔を隠している者もいたりと様々だ。
最近の流行りとしては、2Dや3Dのアバターを使う者もいる。
彼が視聴中の配信は、流行りのアバターを使うものだ。
アバターは日本人離れした顔とスタイルを持った青年と、顔の半分を黒いマスクで隠した青年の二人組だった。
今風のデザインで作られた2Dアバターを使用 しているアバターカップルも、自分と同じくSMプレイを趣味としているようだ。
いや、自分の場合は仕事なのだが。
養豚場と書かれたルームの背景画像は、青い空と緑の牧草が風にたなびく長閑な風景だ。木の柵で囲われ、サイロが見えることから牧場という設定なのだろう。
ますます親近感が湧く。
「……ひ、ッ……ん……ッ」
かすれた声が聞こえた。 どうやらこのルームの使用者が画面に登場したようだ。
見れば大人の腰ほどの高さがある木の柵を跨ぎ、全裸の青年アバターが腰をうねらせながら歩いてくる。
全裸の青年が見に着けているのは、右耳に『01』と数字が書かれた黄色いイヤー タグ、『メス豚調教中』と書かれた木製の札をぶら下げた首輪だけだ。
跨いだ木の柵に股間を擦り付け、少し立ち止まっては前後に腰を振って声を上げる青年の顔は、アバター越しに恍惚の表情を浮かべていると想像できるほどの艶かしさを含んでいた。
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