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幕間③
Mの嗜み・上
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クリスマス編が遅くなったのでオマケです
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ゆっくりと風呂に浸かったせいか、体の隅々までじんわりとした熱と程よい倦怠感に包まれている。
二階の廊下は冷え冷えとして静かだ。一年前まではこの静けさも雄哉には常の状態だった。
父親は滅多に二階に来ないし、気配はいつも自分の分だけ。それに慣れて自分の気配だけで構わないと思っていた。
親の再婚で義母と義弟が出来ても、二階の空き部屋に義弟が住まうことになっても、自分の生活環境はさほど変化するとは思わなかった。
義弟の、倫の声を聴くまでは――。
濡れた髪をタオルで拭きながら、雄哉は自室のドアを閉めてベッドに向かう。セミダブルのベッドが広く感じるのは、今夜は倫がバイト絡みで数日家を空けているからだろう。
いつの間にか他人の気配に馴染み、傍らにある存在に慣れてしまい、雄哉は一人だけの二階に居た頃が思い出せない。
濡れた髪のままベッドに座り、充電していたスマホを取り上げる。この時間に倫が連絡出来ないのは知っているが、それでももしかしたらとついつい見てしまう自分に苦笑してしまう。
そして落胆する……分かっていたはずなのに。
大学の友人やサークル仲間からの連絡に返信して
から、興味を無くしたようにスマホをベッドに置いた。
「……倫……」
名前を呼べば唇が寂しい。声から伝播し、体温や匂いまで思い出されて寂しさは募る。
けれど倫の顔はもちろん、体温や匂いに思いを馳せても、大好きな倫の声だけは思い出さないよう務める。
なぜなら倫の声で全てが始まり、倫の声で自分の全てを持っていかれたからだ。
倫の声を思うと体が熱くなる。肌が総毛立ち、心臓が高鳴って体は被虐の悦びを求めてしまうのだ。
「……完全に終わっているよなぁ」
倫に耳元で囁かれ一指でも触れられると、雄哉は途端に浅ましく淫らな生き物に成り果ててしまうことを自覚していた。
倫だけが雄哉を既存を壊せるし、倫だけが新たな雄哉を構築できる。
壊すも作るも倫次第になのだ。
だから倫以外はいらない。
雄哉の秘めていた本質を暴いたのは倫以外、雄哉の体も心も喜びに満ちたりしなかった。
「……倫の声を聞くか」
ベッドの側にあるケースから取り出したのは、高性能の騒音遮断機能を持つワイヤレスイヤホンとアイマスクだ。
ベッドに横になろうとしたが、ふと倫に「内鍵絶対」を言い渡された事を思い出し、素直に部屋の鍵をきちんと掛ける。
部屋を室内灯にしてからベッドへ横になった。
スマホを弄り、倫が予め入れておいた音声ファイルを立ち上げる。ファイル名は「脳イキ」だ。
アイマスクをしてから、高性能の騒音遮断イヤホンは耳に嵌めると、外の音が聞こえなくなって没入感が凄まじかった。
最初は倫の柔らかい声が、普段の会話のようにイヤホンから流れてくる。
「義兄さん、風邪引いてない?」「髪はちゃんと乾かして」「もう寝ちゃう?」「鍵は掛けた?」など緩い会話調だった。
それが次第に「体の力抜いて」「深呼吸して」「指から力を抜いて」「次は手首」「足首」「腕」「太もも」……まるで操られるように雄哉は倫の声に従順に体の力を抜いていった。
そもそも雄哉は倫の声にずっと懸想してきたのだから、倫の声に従うのは当たり前だ。
かつては倫の声で自分の中の被虐心を慰め、声優である倫の演じるサディスティックな役に興奮してきたのだ。
今は雄哉だけに向けられる声に雄哉は逆らえない。
世俗から切り離された暗闇の世界で、倫の声だけが唯一であり、倫の声だけが絶対の存在になっていった。
『義兄さん、限界まで自分で触っちゃダメだからね?』
優しげな倫の声が響く。
ふぅ……と吐息が出た。
『ね、義兄さん、想像してよ。……俺の指が義兄さんの踝からゆっくりと上に上がっていくところ』
「……ん……」
外部の音は聞こえず、視界は暗く塞がれたまま、雄哉は倫の言葉を脳で反芻して小さく呻いた。
『義兄さんは太もも弱いよね? 外側を撫でるとピクピクして、内ももを引っ掻くと腰が震えるし』
「んぁ、っ……ぁ……」
倫に触れられたみたいに、ぶるっと太ももが緊張する。
雄哉はその艶めかしい感触を覚えていた。
『内もものキワ、鼠径部を引っ掻くとおへその下が熱くなるでしょう? 知ってるよ。そこを舐めてあげると、尻を浮かせてカクカク揺するもんね?』
「は、ぁ……あぅ……」
腿の付け根がじんじんと熱い。思わず尻を浮かせて股間を掲げてしまった。
『ね、今、どんな感じ? お尻の穴がきゅうってしたんじゃないの? それとも奥が痺れてる?』
「……う、ぁ……して、る……きゅっ、してる……!」
浮いた腰が淫らに揺れた。倫の言葉通り、蹂躙される事に慣れた穴がヒクついて窄まっている。
『可哀想だね? どんなにお尻を振っても穴をキュンキュンさせても、俺がいないと空っぽだもんね? 義兄さんは俺のガチガチに固くなったチンポ好きなのに残念』
「……ん、ンーっっ、……んぅうぅぅっ」
ぎゅうううっっと窄まりが更に引き締められる。そうする事で自分の中が空っぽである事実が余計に思い知らされて苦しかった。
『乳首も、もう固いんでしょ? 淫乱。ピンピンに勃たせて、イヤらしい』
「うぁ、っ、あ……ご、めんなさ……ぁ……」
倫はまるで見ているかのように雄哉の状態を暴いていく。
Tシャツとボクサーパンツの生地を押し上げて主張する淫靡な形が自分でも分かった。
『ほんと義兄さんて……』
それまでは優しかったり、すこし意地悪な響きを含ませていた声音が変わった。
雄哉が惚れた声。雄哉が悶えた声。雄哉が果てた声。
それは冷たく支配する者の声だ。
『――雌豚』
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ゆっくりと風呂に浸かったせいか、体の隅々までじんわりとした熱と程よい倦怠感に包まれている。
二階の廊下は冷え冷えとして静かだ。一年前まではこの静けさも雄哉には常の状態だった。
父親は滅多に二階に来ないし、気配はいつも自分の分だけ。それに慣れて自分の気配だけで構わないと思っていた。
親の再婚で義母と義弟が出来ても、二階の空き部屋に義弟が住まうことになっても、自分の生活環境はさほど変化するとは思わなかった。
義弟の、倫の声を聴くまでは――。
濡れた髪をタオルで拭きながら、雄哉は自室のドアを閉めてベッドに向かう。セミダブルのベッドが広く感じるのは、今夜は倫がバイト絡みで数日家を空けているからだろう。
いつの間にか他人の気配に馴染み、傍らにある存在に慣れてしまい、雄哉は一人だけの二階に居た頃が思い出せない。
濡れた髪のままベッドに座り、充電していたスマホを取り上げる。この時間に倫が連絡出来ないのは知っているが、それでももしかしたらとついつい見てしまう自分に苦笑してしまう。
そして落胆する……分かっていたはずなのに。
大学の友人やサークル仲間からの連絡に返信して
から、興味を無くしたようにスマホをベッドに置いた。
「……倫……」
名前を呼べば唇が寂しい。声から伝播し、体温や匂いまで思い出されて寂しさは募る。
けれど倫の顔はもちろん、体温や匂いに思いを馳せても、大好きな倫の声だけは思い出さないよう務める。
なぜなら倫の声で全てが始まり、倫の声で自分の全てを持っていかれたからだ。
倫の声を思うと体が熱くなる。肌が総毛立ち、心臓が高鳴って体は被虐の悦びを求めてしまうのだ。
「……完全に終わっているよなぁ」
倫に耳元で囁かれ一指でも触れられると、雄哉は途端に浅ましく淫らな生き物に成り果ててしまうことを自覚していた。
倫だけが雄哉を既存を壊せるし、倫だけが新たな雄哉を構築できる。
壊すも作るも倫次第になのだ。
だから倫以外はいらない。
雄哉の秘めていた本質を暴いたのは倫以外、雄哉の体も心も喜びに満ちたりしなかった。
「……倫の声を聞くか」
ベッドの側にあるケースから取り出したのは、高性能の騒音遮断機能を持つワイヤレスイヤホンとアイマスクだ。
ベッドに横になろうとしたが、ふと倫に「内鍵絶対」を言い渡された事を思い出し、素直に部屋の鍵をきちんと掛ける。
部屋を室内灯にしてからベッドへ横になった。
スマホを弄り、倫が予め入れておいた音声ファイルを立ち上げる。ファイル名は「脳イキ」だ。
アイマスクをしてから、高性能の騒音遮断イヤホンは耳に嵌めると、外の音が聞こえなくなって没入感が凄まじかった。
最初は倫の柔らかい声が、普段の会話のようにイヤホンから流れてくる。
「義兄さん、風邪引いてない?」「髪はちゃんと乾かして」「もう寝ちゃう?」「鍵は掛けた?」など緩い会話調だった。
それが次第に「体の力抜いて」「深呼吸して」「指から力を抜いて」「次は手首」「足首」「腕」「太もも」……まるで操られるように雄哉は倫の声に従順に体の力を抜いていった。
そもそも雄哉は倫の声にずっと懸想してきたのだから、倫の声に従うのは当たり前だ。
かつては倫の声で自分の中の被虐心を慰め、声優である倫の演じるサディスティックな役に興奮してきたのだ。
今は雄哉だけに向けられる声に雄哉は逆らえない。
世俗から切り離された暗闇の世界で、倫の声だけが唯一であり、倫の声だけが絶対の存在になっていった。
『義兄さん、限界まで自分で触っちゃダメだからね?』
優しげな倫の声が響く。
ふぅ……と吐息が出た。
『ね、義兄さん、想像してよ。……俺の指が義兄さんの踝からゆっくりと上に上がっていくところ』
「……ん……」
外部の音は聞こえず、視界は暗く塞がれたまま、雄哉は倫の言葉を脳で反芻して小さく呻いた。
『義兄さんは太もも弱いよね? 外側を撫でるとピクピクして、内ももを引っ掻くと腰が震えるし』
「んぁ、っ……ぁ……」
倫に触れられたみたいに、ぶるっと太ももが緊張する。
雄哉はその艶めかしい感触を覚えていた。
『内もものキワ、鼠径部を引っ掻くとおへその下が熱くなるでしょう? 知ってるよ。そこを舐めてあげると、尻を浮かせてカクカク揺するもんね?』
「は、ぁ……あぅ……」
腿の付け根がじんじんと熱い。思わず尻を浮かせて股間を掲げてしまった。
『ね、今、どんな感じ? お尻の穴がきゅうってしたんじゃないの? それとも奥が痺れてる?』
「……う、ぁ……して、る……きゅっ、してる……!」
浮いた腰が淫らに揺れた。倫の言葉通り、蹂躙される事に慣れた穴がヒクついて窄まっている。
『可哀想だね? どんなにお尻を振っても穴をキュンキュンさせても、俺がいないと空っぽだもんね? 義兄さんは俺のガチガチに固くなったチンポ好きなのに残念』
「……ん、ンーっっ、……んぅうぅぅっ」
ぎゅうううっっと窄まりが更に引き締められる。そうする事で自分の中が空っぽである事実が余計に思い知らされて苦しかった。
『乳首も、もう固いんでしょ? 淫乱。ピンピンに勃たせて、イヤらしい』
「うぁ、っ、あ……ご、めんなさ……ぁ……」
倫はまるで見ているかのように雄哉の状態を暴いていく。
Tシャツとボクサーパンツの生地を押し上げて主張する淫靡な形が自分でも分かった。
『ほんと義兄さんて……』
それまでは優しかったり、すこし意地悪な響きを含ませていた声音が変わった。
雄哉が惚れた声。雄哉が悶えた声。雄哉が果てた声。
それは冷たく支配する者の声だ。
『――雌豚』
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