62 / 70
幕間③
Sの嗜み①
しおりを挟む
倫の心は無我の境地だった。
目の前にあるのは大きな寸胴鍋。むわりとした湯気が声優という職業上、常時マスクをした倫の塩顔を覆うように触れていく。
湯気の感触は喉に良さそうだが臭いは酷い。
これがカレーやスープの匂いなら胃袋を刺激してくれるのだが、寸胴鍋の中でコトコト煮立っているのは野菜や肉ではなく、縄。
麻縄。
そう、倫は仁王立ちで毛羽を取った麻縄を煮ていたのだ。
堂々と立つ姿はまるでラーメン屋の頑固親父さながらの貫禄があった。
事実、倫は煮出している麻縄の状態をしっかりと見極めているのだ。
固すぎてもダメ、柔らかすぎてもダメ。
中途半端に固ければ義兄である雄哉の玉のお肌を傷つけてしまう。逆に柔らかすぎれば緊縛が不様に緩んで義兄を満足させられない。
なめらかで端整な肉体美を誇る義兄の肉体に絡む縄なのだ。最上の状態で仕上げ、この薄着の季節に緊縛の痕が残らない魅惑の感触を誇る至高の麻縄を作らねば!
至高の縄とはなんぞ? と、冷静になって我に返ってはいけない。大事なのは勢いと肉欲と愛。
倫の母親と雄哉の父親が再婚して義兄弟になった二人だが、同時に今は二人の関係はご主人様と家畜奴隷でもある。その関係をより良い物に維持する努力を惜しまないほどに倫は甲斐甲斐しい。
なぜなら倫は、ひらすら、ただひたすらに雄哉の被虐趣味を満足させることが自分の使命だと思っているのだ。もやは殉教する勢い。まさに義兄教の教祖にて敬虔な信者。
格好良くて可愛くてエッチな義兄は経典に残すべきだと考えているのだ。
だからこそ信者として倫は雄哉のためにあらゆる準備を行うつもりだった。
緊縛プレイに雄哉が興味を持ったなら、縛り方を覚えて練習し、プレイ中に間が抜けないようスマートな手練に縛り上げる。その技術を研鑽し、極め、道具を用意し、準備するのはS側の嗜みではないか。
それになにより倫が雄哉を縛りたい。縛りたいんだから縛りまくりたい。あの健康的な肌に麻縄が絡み、鍛えられた無駄のない細マッチョな筋肉にみっちりと食い込むのだ。
控えめに言って最の高。
義兄の艶めかしい姿の前に、理性は不要だと倫は知っていた。
加えて言えば、夏とは青い性が暴走しても許される危険なシーズンなのだから。
夏に向けて嗜好の縄捌きに余念がない倫だが、たぶん、春夏秋冬年がら年中同じ事を言う自信があった。
ことこと煮込まれる縄を眺めながら、倫の脳内では雄哉の日焼けした肌が卑猥に描き出されて絶賛大スクリーンで上映中。えっちだ。えっちが過ぎてバルを受けなくちゃいけないくらい、義兄の雄哉は愛しさで脳が溶ける。
倫は溶けた脳で思考する。
まずは基本中の基本、亀甲縛りをしてみるか、股縄を掛けて四つん這いで散歩させるか、それとも片足を吊して魅惑の股間を曝け出せるか――。
男の浪漫が広がる。
想像と妄想に身を委ねていた倫だったが、突然カッと一重の瞳を見開いた。
ここだ! このタイミングだ! ここで縄を引き上げ、あとは乾かして馬油を擦り込んで仕上げるのだ!
「なんだ倫、まだ起きてたのか。早く寝ろよ」
「あ、うん。お休み、義兄さん」
どぱぱぱぱぱぱぱと寸胴を傾け、お湯を流していた倫の背後に、飲み物を取りに来た雄哉が声を掛けて二階に上がっていく。
だが麻縄の処理が残る倫はまだまだ眠らなかった。
「……ン゛グゥッ、ン゛ン゛っ、ん゛ン゛ッッッ」
くぐもった声がバスルームに響く。
再婚した親同士は旅行が趣味で、今夜も二人で一泊旅行に出掛けて留守だった。この前仕込んだ麻縄もいい感じの色合いと硬さと手触り状態。
だったらやることは一つだろう。
「ほら、まだへばるなよ? 夜は長いんだからな?」
浴室の床に両膝を揃えて膝立ちになっているのは、鞣し革のような艶を持つ肌を汗で湿らせた雄哉だ。
大きな結び目を作った麻縄で猿轡を噛ませられ。上半身は胸筋が迫り出すように胸に縄を打って後ろ手に縛り、ぴったりと揃えた太股は膝上と太股の半ばで縛り上げている。だが揃った太股の間には、筋肉質な太股で挟み込むように電気マッサージ器が浴室に音を反響させながら震えていた。
恥骨を殴るにも似た強い刺激に、先走りと小水と潮が止まらず、倫が用意した麻縄はびしょびしょになっている。
もちろん終わった後は倫が麻縄を洗い、乾かし、馬油を塗り直して片付ける。
プレイはサディスティックに、プレイ以外はサービスに徹する、それが倫のSとしての嗜みなのだった。
************************
SMばかっぷる義兄弟
夏あたりにツイッターの小ネタで書いたものを加筆改稿
2日遅れくらいで幕間にクリスマスネタ投稿するので①
目の前にあるのは大きな寸胴鍋。むわりとした湯気が声優という職業上、常時マスクをした倫の塩顔を覆うように触れていく。
湯気の感触は喉に良さそうだが臭いは酷い。
これがカレーやスープの匂いなら胃袋を刺激してくれるのだが、寸胴鍋の中でコトコト煮立っているのは野菜や肉ではなく、縄。
麻縄。
そう、倫は仁王立ちで毛羽を取った麻縄を煮ていたのだ。
堂々と立つ姿はまるでラーメン屋の頑固親父さながらの貫禄があった。
事実、倫は煮出している麻縄の状態をしっかりと見極めているのだ。
固すぎてもダメ、柔らかすぎてもダメ。
中途半端に固ければ義兄である雄哉の玉のお肌を傷つけてしまう。逆に柔らかすぎれば緊縛が不様に緩んで義兄を満足させられない。
なめらかで端整な肉体美を誇る義兄の肉体に絡む縄なのだ。最上の状態で仕上げ、この薄着の季節に緊縛の痕が残らない魅惑の感触を誇る至高の麻縄を作らねば!
至高の縄とはなんぞ? と、冷静になって我に返ってはいけない。大事なのは勢いと肉欲と愛。
倫の母親と雄哉の父親が再婚して義兄弟になった二人だが、同時に今は二人の関係はご主人様と家畜奴隷でもある。その関係をより良い物に維持する努力を惜しまないほどに倫は甲斐甲斐しい。
なぜなら倫は、ひらすら、ただひたすらに雄哉の被虐趣味を満足させることが自分の使命だと思っているのだ。もやは殉教する勢い。まさに義兄教の教祖にて敬虔な信者。
格好良くて可愛くてエッチな義兄は経典に残すべきだと考えているのだ。
だからこそ信者として倫は雄哉のためにあらゆる準備を行うつもりだった。
緊縛プレイに雄哉が興味を持ったなら、縛り方を覚えて練習し、プレイ中に間が抜けないようスマートな手練に縛り上げる。その技術を研鑽し、極め、道具を用意し、準備するのはS側の嗜みではないか。
それになにより倫が雄哉を縛りたい。縛りたいんだから縛りまくりたい。あの健康的な肌に麻縄が絡み、鍛えられた無駄のない細マッチョな筋肉にみっちりと食い込むのだ。
控えめに言って最の高。
義兄の艶めかしい姿の前に、理性は不要だと倫は知っていた。
加えて言えば、夏とは青い性が暴走しても許される危険なシーズンなのだから。
夏に向けて嗜好の縄捌きに余念がない倫だが、たぶん、春夏秋冬年がら年中同じ事を言う自信があった。
ことこと煮込まれる縄を眺めながら、倫の脳内では雄哉の日焼けした肌が卑猥に描き出されて絶賛大スクリーンで上映中。えっちだ。えっちが過ぎてバルを受けなくちゃいけないくらい、義兄の雄哉は愛しさで脳が溶ける。
倫は溶けた脳で思考する。
まずは基本中の基本、亀甲縛りをしてみるか、股縄を掛けて四つん這いで散歩させるか、それとも片足を吊して魅惑の股間を曝け出せるか――。
男の浪漫が広がる。
想像と妄想に身を委ねていた倫だったが、突然カッと一重の瞳を見開いた。
ここだ! このタイミングだ! ここで縄を引き上げ、あとは乾かして馬油を擦り込んで仕上げるのだ!
「なんだ倫、まだ起きてたのか。早く寝ろよ」
「あ、うん。お休み、義兄さん」
どぱぱぱぱぱぱぱと寸胴を傾け、お湯を流していた倫の背後に、飲み物を取りに来た雄哉が声を掛けて二階に上がっていく。
だが麻縄の処理が残る倫はまだまだ眠らなかった。
「……ン゛グゥッ、ン゛ン゛っ、ん゛ン゛ッッッ」
くぐもった声がバスルームに響く。
再婚した親同士は旅行が趣味で、今夜も二人で一泊旅行に出掛けて留守だった。この前仕込んだ麻縄もいい感じの色合いと硬さと手触り状態。
だったらやることは一つだろう。
「ほら、まだへばるなよ? 夜は長いんだからな?」
浴室の床に両膝を揃えて膝立ちになっているのは、鞣し革のような艶を持つ肌を汗で湿らせた雄哉だ。
大きな結び目を作った麻縄で猿轡を噛ませられ。上半身は胸筋が迫り出すように胸に縄を打って後ろ手に縛り、ぴったりと揃えた太股は膝上と太股の半ばで縛り上げている。だが揃った太股の間には、筋肉質な太股で挟み込むように電気マッサージ器が浴室に音を反響させながら震えていた。
恥骨を殴るにも似た強い刺激に、先走りと小水と潮が止まらず、倫が用意した麻縄はびしょびしょになっている。
もちろん終わった後は倫が麻縄を洗い、乾かし、馬油を塗り直して片付ける。
プレイはサディスティックに、プレイ以外はサービスに徹する、それが倫のSとしての嗜みなのだった。
************************
SMばかっぷる義兄弟
夏あたりにツイッターの小ネタで書いたものを加筆改稿
2日遅れくらいで幕間にクリスマスネタ投稿するので①
20
お気に入りに追加
1,445
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる