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幕間②
謹賀新年 前の巻
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あけましておめでとうございます。もう2月近いですが……。
気がついたら栞が増えていたり、感想で待っているとの言葉を頂いたので、
予定していた短編より先にこちらを急遽小ネタにしてご挨拶を。
前後編です。今日か明日中に後編も更新予定
連載は上記の章の7話からになりますので、連載再開更新したときはそちらをご覧下さい。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
尊い。
義兄の和服姿――。
ひたすら尊い。
母親に頼んで和服の着付けを習った甲斐があるというもの。
倫は正に雄哉の和装見たさに、年の瀬に頑張って着付けを覚えたのだ。大掃除や正月の準備で忙しい母親に平身低頭で教えを乞い、嫌がられるかと戦々恐々としたものの、母親は意外にもにこやかに息子の頼みを聞いてくれた。
大きくなって手が離れていた息子に頼られ、母親はそれなりに嬉しかったのかも知れない。
煩悩と下心ののなせる技か、倫が着付けた和装は母親に十分だと合格を貰えていた。
そしてついに自分で着付けた義兄である雄哉の和装姿を拝むことが出来て、義弟である倫ご機嫌なのだ。
なにしろ雄哉は目元も涼やかな美形だし、体も鍛えているから和服に着られている感もない。よくあるぼんぼん風味の若旦那というよりも、漂うこの凜々しい武士感。
母親だって言ったものだ。
『あらぁ、着物も倫なら七五三だけど、雄哉君だと男前ねぇ。あ、そうそう。これを着たらもっといいんじゃない?』
と、母親が出してきたのは、安価な作りなら若干コスプレ感の漂う黒のインバネスコート。だが生地や仕立てはいいので安いコスプレ感は無く、むしろ雄哉の男の色気を引き立てていた。
――母親のセンスを、悔しいが認めよう。
黒のインバネスコートと藍色の着物を着こなす義兄、これ最強に尊い。
事実、年明け直後の初詣に合わせ、早めに雄哉と神社に向かったのだが、長身でインバネスコートを羽織る雄哉に向けられる熱視線の多いこと多いこと。そうだろうそうだろう、俺の義兄さんは男前で格好良くて色っぽいだろう。
ドヤ顔な倫の方は着物では無く、ファー付きのダウンコートにコーデュロイのパンツという、至って普通のスタイルだった。
声優という仕事柄、喉を痛めないようにマスク姿の倫は雄哉の姿に終始にんまりである。
マスクがあって良かった。口元が隠れたお陰で、お巡りさんを呼ばれずに済む。
大丈夫。アへ顔並みにだらしない顔になっているけど、バレてないから平気平気。
その尊い義兄が、初詣の人並みに揉まれて目元を赤くしていた。
もっとも新年にお屠蘇を引っかけてくる人間も多いので、赤ら顔はそこまで目立っては居ない。
「義兄さん、大丈夫? 人に酔っちゃった?」
慎重差のため、踵を少し上げて雄哉の耳元で囁く。
「……ふ、……ぁ……」
溜め息に似た声はどこか艶めかしい。その声にぞくぞくしながら、雄哉の右耳にワイヤレスイヤホンをそっと嵌めてやった。
そして使い慣れた音楽プレイヤーのダイヤルを回して、予め録音していた台詞の一つを再生すれば――。
『こんな人が居る場所で喘ぐな、メス豚が』
倫の声フェチである雄哉が、もっとも好きな倫のタチ役キャラの、罵り声――。
「……ン、ッ……」
ぶるっと雄哉が体を震わせた。
初詣に向かう人混みは、他人との距離感が限りなく0に近い。そんな場所で爛れた声は出せないと、必死に口元を引き結ぶ姿が堪らない。
自然、倫は音楽プレイヤーを更に再生してしまう。
『それとも人に見られたいのか? よかろう、ならばそこに這いつくばって尻を掲げ、いやしいメス豚のタダ交尾穴にチンポをハメて下さいと言え』
――言えるわけが無い。
しかし倫の成りきった冷徹な声に溺れ、雄哉の目元がますます赤くなる。
『発情メス豚らしく尻を振ってオスを誘え』
『チンポ無しでは生きられないメス豚が。目の前に山とあるチンポが欲しいんだろう?』
『どのチンポがいいか、おチンポお恵み下さいと土下座して頼んでみたらどうだ』
ワイヤレスイヤホンから響く倫の声に鼓膜を犯され、雄哉はまるで酔ったように赤くなって足下も怪しくなる。だがそんな様子も正月の風景に溶け込み、めでたい振る舞い酒のせいだろうと気にとめる人もいない。
涼しげだった目元が熟れ、潤んだ瞳が倫を見る。声にならない声で、唇だけを必死に動かした言葉は――。
『……りん、の……お、ちん、ぽ……が、ほしい……』
無言で倫は雄哉の手を摑んだ。
賽銭箱まで辿り着いていないが、そこは夜が明けてからゆっくりと詣でると言うことで。
人の流れに逆らい、流しのタクシーを拾った倫が向かったのはこの神社から少し離れた日本家屋を模したとある宿だ。
むろん、こんな事態を予想してちゃんと予約済みな倫は、自分でも出来る男だと思う。
古びてはいるが飴色に磨かれた廊下を歩けば、あちこちの障子に男達の影が映って気分は盛り上がる。
そう、ここは倫がバイトしていたゲイ向けSM倶楽部の会員の一人が自宅を改造し、和の雰囲気を楽しむ男同士の“連れ込み宿”なのだ。
予約していた部屋に入って襖を閉めるなり、ダウンコートを脱いで倫は声に霜を宿らせた。
「俺のチンポが欲しいんだろ? ほら立ったまま着物を捲って見せろよ」
畳敷きの部屋の中央に立ち、言われるままに雄哉が着物の裾を割る。
武士めいた禁欲的な和装スタイルが、自ら淫猥に乱れていく様は、否応にも倫の興奮を誘う。
ストリッパーが焦らすようにゆっくりと雄哉が着物の裾を捲れば、下着の上から麻縄で股縄を掛けられた下肢が丸見えになった。
出掛ける前に倫が雄哉の股間を食い込ませるように、腰と股座に縄を打っておいたのだ。歩くたびに麻縄が食い込んで雄哉はそうとう悩ましかったはず。
その証拠に麻縄に刺激されたのか、雄哉の股間の膨らみは大きく強調されていた。
地肌に縄をじかに打たなかったのは、雄哉が歩く距離を考えてだ。麻縄で雄哉の股間部分の肌が擦り剥けてはいろいろ差し障るので、そこは雄哉大事で控えた倫だった。
けれど、ここなら。
ほぼ歩く必要の無いこの場所なら。
思うさまに雄哉の裸体に麻縄を食い込ませる事が出来るではないか!
viva、新年!
ぴしりと倫は部屋に置いてあった縄を両手で引き延ばす。
正月から夢の和装プレイ。初セックスは和の心で!
「さあ、年始めから発情しているメス豚にチンポを恵んでやるから土下座しろ」
気がついたら栞が増えていたり、感想で待っているとの言葉を頂いたので、
予定していた短編より先にこちらを急遽小ネタにしてご挨拶を。
前後編です。今日か明日中に後編も更新予定
連載は上記の章の7話からになりますので、連載再開更新したときはそちらをご覧下さい。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
尊い。
義兄の和服姿――。
ひたすら尊い。
母親に頼んで和服の着付けを習った甲斐があるというもの。
倫は正に雄哉の和装見たさに、年の瀬に頑張って着付けを覚えたのだ。大掃除や正月の準備で忙しい母親に平身低頭で教えを乞い、嫌がられるかと戦々恐々としたものの、母親は意外にもにこやかに息子の頼みを聞いてくれた。
大きくなって手が離れていた息子に頼られ、母親はそれなりに嬉しかったのかも知れない。
煩悩と下心ののなせる技か、倫が着付けた和装は母親に十分だと合格を貰えていた。
そしてついに自分で着付けた義兄である雄哉の和装姿を拝むことが出来て、義弟である倫ご機嫌なのだ。
なにしろ雄哉は目元も涼やかな美形だし、体も鍛えているから和服に着られている感もない。よくあるぼんぼん風味の若旦那というよりも、漂うこの凜々しい武士感。
母親だって言ったものだ。
『あらぁ、着物も倫なら七五三だけど、雄哉君だと男前ねぇ。あ、そうそう。これを着たらもっといいんじゃない?』
と、母親が出してきたのは、安価な作りなら若干コスプレ感の漂う黒のインバネスコート。だが生地や仕立てはいいので安いコスプレ感は無く、むしろ雄哉の男の色気を引き立てていた。
――母親のセンスを、悔しいが認めよう。
黒のインバネスコートと藍色の着物を着こなす義兄、これ最強に尊い。
事実、年明け直後の初詣に合わせ、早めに雄哉と神社に向かったのだが、長身でインバネスコートを羽織る雄哉に向けられる熱視線の多いこと多いこと。そうだろうそうだろう、俺の義兄さんは男前で格好良くて色っぽいだろう。
ドヤ顔な倫の方は着物では無く、ファー付きのダウンコートにコーデュロイのパンツという、至って普通のスタイルだった。
声優という仕事柄、喉を痛めないようにマスク姿の倫は雄哉の姿に終始にんまりである。
マスクがあって良かった。口元が隠れたお陰で、お巡りさんを呼ばれずに済む。
大丈夫。アへ顔並みにだらしない顔になっているけど、バレてないから平気平気。
その尊い義兄が、初詣の人並みに揉まれて目元を赤くしていた。
もっとも新年にお屠蘇を引っかけてくる人間も多いので、赤ら顔はそこまで目立っては居ない。
「義兄さん、大丈夫? 人に酔っちゃった?」
慎重差のため、踵を少し上げて雄哉の耳元で囁く。
「……ふ、……ぁ……」
溜め息に似た声はどこか艶めかしい。その声にぞくぞくしながら、雄哉の右耳にワイヤレスイヤホンをそっと嵌めてやった。
そして使い慣れた音楽プレイヤーのダイヤルを回して、予め録音していた台詞の一つを再生すれば――。
『こんな人が居る場所で喘ぐな、メス豚が』
倫の声フェチである雄哉が、もっとも好きな倫のタチ役キャラの、罵り声――。
「……ン、ッ……」
ぶるっと雄哉が体を震わせた。
初詣に向かう人混みは、他人との距離感が限りなく0に近い。そんな場所で爛れた声は出せないと、必死に口元を引き結ぶ姿が堪らない。
自然、倫は音楽プレイヤーを更に再生してしまう。
『それとも人に見られたいのか? よかろう、ならばそこに這いつくばって尻を掲げ、いやしいメス豚のタダ交尾穴にチンポをハメて下さいと言え』
――言えるわけが無い。
しかし倫の成りきった冷徹な声に溺れ、雄哉の目元がますます赤くなる。
『発情メス豚らしく尻を振ってオスを誘え』
『チンポ無しでは生きられないメス豚が。目の前に山とあるチンポが欲しいんだろう?』
『どのチンポがいいか、おチンポお恵み下さいと土下座して頼んでみたらどうだ』
ワイヤレスイヤホンから響く倫の声に鼓膜を犯され、雄哉はまるで酔ったように赤くなって足下も怪しくなる。だがそんな様子も正月の風景に溶け込み、めでたい振る舞い酒のせいだろうと気にとめる人もいない。
涼しげだった目元が熟れ、潤んだ瞳が倫を見る。声にならない声で、唇だけを必死に動かした言葉は――。
『……りん、の……お、ちん、ぽ……が、ほしい……』
無言で倫は雄哉の手を摑んだ。
賽銭箱まで辿り着いていないが、そこは夜が明けてからゆっくりと詣でると言うことで。
人の流れに逆らい、流しのタクシーを拾った倫が向かったのはこの神社から少し離れた日本家屋を模したとある宿だ。
むろん、こんな事態を予想してちゃんと予約済みな倫は、自分でも出来る男だと思う。
古びてはいるが飴色に磨かれた廊下を歩けば、あちこちの障子に男達の影が映って気分は盛り上がる。
そう、ここは倫がバイトしていたゲイ向けSM倶楽部の会員の一人が自宅を改造し、和の雰囲気を楽しむ男同士の“連れ込み宿”なのだ。
予約していた部屋に入って襖を閉めるなり、ダウンコートを脱いで倫は声に霜を宿らせた。
「俺のチンポが欲しいんだろ? ほら立ったまま着物を捲って見せろよ」
畳敷きの部屋の中央に立ち、言われるままに雄哉が着物の裾を割る。
武士めいた禁欲的な和装スタイルが、自ら淫猥に乱れていく様は、否応にも倫の興奮を誘う。
ストリッパーが焦らすようにゆっくりと雄哉が着物の裾を捲れば、下着の上から麻縄で股縄を掛けられた下肢が丸見えになった。
出掛ける前に倫が雄哉の股間を食い込ませるように、腰と股座に縄を打っておいたのだ。歩くたびに麻縄が食い込んで雄哉はそうとう悩ましかったはず。
その証拠に麻縄に刺激されたのか、雄哉の股間の膨らみは大きく強調されていた。
地肌に縄をじかに打たなかったのは、雄哉が歩く距離を考えてだ。麻縄で雄哉の股間部分の肌が擦り剥けてはいろいろ差し障るので、そこは雄哉大事で控えた倫だった。
けれど、ここなら。
ほぼ歩く必要の無いこの場所なら。
思うさまに雄哉の裸体に麻縄を食い込ませる事が出来るではないか!
viva、新年!
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