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快楽調教はじめました
4話
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午後八時というのは微妙な時間だ。
来客には遅い時間だが、深夜と違い全く人が来ない時間とは言えない。
そこに裸のまま、玄関に尻を向けて待てというのか。
当然の話だが、玄関の鍵を掛けるわけにはいかなかった。鍵を掛けてしまえば、あの快楽をくれる男は入れないのだから。
誰が来るとも知れない玄関で言い訳もできない格好で醜態を晒し、犯されるのを待つ自分を想像して体の疼きが止まらなくなった。
心臓が痛いくらいに動機で脈打っている。
義弟の倫はバイトで、帰りは終電ぎりぎりだと言っていた。たぶん、0時近くになるだろう。
つまり、それまでは――犯して貰えるのだ。
スマホの時間を見て、リビングで服を脱ぎながら雄哉は愚かな自分を止めようとする理性と、一度味わった快楽を逃がすまいとする欲望がせめぎ合っている。
けれど服を脱いでしまえば、理性と欲望の天秤は一気に欲望側に大きく傾いていた。
午後八時の十分前。
雄哉は成人してから、初めて全裸で自宅の廊下を歩いていた。
いつも住んでいる自宅の廊下なのに、服を着ていないだけで違う場所で迷っているような気分にある。
廊下はこんなに長かっただろうか? 足裏に感じる木材はこんなに冷たかっただろうか。
興奮と恐怖と期待で脈打つ心臓を押さえ、震える手でしっかりと施錠していたドアの鍵を開ける。これで誰かがドアを開けたら、全裸の雄哉が丸見えになってしまうのに、自分で自分の黄道が制御できなくなっていた。
既にイヤホンは耳に装着済みで、震える手でアイマスクを着け、ボールギャグを口に嵌めてから手探りで音楽プレイヤーを再生する。
『たっぷり可愛がってやるよ、――。――は俺の可愛い犬だからな』
編集で潰したボイスドラマの主人公の名前がもどかしい。言葉を消した小さな雑音ではなく、雄哉と呼ばれたら最高なのにと興奮した頭で思う。
音量はこの前のままで、音の大きさから外部の気配が完全に遮断される。おそらく扉が開く音も分からないはずだ。
ああ、どうしよう。
もし扉を開けたのがバイト帰りの倫だったら。あるいは旅行から戻った両親だったら。それとも用事かなにかで訪れた近所の人や宅配の業者だったら。
身の破滅だと分かってるのに、玄関で尻を向けて覚えたての快楽を欲しがる自分を止められない。
一秒なのか、一分なのか、一時間なのか、長いのか短いのか分からない時間の中で、ひやりとした外気が尻に触れる感覚がした。
扉の音は分からなかったが、人が入ってきたのは分かる。
誰? 誰? 誰が、自分のこんな情けない格好を見ているのか。
「ん、ごぉ……む、ぐぅぅぅっっ」
尻を撫でられたかと思うと、掌で尻肉を叩かれる痛みが襲ってきた。
「ん、むぅッ、ぐむ、……ッ!」
何度も何度も叩かれる。叩かれながら雄哉は確信していた。
彼だ。
あのものすごい快楽をくれる人が入ってきたのだ。
来客には遅い時間だが、深夜と違い全く人が来ない時間とは言えない。
そこに裸のまま、玄関に尻を向けて待てというのか。
当然の話だが、玄関の鍵を掛けるわけにはいかなかった。鍵を掛けてしまえば、あの快楽をくれる男は入れないのだから。
誰が来るとも知れない玄関で言い訳もできない格好で醜態を晒し、犯されるのを待つ自分を想像して体の疼きが止まらなくなった。
心臓が痛いくらいに動機で脈打っている。
義弟の倫はバイトで、帰りは終電ぎりぎりだと言っていた。たぶん、0時近くになるだろう。
つまり、それまでは――犯して貰えるのだ。
スマホの時間を見て、リビングで服を脱ぎながら雄哉は愚かな自分を止めようとする理性と、一度味わった快楽を逃がすまいとする欲望がせめぎ合っている。
けれど服を脱いでしまえば、理性と欲望の天秤は一気に欲望側に大きく傾いていた。
午後八時の十分前。
雄哉は成人してから、初めて全裸で自宅の廊下を歩いていた。
いつも住んでいる自宅の廊下なのに、服を着ていないだけで違う場所で迷っているような気分にある。
廊下はこんなに長かっただろうか? 足裏に感じる木材はこんなに冷たかっただろうか。
興奮と恐怖と期待で脈打つ心臓を押さえ、震える手でしっかりと施錠していたドアの鍵を開ける。これで誰かがドアを開けたら、全裸の雄哉が丸見えになってしまうのに、自分で自分の黄道が制御できなくなっていた。
既にイヤホンは耳に装着済みで、震える手でアイマスクを着け、ボールギャグを口に嵌めてから手探りで音楽プレイヤーを再生する。
『たっぷり可愛がってやるよ、――。――は俺の可愛い犬だからな』
編集で潰したボイスドラマの主人公の名前がもどかしい。言葉を消した小さな雑音ではなく、雄哉と呼ばれたら最高なのにと興奮した頭で思う。
音量はこの前のままで、音の大きさから外部の気配が完全に遮断される。おそらく扉が開く音も分からないはずだ。
ああ、どうしよう。
もし扉を開けたのがバイト帰りの倫だったら。あるいは旅行から戻った両親だったら。それとも用事かなにかで訪れた近所の人や宅配の業者だったら。
身の破滅だと分かってるのに、玄関で尻を向けて覚えたての快楽を欲しがる自分を止められない。
一秒なのか、一分なのか、一時間なのか、長いのか短いのか分からない時間の中で、ひやりとした外気が尻に触れる感覚がした。
扉の音は分からなかったが、人が入ってきたのは分かる。
誰? 誰? 誰が、自分のこんな情けない格好を見ているのか。
「ん、ごぉ……む、ぐぅぅぅっっ」
尻を撫でられたかと思うと、掌で尻肉を叩かれる痛みが襲ってきた。
「ん、むぅッ、ぐむ、……ッ!」
何度も何度も叩かれる。叩かれながら雄哉は確信していた。
彼だ。
あのものすごい快楽をくれる人が入ってきたのだ。
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