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義兄弟になりました
4話
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母親が少女のように頬を染めて再婚すると聞いたとき、倫の感想は“お幸せに”と淡泊な物だった。
お相手がアイドルなどに曲を提供している著名な作曲家だと知った時は驚いたが、ただそれだけ。
アニメやゲーム曲の作曲を手懸けていたら、オタクである倫のテンションは上がったかも知れないが。
今さら母親を他の男に取られるなどと考える年齢でもない。無事に婚姻を済ませれば、父親となる男としばらく同居する事になるらしいが、倫の生活基盤が整えば一人暮らしをしてもいいと冷静に考えていた。
幸い掛け持ちしているバイトの片方は、人には言えないがなかなかに高収入だ。そちらにシフトを多く組めば、問題なく一人暮らしは出来るだろう。
もともと人見知りで軽度のコミュ障でもある倫だ。親しい友人や同好の士が集う場所なら雄弁だが、それ以外は無口で通しているし、小学生ならともかく、専門学生になってまでアレコレ言われたりはしないはず。
そんな気分で両家族の顔合わせである食事会で――倫は衝撃を受けることになった。
母親の相手には同い年の息子が居ると聞かせられていた。なんでも快活でリア充なのだそうだ。それだけで自分とは違う世界の相手だと認識していたが、こちらも大人、必要最低限の付き合いをこなせば良いだろうと斜に構えていたそこへ――。
思春期の思い人、リアルジュリアスが居たのである。
表情筋が普段から仕事しない方でよかった。驚愕の表情を見せずに済んだのだから。
すらりとした細身の筋肉質体型、二重のくっきりとした釣り目がちの瞳、凜々しい鼻筋に整った口元。
髪や瞳の色は違ったが、まさに二次元が三次元に生まれ変わった姿としか言えないほどよく似ていた。
初顔合わせで倫が思ったこと。
――ジュリアスのコスさせて犯したい! ……で、あった……。
倫は自分がサディスティックで有ることを知っている。だが自称ドSと公言する事は無いし、誰彼構わずでもない。
一番の希望は二次元に居るジュリアスなのだ。
だがどんなに思っても倫の希望など叶うはずがない。せめて二次元に関わろうとその筋の専門学校に入学し、そこで知り合った先輩に『お前には才能がある!』と進められたバイト先は、俗に言うSM倶楽部だった。
そこでSキャストとしてバイトしつつ、専門学校で知った新人声優オーディションのチャンス。
デビュー云々よりも大事だったのは、その原作のBL漫画がジュリアスをオマージュした作品である事が一番大事だった。
いわば、公然とジュリアス似のキャラを責められる訳で。
二次元の悲しさからか、煮詰まってどろどろになっていた思いが一気に爆発する勢いでオーディションに望めば、歪んだ熱意が通じてサブキャラとはいえ見事に合格したものだ。
演技なのか素なのか判断に苦しむ情熱を傾けた仕事は大成功を収め、倫の役をメインに据えた続編に抜擢されたほどだ。
あの仕事は楽しかった。本当に楽しかった。だが倫理規定とかで表現が温かった事は残念だ。
そこへ来ての生ジュリアス、三次元ジュリアスの登場である。
彼と一つ屋根の下に住めるのはこの上ない僥倖だった。
その僥倖が家庭内ストーカー行為だったのは――義兄の雄哉にも内緒にしなくてはならない。
「あー……義兄さん、何してるかなー。今日の荷物、アダルトショップだったし、アナニーでもしてるのかな」
ここへ来る前に義兄に手渡した荷物。それがアダルトショップからだと倫は知っている。なぜなら自分もそのアダルトショップを利用しているからだ。ただオタクの嗜みとして荷物は実家ではなく、コンビニ受け取りにしていたのだが。
「……義兄さん、アナニー好きだしね。ちょっと覗いて見るかな。アナニー場面だとラッキーなんだけど」
スマホを更に操作すればリアルタイムで雄哉の部屋が映る。留守中にペットなどを見張るための小型カメラをこっそりと雄哉の部屋に仕掛けてあったのだ。
家庭内ストーカー、怖い。
お相手がアイドルなどに曲を提供している著名な作曲家だと知った時は驚いたが、ただそれだけ。
アニメやゲーム曲の作曲を手懸けていたら、オタクである倫のテンションは上がったかも知れないが。
今さら母親を他の男に取られるなどと考える年齢でもない。無事に婚姻を済ませれば、父親となる男としばらく同居する事になるらしいが、倫の生活基盤が整えば一人暮らしをしてもいいと冷静に考えていた。
幸い掛け持ちしているバイトの片方は、人には言えないがなかなかに高収入だ。そちらにシフトを多く組めば、問題なく一人暮らしは出来るだろう。
もともと人見知りで軽度のコミュ障でもある倫だ。親しい友人や同好の士が集う場所なら雄弁だが、それ以外は無口で通しているし、小学生ならともかく、専門学生になってまでアレコレ言われたりはしないはず。
そんな気分で両家族の顔合わせである食事会で――倫は衝撃を受けることになった。
母親の相手には同い年の息子が居ると聞かせられていた。なんでも快活でリア充なのだそうだ。それだけで自分とは違う世界の相手だと認識していたが、こちらも大人、必要最低限の付き合いをこなせば良いだろうと斜に構えていたそこへ――。
思春期の思い人、リアルジュリアスが居たのである。
表情筋が普段から仕事しない方でよかった。驚愕の表情を見せずに済んだのだから。
すらりとした細身の筋肉質体型、二重のくっきりとした釣り目がちの瞳、凜々しい鼻筋に整った口元。
髪や瞳の色は違ったが、まさに二次元が三次元に生まれ変わった姿としか言えないほどよく似ていた。
初顔合わせで倫が思ったこと。
――ジュリアスのコスさせて犯したい! ……で、あった……。
倫は自分がサディスティックで有ることを知っている。だが自称ドSと公言する事は無いし、誰彼構わずでもない。
一番の希望は二次元に居るジュリアスなのだ。
だがどんなに思っても倫の希望など叶うはずがない。せめて二次元に関わろうとその筋の専門学校に入学し、そこで知り合った先輩に『お前には才能がある!』と進められたバイト先は、俗に言うSM倶楽部だった。
そこでSキャストとしてバイトしつつ、専門学校で知った新人声優オーディションのチャンス。
デビュー云々よりも大事だったのは、その原作のBL漫画がジュリアスをオマージュした作品である事が一番大事だった。
いわば、公然とジュリアス似のキャラを責められる訳で。
二次元の悲しさからか、煮詰まってどろどろになっていた思いが一気に爆発する勢いでオーディションに望めば、歪んだ熱意が通じてサブキャラとはいえ見事に合格したものだ。
演技なのか素なのか判断に苦しむ情熱を傾けた仕事は大成功を収め、倫の役をメインに据えた続編に抜擢されたほどだ。
あの仕事は楽しかった。本当に楽しかった。だが倫理規定とかで表現が温かった事は残念だ。
そこへ来ての生ジュリアス、三次元ジュリアスの登場である。
彼と一つ屋根の下に住めるのはこの上ない僥倖だった。
その僥倖が家庭内ストーカー行為だったのは――義兄の雄哉にも内緒にしなくてはならない。
「あー……義兄さん、何してるかなー。今日の荷物、アダルトショップだったし、アナニーでもしてるのかな」
ここへ来る前に義兄に手渡した荷物。それがアダルトショップからだと倫は知っている。なぜなら自分もそのアダルトショップを利用しているからだ。ただオタクの嗜みとして荷物は実家ではなく、コンビニ受け取りにしていたのだが。
「……義兄さん、アナニー好きだしね。ちょっと覗いて見るかな。アナニー場面だとラッキーなんだけど」
スマホを更に操作すればリアルタイムで雄哉の部屋が映る。留守中にペットなどを見張るための小型カメラをこっそりと雄哉の部屋に仕掛けてあったのだ。
家庭内ストーカー、怖い。
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