96 / 108
第5章 美優の歩く世界
6 謎の骸骨(挿絵付き)
しおりを挟む
「お、もう行くのかい」
マリンが明るい声を出す。
「うん、願い石ありがとう」
「「ありがとうございました」」
太陽とローリが声を合わせた。
マリンの店を出る4人。
ガウカは何も言わず、美優の前を歩く。
「ガーさん、世話になったんだから挨拶くらいしなさいよ」
「わしは女王じゃぞ。あのような汚い場所にいさせられて胃がムカついておるのじゃ!」
「あんたねえ!」
美優は怒ろうとしたが、それより早くローリがしゃがんでガウカの頬を顎から鷲掴みにする。
「ひょーくん?」
ガウカはローリに顔を鷲掴みにされていてうまく発音できない。ガウカはローリの顔を見て顔面が蒼白だ。
美優はローリの顔が見れなかったが、相当怒ってそうな顔だと思った。
「ちょっと今日、僕さ、耳がおかしいのかもしれないな~♪ もう1度、言ってみてくれたまえ」
「にゃんでもにゃい。いひゃい、ひょーくん」
「何でもないわけないだろう?」
「ローリ、大丈夫だから! 怒らないでください」
「俺からも頼む」
「はあ、ついてるね、君」
ローリはガウカを掴んでいる手を外した。
「す、すまんのじゃ、わしが間違っていたのじゃ」
「もし同じことを言ったら、2度と僕の前に現れないでくれたまえ」
「はは、は、はい」
「はっはっは、それでは向かおうか!」
ローリは楽しそうに言った。
美優はすぐ先頭を歩くローリの顔が見れなかった。
(ローリは笑っているようで、いつもよりピリピリしてる! ネニュファールが行方不明だからだろうか?)
美優はローリの包んでいる殺気に気取る。
「そういえば、私もうすぐ、願い石ができるんだった、何願おうかな!?」
「ためになること願えよ」
美優達はあえて先程入った検問から出ていった。
「皆さん、元気になられたのですね」
「おかげさまで!」
美優は意気揚々と笑った。
「美優、行こうよ。ほら、置いてかれるぞ」
少し歩いて、拓けた場所についた。
ガウカが龍になろうと1息吸った瞬間、何かがよぎった。
(シマウマの月影だ)
速い。そして強靭な顎を持っているようで口から、なにかの生物の骨を吐き出した。肉食の月影の血が濃いらしい。
美優達をアホ面で見ている。
「「「「ウォレスト」」」」
全員は武楽器を出した。
シマウマの月影がタックルしてきたのは太陽にだった。
「がっ」
太陽はそこにあった岩石に頭を打ち付けた。むっくり起き上がる。命には別状はないようだが出血が酷い。
「太陽に何するの!」
パーーー!
炎が当たらない。
シマウマの月影はいとも簡単に炎の弾を避ける。
「パース!」
ガウカは自分の方に向かっていくシマウマの月影を箱を下向きに出して閉じ込めた。
ガンガンガンガン!
ブヒヒーーーーン!
下に叩きつけられる力と衝突時に上にいく際に働く重力の力でシマウマの月影は生き絶え絶えになっていた。地面に血が流れ出てきた。
「何か魔法曲を弾こうではないか」
「ちょっと太陽、しっかりしてよ。主よ~で治らないの?」
「主よ人の望みの喜びよ、で治るのは半月だけじゃ」
「バックナンバーの水平線弾ける? パース」
「もちろん弾けるよ、パース」
「わし、ところどころ怪しいのじゃが弾けるのじゃ」
「俺も弾くから。パース」
そう告げた太陽はショルダーバッグからスポーツタオルを出すと額と頭に巻いた。
ローリは困ったように笑うと、目を光らせて、バイオリンを構える。
♪
太陽の伴奏で曲が始まった。ローリはセカンドを弾いている。全員完璧なハモリだった。綺麗な音に耳が喜んでいるかのようだ。
そうしているうちに、金貨、銀貨、銅貨、装飾品、宝石、貴金属などが全員の箱に入っていく。
美優の箱が光って願い石ができたらしく、箱に巻かれている紐が白くなった。
曲も終盤に差し掛かり皆汗を流していた。
最後の音は太陽の前に倒れ込む不協和音で終わった。
「はあはあ、すまん、眼の前が見えねえ」
太陽の頭に巻いてあるタオルは血でぐっしょり濡れている。
「大丈夫だよ、……願い石、太陽の体を治して」
美優は瞬く間に願い石を太陽に使った。金色の光が太陽を包んだ。
「もう痛くない?」
「ああ、清々しいほどだ!」
「ああ、良かった」
「ほう、それにしても獰猛な月影が増えているようだね」
ローリの声に皆が頷く。
「皆の衆、わしが運ぶのじゃ」
ガウカは一瞬光った。どんどん大きな龍になっていく。白色と緑色の龍だ。
3人はガウカの背中に乗った。
はるか上空へ舞い上がる。そして木のギリギリ上を滑空する。
「もう少し左側」
美優は拙いメモとコンパスを頼りにして、ガウカをコントロールする。
「あった、あそこだよ。ゆっくりだよ」
美優に指示されて、ガウカはゆっくりと飛行する。
幸いドラゴンの月影は眠っているようで、地面と一体化している。
卵を探すと、ドラゴンの月影のお腹あたりが凹んでいてそこに3つの卵の殻と小さなドラゴン、白色とピンク色のミミズクが丸まっていた。
ネニュファールは子ドラゴンの月影の密集したところにいて、孵化したドラゴンの月影と一緒に混ざっていた。
子ドラゴンの月影は60センチ程の白色と茶色のまだら模様だ。小さな翼が生えている。
「何で、ネニュファールが子ドラゴンの月影に混じっているんだ」
「困ったね」
「そうだ、今度は魔法曲で眠らせよう、トロイメライで眠ってくれるかな? 確か曲名はドイツ語で夢という意味だ」
太陽は小声で話す。
トライメライはシューマンの曲で子供の情景7,OP.15だ。
「ネニュファールも眠るのもあるけれど、ドラゴンが起きるかもしれない。……苦肉の策だね」
「ネニュファールが気づけばいいんだな。それなら……ウォレスト」
太陽はガウカに乗ったまま、キーボードピアノを出した。
シャラララ。
ピアノはグリッサンド奏法で銀色の針を出した。白鍵しか弾かなかったので10センチ程度だ。
「太陽君! ネニュファールに攻撃するつもりかい?」
「痛くはないようにするから」
「そういう問題ではない。良くない」
「もう目も見えるようになったはず」
美優はそう言っている間に不測の事態に見舞われた。
キエエーーーー!
太陽の針が落っこちて、子ドラゴンの月影に刺さったのだ。
幸運な事にドラゴンの月影が起きる、と思ったが、起きない。耳が聞こえていないようだ。
ネニュファールがこちらを見た。すると、ばさばさと羽音を立てて翔んでくる。
それとほぼ同時にドラゴンの月影の背中がモゴモゴ動き出した。
「体温でわかるっていうの?」
美優達はドラゴンの月影の視界に入った。
「ドラゴンの月影、覚悟!」
太陽は再びグリッサンド奏法で迎え撃とうとした。
ホ、ホ、ホ!
その時、ミミズクのネニュファールが鳴いた。
「待ってくれたまえ、太陽君。やめて、とのことだよ。攻撃しないでもらいたい」
「じゃあさっき話してた作戦でドラゴンの月影を眠らせようか?」
太陽は首を縦に振るとローリを横目でみた。
ドラゴンの月影も様子をうかがっているようで、瞬きしている。
(ネニュファールを自分の子と勘違いしているかもしれない)
美優はどう告げればいいか迷った。
「ネニュファールがこの場から出ると多分怒って出てくる」
「うん。とりあえず眠らせよう。あの中央のラグは1人用らしいから、僕とネニュファールは警備員として肩に乗っているからね。いいかい? ネニュファール、太陽君の肩に止まるんだよ」
ホホホ!
この場だと中央の場所でないと確かに意味がなかった。
「いいのか? お前らは眠っちゃわないのか?」
「奏者の近辺にいれば魔法曲の影響は受けない。ガーさん、4分位、僕と太陽君をあの場に残して、上空で留まっていてもらいたい」
ローリの声に合わせるように下降していくガウカ。
ガアア!
ドラゴンの月影は威嚇する。
ガウカは途中で止まる。あと4メートル位だ。
「どうやらここまでってわけね、私達は高みの見物でもしてるわ」
「いいよいいよ、ガウカありがとう、パース」
太陽は箱を出して高さを調節した。
ローリは戦がすとフェレットになり、太陽の肩に乗った。
ネニュファールが太陽の肩に止まった。
太陽はラグの方までかけていく。美優とガウカが離れるのを見届けた後、ピアノを出すと優しい指使いで弾き始めた。
美優には音自体は聴こえなかったが、遠くから見て美しいフォームで弾いているのがわかった。熱意も伝わってくる。そして、それで美優の顔も徐々に熱くなるのだった。
4分経過したようで太陽は手を上に振っている。
ガウカはすいすい降りていき、地上につくと同時に、光を放って、人に変わった。
美優はひょいと着地する。
ドラゴンの月影と子ドラゴンの月影はぐっすりと眠っている。
「肩たたき券探そうか?」
美優は先手を取るように言った。
「声のボリュームを落としてくれたまえ。パース」
ローリはぼそぼそと喋った。全面の揃ったルービックキューブのような箱を出し、中から太陽に借りたネックレスを手に取った。スウスウと匂いを嗅ぐと、重心を下げて歩き出す。
5人は鏡の迷路まで戻っていった。
「この辺にあるはずだよ」
「あ、あった!」
4回目に割った鏡の破片に混ざって足元に落ちていた。
美優はなにかに背中を叩かれたので振り返る。
「きゃああああ」
甲高い声をあげた。背中を叩いたのは黒い髪の骸骨だった。前髪が長くて小さく覗く2つの目の穴。しゃれこうべだ。手は白くて細い骨。
「ひいっ! 骸骨じゃ!」
「皆、こっちだ、パース!」
太陽達は来た道と逆の位置の割った鏡の場所で、穴を箱で塞いだ。
「全員いるよな?」
「全員い、いるよ、ち、違う道から行こう? わ、私、おばけ苦手なの」
美優はしどろもどろに受け答える
「おばけじゃない、人間だよ。足があったからね」
「なんの目的で、俺等を脅かすような真似を?」
「ここに落ちていたのではなく、故意に置かれていたのならば答えは簡単だ」
「はっ! そうか! 急いでドラゴンの月影のフロアに戻ろう!」
太陽はなにかひらめいたようだ。
「人でも怖いよ」
「美優は俺が守るよ」
「1ついいかい?」
ローリは改まる。
マリンが明るい声を出す。
「うん、願い石ありがとう」
「「ありがとうございました」」
太陽とローリが声を合わせた。
マリンの店を出る4人。
ガウカは何も言わず、美優の前を歩く。
「ガーさん、世話になったんだから挨拶くらいしなさいよ」
「わしは女王じゃぞ。あのような汚い場所にいさせられて胃がムカついておるのじゃ!」
「あんたねえ!」
美優は怒ろうとしたが、それより早くローリがしゃがんでガウカの頬を顎から鷲掴みにする。
「ひょーくん?」
ガウカはローリに顔を鷲掴みにされていてうまく発音できない。ガウカはローリの顔を見て顔面が蒼白だ。
美優はローリの顔が見れなかったが、相当怒ってそうな顔だと思った。
「ちょっと今日、僕さ、耳がおかしいのかもしれないな~♪ もう1度、言ってみてくれたまえ」
「にゃんでもにゃい。いひゃい、ひょーくん」
「何でもないわけないだろう?」
「ローリ、大丈夫だから! 怒らないでください」
「俺からも頼む」
「はあ、ついてるね、君」
ローリはガウカを掴んでいる手を外した。
「す、すまんのじゃ、わしが間違っていたのじゃ」
「もし同じことを言ったら、2度と僕の前に現れないでくれたまえ」
「はは、は、はい」
「はっはっは、それでは向かおうか!」
ローリは楽しそうに言った。
美優はすぐ先頭を歩くローリの顔が見れなかった。
(ローリは笑っているようで、いつもよりピリピリしてる! ネニュファールが行方不明だからだろうか?)
美優はローリの包んでいる殺気に気取る。
「そういえば、私もうすぐ、願い石ができるんだった、何願おうかな!?」
「ためになること願えよ」
美優達はあえて先程入った検問から出ていった。
「皆さん、元気になられたのですね」
「おかげさまで!」
美優は意気揚々と笑った。
「美優、行こうよ。ほら、置いてかれるぞ」
少し歩いて、拓けた場所についた。
ガウカが龍になろうと1息吸った瞬間、何かがよぎった。
(シマウマの月影だ)
速い。そして強靭な顎を持っているようで口から、なにかの生物の骨を吐き出した。肉食の月影の血が濃いらしい。
美優達をアホ面で見ている。
「「「「ウォレスト」」」」
全員は武楽器を出した。
シマウマの月影がタックルしてきたのは太陽にだった。
「がっ」
太陽はそこにあった岩石に頭を打ち付けた。むっくり起き上がる。命には別状はないようだが出血が酷い。
「太陽に何するの!」
パーーー!
炎が当たらない。
シマウマの月影はいとも簡単に炎の弾を避ける。
「パース!」
ガウカは自分の方に向かっていくシマウマの月影を箱を下向きに出して閉じ込めた。
ガンガンガンガン!
ブヒヒーーーーン!
下に叩きつけられる力と衝突時に上にいく際に働く重力の力でシマウマの月影は生き絶え絶えになっていた。地面に血が流れ出てきた。
「何か魔法曲を弾こうではないか」
「ちょっと太陽、しっかりしてよ。主よ~で治らないの?」
「主よ人の望みの喜びよ、で治るのは半月だけじゃ」
「バックナンバーの水平線弾ける? パース」
「もちろん弾けるよ、パース」
「わし、ところどころ怪しいのじゃが弾けるのじゃ」
「俺も弾くから。パース」
そう告げた太陽はショルダーバッグからスポーツタオルを出すと額と頭に巻いた。
ローリは困ったように笑うと、目を光らせて、バイオリンを構える。
♪
太陽の伴奏で曲が始まった。ローリはセカンドを弾いている。全員完璧なハモリだった。綺麗な音に耳が喜んでいるかのようだ。
そうしているうちに、金貨、銀貨、銅貨、装飾品、宝石、貴金属などが全員の箱に入っていく。
美優の箱が光って願い石ができたらしく、箱に巻かれている紐が白くなった。
曲も終盤に差し掛かり皆汗を流していた。
最後の音は太陽の前に倒れ込む不協和音で終わった。
「はあはあ、すまん、眼の前が見えねえ」
太陽の頭に巻いてあるタオルは血でぐっしょり濡れている。
「大丈夫だよ、……願い石、太陽の体を治して」
美優は瞬く間に願い石を太陽に使った。金色の光が太陽を包んだ。
「もう痛くない?」
「ああ、清々しいほどだ!」
「ああ、良かった」
「ほう、それにしても獰猛な月影が増えているようだね」
ローリの声に皆が頷く。
「皆の衆、わしが運ぶのじゃ」
ガウカは一瞬光った。どんどん大きな龍になっていく。白色と緑色の龍だ。
3人はガウカの背中に乗った。
はるか上空へ舞い上がる。そして木のギリギリ上を滑空する。
「もう少し左側」
美優は拙いメモとコンパスを頼りにして、ガウカをコントロールする。
「あった、あそこだよ。ゆっくりだよ」
美優に指示されて、ガウカはゆっくりと飛行する。
幸いドラゴンの月影は眠っているようで、地面と一体化している。
卵を探すと、ドラゴンの月影のお腹あたりが凹んでいてそこに3つの卵の殻と小さなドラゴン、白色とピンク色のミミズクが丸まっていた。
ネニュファールは子ドラゴンの月影の密集したところにいて、孵化したドラゴンの月影と一緒に混ざっていた。
子ドラゴンの月影は60センチ程の白色と茶色のまだら模様だ。小さな翼が生えている。
「何で、ネニュファールが子ドラゴンの月影に混じっているんだ」
「困ったね」
「そうだ、今度は魔法曲で眠らせよう、トロイメライで眠ってくれるかな? 確か曲名はドイツ語で夢という意味だ」
太陽は小声で話す。
トライメライはシューマンの曲で子供の情景7,OP.15だ。
「ネニュファールも眠るのもあるけれど、ドラゴンが起きるかもしれない。……苦肉の策だね」
「ネニュファールが気づけばいいんだな。それなら……ウォレスト」
太陽はガウカに乗ったまま、キーボードピアノを出した。
シャラララ。
ピアノはグリッサンド奏法で銀色の針を出した。白鍵しか弾かなかったので10センチ程度だ。
「太陽君! ネニュファールに攻撃するつもりかい?」
「痛くはないようにするから」
「そういう問題ではない。良くない」
「もう目も見えるようになったはず」
美優はそう言っている間に不測の事態に見舞われた。
キエエーーーー!
太陽の針が落っこちて、子ドラゴンの月影に刺さったのだ。
幸運な事にドラゴンの月影が起きる、と思ったが、起きない。耳が聞こえていないようだ。
ネニュファールがこちらを見た。すると、ばさばさと羽音を立てて翔んでくる。
それとほぼ同時にドラゴンの月影の背中がモゴモゴ動き出した。
「体温でわかるっていうの?」
美優達はドラゴンの月影の視界に入った。
「ドラゴンの月影、覚悟!」
太陽は再びグリッサンド奏法で迎え撃とうとした。
ホ、ホ、ホ!
その時、ミミズクのネニュファールが鳴いた。
「待ってくれたまえ、太陽君。やめて、とのことだよ。攻撃しないでもらいたい」
「じゃあさっき話してた作戦でドラゴンの月影を眠らせようか?」
太陽は首を縦に振るとローリを横目でみた。
ドラゴンの月影も様子をうかがっているようで、瞬きしている。
(ネニュファールを自分の子と勘違いしているかもしれない)
美優はどう告げればいいか迷った。
「ネニュファールがこの場から出ると多分怒って出てくる」
「うん。とりあえず眠らせよう。あの中央のラグは1人用らしいから、僕とネニュファールは警備員として肩に乗っているからね。いいかい? ネニュファール、太陽君の肩に止まるんだよ」
ホホホ!
この場だと中央の場所でないと確かに意味がなかった。
「いいのか? お前らは眠っちゃわないのか?」
「奏者の近辺にいれば魔法曲の影響は受けない。ガーさん、4分位、僕と太陽君をあの場に残して、上空で留まっていてもらいたい」
ローリの声に合わせるように下降していくガウカ。
ガアア!
ドラゴンの月影は威嚇する。
ガウカは途中で止まる。あと4メートル位だ。
「どうやらここまでってわけね、私達は高みの見物でもしてるわ」
「いいよいいよ、ガウカありがとう、パース」
太陽は箱を出して高さを調節した。
ローリは戦がすとフェレットになり、太陽の肩に乗った。
ネニュファールが太陽の肩に止まった。
太陽はラグの方までかけていく。美優とガウカが離れるのを見届けた後、ピアノを出すと優しい指使いで弾き始めた。
美優には音自体は聴こえなかったが、遠くから見て美しいフォームで弾いているのがわかった。熱意も伝わってくる。そして、それで美優の顔も徐々に熱くなるのだった。
4分経過したようで太陽は手を上に振っている。
ガウカはすいすい降りていき、地上につくと同時に、光を放って、人に変わった。
美優はひょいと着地する。
ドラゴンの月影と子ドラゴンの月影はぐっすりと眠っている。
「肩たたき券探そうか?」
美優は先手を取るように言った。
「声のボリュームを落としてくれたまえ。パース」
ローリはぼそぼそと喋った。全面の揃ったルービックキューブのような箱を出し、中から太陽に借りたネックレスを手に取った。スウスウと匂いを嗅ぐと、重心を下げて歩き出す。
5人は鏡の迷路まで戻っていった。
「この辺にあるはずだよ」
「あ、あった!」
4回目に割った鏡の破片に混ざって足元に落ちていた。
美優はなにかに背中を叩かれたので振り返る。
「きゃああああ」
甲高い声をあげた。背中を叩いたのは黒い髪の骸骨だった。前髪が長くて小さく覗く2つの目の穴。しゃれこうべだ。手は白くて細い骨。
「ひいっ! 骸骨じゃ!」
「皆、こっちだ、パース!」
太陽達は来た道と逆の位置の割った鏡の場所で、穴を箱で塞いだ。
「全員いるよな?」
「全員い、いるよ、ち、違う道から行こう? わ、私、おばけ苦手なの」
美優はしどろもどろに受け答える
「おばけじゃない、人間だよ。足があったからね」
「なんの目的で、俺等を脅かすような真似を?」
「ここに落ちていたのではなく、故意に置かれていたのならば答えは簡単だ」
「はっ! そうか! 急いでドラゴンの月影のフロアに戻ろう!」
太陽はなにかひらめいたようだ。
「人でも怖いよ」
「美優は俺が守るよ」
「1ついいかい?」
ローリは改まる。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
colorful〜rainbow stories〜
宮来らいと
恋愛
とある事情で6つの高校が合併した「六郭星学園」に入学した真瀬姉弟。
そんな姉弟たちと出会う1人のクラスメイト。戸惑う姉弟に担任の先生から与えられたのは、「課題」。その「課題」はペアになって行うため、カラーボールの入ったくじで決める。くじを引いてペアになったのは出会ったクラスメイトだった。
ペアになったクラスメイトと行う、「課題」の内容は作曲。その「課題」を行っていくうちに、声優さんに歌って欲しいという気持ちが湧いてくる。
そんなクラスメイトとの1年間に襲いかかる壁。その壁を姉弟と乗り越えていく、色と音楽を紡ぐ、ゲーム風に読む、ダーク恋愛学園短編オムニバス物語です。


生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる