86 / 108
第4章 ゆいなの歩く世界
26 祭りの当日
しおりを挟む
「あたし、リコヨーテのお城で働こうと思ってるの」
「なんで?」
「自分にあっていると思うから。先方はオッケー出してるの。そこで働きたいの」
「まあ、ゆいなが言うならいいんじゃないか?」
「……ごちそうさま」
ゆいなはそう言い残して、なにか言われる前に2階の自室に避難した。
(明日に備えて早く寝よう)
ゆいなはシーツと毛布の間に潜り込んだ。
そうして夜は静かに明けていった。
◇
8時のアラームが鳴り響く。
ゆいなは無意識レベルでその時計のアラームを止めていた。
「もうこんな時間?」
覚醒したゆいなは飛び起きる。
時間は8時40分だ。
(これはやばい、やってしまった)
ゆいなは顔を洗うと軽く化粧した。服も着替える。散らかったメイク道具をそのままにして、1階に降りた。目玉焼きとウインナーの朝食がラップに包まれていたので急いで食べる。グロスを塗り直し、ヘアアイロンで髪を巻いた。ニット帽をかぶって巻き髪を調節した。
ピンポーン
9時20分ちょうどにインターホンがなった。
ゆいなはテレビモニターで表札の前にいる4人を目視してから、出ていく。
「おまたせ!」
「柳川さん可愛いですね」
開口したのは美優だった。ベージュのフレンチコートを制服の上に着ている。真っ白なマフラーを巻いている。
「ゆいなお姉ちゃん、きれい」
桜歌もゆいなを褒める。黒いダウンジャケットを身に着けている。
「あ、本当だ、今日気合入ってますね」
太陽は社交辞令のように言った。制服の上にダッフルコートを着ている。
「やーだー! かーーいーー!」
そして最期に言葉を発したのは翔斗だった。制服の上にモッズコートを着ている。
「美亜ちゃんは?」
「もうすぐ来ると思うんですけど」
「まったくもう! 一番ノリノリだったのに」
「まったくもうは私の口癖って言ってるでしょう」
「美亜ちゃん、制服で来るんだよな、木の下で待ってたら下着見えそうだな」
「誰の下着を見るって?」
美亜は制服の上に黒いロングコートを着ている。緑色のチェックのマフラーを巻いている。
「「ひい!」」
「なんで太陽まで悲鳴をあげるのよ。あんたまさか、翔斗とそういう事しようと」
「いや、条件反射で、つい」
「まあいいわ、ママに見つかる前に行くわよ」
6人は美亜の家の裏にある大きな木を目指して進んだ。翔斗は変なことができないように一番前を歩かされた。
「「「ウォレスト」」」
ゆいなと美亜と桜歌以外は武楽器を出現させて、手をつける。
「ジムノペディな」
「わかった」
「翔斗は?」
「あたりめぇよ」
「せーの」
♪
(トロンボーンとトランペット、そしてピアノの3種類でこんなに感動的な曲になるのか)
ゆいなは心が揺さぶられた。風が吹く。大樹に青い濁流ができると同時に曲は終りを迎えた。
「翔斗、あんたは太陽の前よ。女子が先に入るから」
「分かってるって。なあ、たいよっ!」
翔斗は太陽の肩に手をまわした。
「キモいんで触らないでくれ」
太陽は翔斗の手を掴んで距離をとる。
その間に桜歌、美亜、ゆいな、美優は先に濁流の中へ。
ぐるぐる、ぐるぐる。
真下に穴が開く。
ゆいなは着地すると、一目散にその場から離れる。
太陽は翔斗を取っ組み合いになった様子で、絡まり合うように落ちてきた。
「何、イチャイチャしてるの? 置いてくよ?」
「別に、イチャイチャはしてないぞ」
太陽は近くの翔斗の顔を掴んで押しのけた。
一同はジャングル地帯に着いた。
涼しい風が吹いていて、春のような陽気だ。
ゆいなは着込んできたので暑さを感じた。
「暑いから脱いでいい?」
「翔斗は限度を知らないからだめ」
「風神さん……お祭りに行ったら2人で抜け出さない?」
「いや、遠慮しとく」
「あんたの食べるかき氷、あんたの血のシロップ漬けで良かったわね? 翔斗」
「うひゃあ! そうだった、キックマンがいるんだった」
「誰がキックマンよ!」
美亜はローファーで翔斗の膝小僧のあたりを蹴った。
「痛い! まじでやばい!」
翔斗はしゃがんで、足を擦っている。
「骨は折れてないだろう? 翔斗、盛りすぎだよ」
「なんだよ、太陽、お前も美亜ちゃんにキックされてみろや」
見上げる翔斗の目つきは相変わらず鋭い。
「あら? お仕置きが足りなかったかしら? パース」
美亜が箱を出す。なにやらムチのような黒く長い物が出てくる。
「ひい、なんでもないです。すみませんでした」
翔斗は背中を丸めて小さくなった。
「翔斗、いい加減立ってくれる? 置いてくよ?」
「はい」
翔斗は立ち上がるとスタスタ歩く。
無言のまま歩いていくと、すぐにクライスタルへたどり着いた。
「私達はクライスタルの兵士とリコヨーテの兵士よ」
「フェルニカ兵を止めているんだな?」
太陽は検問の人と目があった。
「おい、お前今フェルニカ兵と言ったな? お前、スパイなのか? 立入禁止だ! しっし! 近づいたら殺す」
検問の人が太陽に目をつけた。
「違います、誤解です。パース」
「なんだ、ナイフでも出す気か?」
「これ見てください」
太陽は兵士手帳を出した。
「兵士手帳だな、どら、見せてみろ」
「プッ、こいつ子供用ピアノの武楽器だぞ?」
「はははは」
検問の2人は腹を抱えて笑い出す。
「それはその時のことで、今はキーボードピアノです」
「ふーん、まあ、いいんじゃないか? 念のため検査しておこう。フィファ!」
検問の小屋の中からオッドアイの犬が出てきた。シベリアンハスキーのようだ。
「全員、箱を出せ」
「「「パース」」」
ゆいな一行は箱を出した。
桜歌も白と緑の箱を出した。
犬が次から次へと箱の中の匂いを嗅ぎまわる。
ワン!
「大丈夫だ、よし入れ」
「麻薬探知犬なんですか?」
「危険物も探知できるぞ」
検問の1人得意げに笑った。
「毛量が多いとブラッシング大変じゃないですか?」
「フィファは女の子だから女性にしかさせてもらえないぞ、半月って大変だよな」
「用が済んだのなら、行きましょうか」
美優は業を煮やしていった。
「せっかちだな」
「まったくもう、無駄話しないでよ」
美優は腕時計を見る。
9時40分だ。約束の時間まで20分だ。
「太陽、皆、こんちわ」
クライスタルの町の方から正幸が近づいてきた。
「マッサー!」
「自己紹介がまだだったな?」
「ちょっと待って、足音がする」
「来たわね」
美亜の言う通り、リコヨーテ組のネニュファール、ローリ、ガウカ、レンシが姿を見せた。
「今日のメンバー増えてませんこと?」
「あ、ごめん、みんな行きたいって言って」
「レンシさん」
「後は、ビオとチカさん」
「クライスタルの中で待ちますわよ。ビオさんとチカさんはクライスタルの西にある病院から来るはずだから、途中でおちあうはずですわ」
「ほえー」
太陽は不思議そうな声を上げた。
「そんじゃあ、出発!」
翔斗は仕切って先頭を歩く。
「わいは石橋正幸っちゅうねん」
「僕はローリ」
「私はネニュファールですわ」
「わしはガーさんと呼ぶがいいのじゃ」
「俺は翔斗だ」
「桜歌は、太陽の妹の桜歌だよ」
自己紹介が済んで各々お喋りに夢中で歩く。
「ほんでな、ガーさんと桜歌ちゃん、そっくりやないか?」
「だから?」
美亜がきつく返した。
「だからとかやないけど、服入れ替えたらわからなくなるで」
「服といえば、ビオさんにメイド服着せるんじゃなかった?」
ゆいなは話題をそらす。
「そうですわね」
ネニュファールは、メイド服にケープを着ている。
「嫌がるようだったらやめるんだよ」
ローリはインバネスコートと鹿撃ち帽のルックだ。
「あ」
ゆいなは驚く声を上げる。
「え?」
「ビオさんとチカさん」
ゆいなは正面を向いて指差している、その距離300メートル近くあった。
しばらくすると、ああと皆が言った。
おそらくチカが車椅子にのってビオに押されてきている。
「はじめまして、チカ・クワイエットです」
チカはベージュのハンチング帽を被り、テーラードジャケットを着込んでいる。縛った白髪交じりの髪の毛や、顔の深いシワなどが年季を感じさせた。
ビオはチェスターコートを着ていた。
「ビオ! あんた、久しぶりじゃない!」
美亜がテンションを上げている。
「どうもです」
ビオは顔色一つも買えない。
「チカ、久しぶりだね」
「レンシ? 随分肥えてるわね?」
「それではとんぼ返りしようか」
ローリがつぶやき、皆方向転換する。
「お兄ちゃん、おんぶ」
「はいはい」
太陽は桜歌を背負う。
「ロー君、おんぶ」
「自分で歩きたまえ」
ローリは厳しく突っぱねた。
「メイド! おんぶせい!」
「あ、そうですわ、ビオさん、コスプレしませんこと? 双子コーデですわ」
「嫌です」
「まあまあそうおっしゃらず、クライスタルのお手洗いで着替えましょう」
ネニュファールの言葉にビオは諦めた様子で、頷いた。
「おい、メイド!」
「私が背負います」
ゆいなは買って出るとしゃがみこんだ。
「まったくもう、しょうがないんじゃから」
「まったくもうは私の口癖だって」
美優も会話に加わった。
クライスタルの家々が見えてくると服屋にネニュファールとビオが入っていった。
そして、出てくると、ビオはメイドの服装にケープを着た、ネニュファールとおそろいになった。
「ローリ様、どうですの?」
「うん、可愛いよ」
そうして、クライスタルの中央の世界樹の切り株に到着した。
バチバチと言いながら全員入る。
「「「ウォレスト」」」
来る時と同じ、太陽、美優、翔斗のジムノペディが流れた。
♪
「なんで?」
「自分にあっていると思うから。先方はオッケー出してるの。そこで働きたいの」
「まあ、ゆいなが言うならいいんじゃないか?」
「……ごちそうさま」
ゆいなはそう言い残して、なにか言われる前に2階の自室に避難した。
(明日に備えて早く寝よう)
ゆいなはシーツと毛布の間に潜り込んだ。
そうして夜は静かに明けていった。
◇
8時のアラームが鳴り響く。
ゆいなは無意識レベルでその時計のアラームを止めていた。
「もうこんな時間?」
覚醒したゆいなは飛び起きる。
時間は8時40分だ。
(これはやばい、やってしまった)
ゆいなは顔を洗うと軽く化粧した。服も着替える。散らかったメイク道具をそのままにして、1階に降りた。目玉焼きとウインナーの朝食がラップに包まれていたので急いで食べる。グロスを塗り直し、ヘアアイロンで髪を巻いた。ニット帽をかぶって巻き髪を調節した。
ピンポーン
9時20分ちょうどにインターホンがなった。
ゆいなはテレビモニターで表札の前にいる4人を目視してから、出ていく。
「おまたせ!」
「柳川さん可愛いですね」
開口したのは美優だった。ベージュのフレンチコートを制服の上に着ている。真っ白なマフラーを巻いている。
「ゆいなお姉ちゃん、きれい」
桜歌もゆいなを褒める。黒いダウンジャケットを身に着けている。
「あ、本当だ、今日気合入ってますね」
太陽は社交辞令のように言った。制服の上にダッフルコートを着ている。
「やーだー! かーーいーー!」
そして最期に言葉を発したのは翔斗だった。制服の上にモッズコートを着ている。
「美亜ちゃんは?」
「もうすぐ来ると思うんですけど」
「まったくもう! 一番ノリノリだったのに」
「まったくもうは私の口癖って言ってるでしょう」
「美亜ちゃん、制服で来るんだよな、木の下で待ってたら下着見えそうだな」
「誰の下着を見るって?」
美亜は制服の上に黒いロングコートを着ている。緑色のチェックのマフラーを巻いている。
「「ひい!」」
「なんで太陽まで悲鳴をあげるのよ。あんたまさか、翔斗とそういう事しようと」
「いや、条件反射で、つい」
「まあいいわ、ママに見つかる前に行くわよ」
6人は美亜の家の裏にある大きな木を目指して進んだ。翔斗は変なことができないように一番前を歩かされた。
「「「ウォレスト」」」
ゆいなと美亜と桜歌以外は武楽器を出現させて、手をつける。
「ジムノペディな」
「わかった」
「翔斗は?」
「あたりめぇよ」
「せーの」
♪
(トロンボーンとトランペット、そしてピアノの3種類でこんなに感動的な曲になるのか)
ゆいなは心が揺さぶられた。風が吹く。大樹に青い濁流ができると同時に曲は終りを迎えた。
「翔斗、あんたは太陽の前よ。女子が先に入るから」
「分かってるって。なあ、たいよっ!」
翔斗は太陽の肩に手をまわした。
「キモいんで触らないでくれ」
太陽は翔斗の手を掴んで距離をとる。
その間に桜歌、美亜、ゆいな、美優は先に濁流の中へ。
ぐるぐる、ぐるぐる。
真下に穴が開く。
ゆいなは着地すると、一目散にその場から離れる。
太陽は翔斗を取っ組み合いになった様子で、絡まり合うように落ちてきた。
「何、イチャイチャしてるの? 置いてくよ?」
「別に、イチャイチャはしてないぞ」
太陽は近くの翔斗の顔を掴んで押しのけた。
一同はジャングル地帯に着いた。
涼しい風が吹いていて、春のような陽気だ。
ゆいなは着込んできたので暑さを感じた。
「暑いから脱いでいい?」
「翔斗は限度を知らないからだめ」
「風神さん……お祭りに行ったら2人で抜け出さない?」
「いや、遠慮しとく」
「あんたの食べるかき氷、あんたの血のシロップ漬けで良かったわね? 翔斗」
「うひゃあ! そうだった、キックマンがいるんだった」
「誰がキックマンよ!」
美亜はローファーで翔斗の膝小僧のあたりを蹴った。
「痛い! まじでやばい!」
翔斗はしゃがんで、足を擦っている。
「骨は折れてないだろう? 翔斗、盛りすぎだよ」
「なんだよ、太陽、お前も美亜ちゃんにキックされてみろや」
見上げる翔斗の目つきは相変わらず鋭い。
「あら? お仕置きが足りなかったかしら? パース」
美亜が箱を出す。なにやらムチのような黒く長い物が出てくる。
「ひい、なんでもないです。すみませんでした」
翔斗は背中を丸めて小さくなった。
「翔斗、いい加減立ってくれる? 置いてくよ?」
「はい」
翔斗は立ち上がるとスタスタ歩く。
無言のまま歩いていくと、すぐにクライスタルへたどり着いた。
「私達はクライスタルの兵士とリコヨーテの兵士よ」
「フェルニカ兵を止めているんだな?」
太陽は検問の人と目があった。
「おい、お前今フェルニカ兵と言ったな? お前、スパイなのか? 立入禁止だ! しっし! 近づいたら殺す」
検問の人が太陽に目をつけた。
「違います、誤解です。パース」
「なんだ、ナイフでも出す気か?」
「これ見てください」
太陽は兵士手帳を出した。
「兵士手帳だな、どら、見せてみろ」
「プッ、こいつ子供用ピアノの武楽器だぞ?」
「はははは」
検問の2人は腹を抱えて笑い出す。
「それはその時のことで、今はキーボードピアノです」
「ふーん、まあ、いいんじゃないか? 念のため検査しておこう。フィファ!」
検問の小屋の中からオッドアイの犬が出てきた。シベリアンハスキーのようだ。
「全員、箱を出せ」
「「「パース」」」
ゆいな一行は箱を出した。
桜歌も白と緑の箱を出した。
犬が次から次へと箱の中の匂いを嗅ぎまわる。
ワン!
「大丈夫だ、よし入れ」
「麻薬探知犬なんですか?」
「危険物も探知できるぞ」
検問の1人得意げに笑った。
「毛量が多いとブラッシング大変じゃないですか?」
「フィファは女の子だから女性にしかさせてもらえないぞ、半月って大変だよな」
「用が済んだのなら、行きましょうか」
美優は業を煮やしていった。
「せっかちだな」
「まったくもう、無駄話しないでよ」
美優は腕時計を見る。
9時40分だ。約束の時間まで20分だ。
「太陽、皆、こんちわ」
クライスタルの町の方から正幸が近づいてきた。
「マッサー!」
「自己紹介がまだだったな?」
「ちょっと待って、足音がする」
「来たわね」
美亜の言う通り、リコヨーテ組のネニュファール、ローリ、ガウカ、レンシが姿を見せた。
「今日のメンバー増えてませんこと?」
「あ、ごめん、みんな行きたいって言って」
「レンシさん」
「後は、ビオとチカさん」
「クライスタルの中で待ちますわよ。ビオさんとチカさんはクライスタルの西にある病院から来るはずだから、途中でおちあうはずですわ」
「ほえー」
太陽は不思議そうな声を上げた。
「そんじゃあ、出発!」
翔斗は仕切って先頭を歩く。
「わいは石橋正幸っちゅうねん」
「僕はローリ」
「私はネニュファールですわ」
「わしはガーさんと呼ぶがいいのじゃ」
「俺は翔斗だ」
「桜歌は、太陽の妹の桜歌だよ」
自己紹介が済んで各々お喋りに夢中で歩く。
「ほんでな、ガーさんと桜歌ちゃん、そっくりやないか?」
「だから?」
美亜がきつく返した。
「だからとかやないけど、服入れ替えたらわからなくなるで」
「服といえば、ビオさんにメイド服着せるんじゃなかった?」
ゆいなは話題をそらす。
「そうですわね」
ネニュファールは、メイド服にケープを着ている。
「嫌がるようだったらやめるんだよ」
ローリはインバネスコートと鹿撃ち帽のルックだ。
「あ」
ゆいなは驚く声を上げる。
「え?」
「ビオさんとチカさん」
ゆいなは正面を向いて指差している、その距離300メートル近くあった。
しばらくすると、ああと皆が言った。
おそらくチカが車椅子にのってビオに押されてきている。
「はじめまして、チカ・クワイエットです」
チカはベージュのハンチング帽を被り、テーラードジャケットを着込んでいる。縛った白髪交じりの髪の毛や、顔の深いシワなどが年季を感じさせた。
ビオはチェスターコートを着ていた。
「ビオ! あんた、久しぶりじゃない!」
美亜がテンションを上げている。
「どうもです」
ビオは顔色一つも買えない。
「チカ、久しぶりだね」
「レンシ? 随分肥えてるわね?」
「それではとんぼ返りしようか」
ローリがつぶやき、皆方向転換する。
「お兄ちゃん、おんぶ」
「はいはい」
太陽は桜歌を背負う。
「ロー君、おんぶ」
「自分で歩きたまえ」
ローリは厳しく突っぱねた。
「メイド! おんぶせい!」
「あ、そうですわ、ビオさん、コスプレしませんこと? 双子コーデですわ」
「嫌です」
「まあまあそうおっしゃらず、クライスタルのお手洗いで着替えましょう」
ネニュファールの言葉にビオは諦めた様子で、頷いた。
「おい、メイド!」
「私が背負います」
ゆいなは買って出るとしゃがみこんだ。
「まったくもう、しょうがないんじゃから」
「まったくもうは私の口癖だって」
美優も会話に加わった。
クライスタルの家々が見えてくると服屋にネニュファールとビオが入っていった。
そして、出てくると、ビオはメイドの服装にケープを着た、ネニュファールとおそろいになった。
「ローリ様、どうですの?」
「うん、可愛いよ」
そうして、クライスタルの中央の世界樹の切り株に到着した。
バチバチと言いながら全員入る。
「「「ウォレスト」」」
来る時と同じ、太陽、美優、翔斗のジムノペディが流れた。
♪
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

現代転生 _その日世界は変わった_
胚芽米
ファンタジー
異世界。そこは魔法が発展し、数々の王国、ファンタジーな魔物達が存在していた。
ギルドに務め、魔王軍の配下や魔物達と戦ったり、薬草や資源の回収をする仕事【冒険者】であるガイムは、この世界、
そしてこのただ魔物達と戦う仕事に飽き飽き
していた。
いつも通り冒険者の仕事で薬草を取っていたとき、突然自身の体に彗星が衝突してしまい
化学や文明が発展している地球へと転生する。
何もかもが違う世界で困惑する中、やがてこの世界に転生したのは自分だけじゃないこと。
魔王もこの世界に転生していることを知る。
そして地球に転生した彼らは何をするのだろうか…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる