31 / 108
第2章 ローリの歩く世界
11 メイホのぬいぐるみ
しおりを挟む
現在
「ああ、思い出した……メイホだ。あの時の!」
ローリは奥歯を噛み締めた。
いつの間にか、パイプタバコの火が消えていた。
(すぐ太陽に知らせよう)
ローリはケータイを取り出した。
『もしもし、ローリ?』
「太陽君、僕だけど、大変なことがわかったんだ」
『大変なこと?』
「今もまだ変わっていないとしたら、メイホの心臓はうさぎのぬいぐるみの中にあるということだ」
『ぬいぐるみ? あー、確かにいたな、ぬいぐるみ持っているゴブリン。いやーな、俺たちも俺達なりに調べたんだ。クライスタルに美優は特に流通しているから。あそこから半径五十メートル以内に廃病院があるんだよ。そこにいる可能性が高いってさ』
「なるほど、次の夜が来る前になんとかしなくては」
『そうだな。話変わるけど、ネニュファールの葬式に俺も美優も出たいんだ。だめかな?』
「構わないよ。僕がまた迎えにいけばいいかい?」
『クライスタルの検問の前で待っているよ。何時くらいがいい?』
「八時に来てくれたまえ。学校は平気かい?」
『夏休み入ったから大丈夫だよ』
「それなら明日だね。よろしく頼むよ」
『喪服で行くから』
「うん」
『こっちはあんまり心配しないで大丈夫だ。自分を一番大切にして、褒めたげてな』
「ありがとう」
『それじゃあまた八時に集合な?』
「了解した」
ローリは頷いて電話を切った。そして風呂に入ろうと廊下に戻った。
「ドーリー。風呂に入る、準備よろしく頼むよ」
ローリは叫ぶように言った。寝室以外はよく見張られているので直ぐに返事がきた。
「はっかしこまりました。私がいるとよくおわかりになられましたね」
「匂いでわかるよ」
「そうでしたね。では」
ドーリーは笑いかけると速歩きでその場を去った。
ローリはゆっくりと風呂場に向かった。
「ロー君」
廊下の突き当りにガウカが佇んでいた。
「なんだい?」
「今日は一緒に寝るんじゃな?」
「入浴後、またタバコ吸いに行くから、先に寝てくれて構わないよ」
「ロー君と一緒じゃなくちゃ嫌じゃ」
「すまないが、そんな気分ではないんだ。過去を清算するためにも」
「何を言ってるのじゃ?」
「腹心の部下が亡くなって気を病んでいるんだ。すまないが、一人の時間をもらいたいのだよ」
ローリは無表情で質問をいなす。
「わ、わかったのじゃ。湯冷めしない程度に風に当たるといいのじゃ」
ガウカはローリのどんな質問でも無に帰す態度に怖気づく。
「ありがとう」
ローリは口だけ動かした。そして少し歩き、風呂場に入る。全裸になってシャワーを浴びた。
照明は上にはないが所々、花に魔法がかかっていて、光を放ちつつ浮いている。
「死人の分身は作ることができないと父上が言っていたなあ」
ローリは温めの露天風呂へ入った。
(もうネニュファールはラ・フォリア以外では生き返らせない。しかし、たった三日生き返るためだけに僕が寿命を半分とられるのも、故人は望んでいないだろう)
「あの時、僕がさっさと月影に気づいていれば!」
「陛下? どうかなされました?」
ドーリーが様子を見に風呂場のドアを開ける。
ローリはお湯を叩きながら、風呂から上がった。
ドライヤーで髪を乾かす。
「またパイプタバコを廻縁へ持ってきてくれるかい?」
「わかりました」
若い執事は走って持ってきた。
移動したローリは先程と同じ要領でパイプタバコに火をつけた。
「ああ、思い出した……メイホだ。あの時の!」
ローリは奥歯を噛み締めた。
いつの間にか、パイプタバコの火が消えていた。
(すぐ太陽に知らせよう)
ローリはケータイを取り出した。
『もしもし、ローリ?』
「太陽君、僕だけど、大変なことがわかったんだ」
『大変なこと?』
「今もまだ変わっていないとしたら、メイホの心臓はうさぎのぬいぐるみの中にあるということだ」
『ぬいぐるみ? あー、確かにいたな、ぬいぐるみ持っているゴブリン。いやーな、俺たちも俺達なりに調べたんだ。クライスタルに美優は特に流通しているから。あそこから半径五十メートル以内に廃病院があるんだよ。そこにいる可能性が高いってさ』
「なるほど、次の夜が来る前になんとかしなくては」
『そうだな。話変わるけど、ネニュファールの葬式に俺も美優も出たいんだ。だめかな?』
「構わないよ。僕がまた迎えにいけばいいかい?」
『クライスタルの検問の前で待っているよ。何時くらいがいい?』
「八時に来てくれたまえ。学校は平気かい?」
『夏休み入ったから大丈夫だよ』
「それなら明日だね。よろしく頼むよ」
『喪服で行くから』
「うん」
『こっちはあんまり心配しないで大丈夫だ。自分を一番大切にして、褒めたげてな』
「ありがとう」
『それじゃあまた八時に集合な?』
「了解した」
ローリは頷いて電話を切った。そして風呂に入ろうと廊下に戻った。
「ドーリー。風呂に入る、準備よろしく頼むよ」
ローリは叫ぶように言った。寝室以外はよく見張られているので直ぐに返事がきた。
「はっかしこまりました。私がいるとよくおわかりになられましたね」
「匂いでわかるよ」
「そうでしたね。では」
ドーリーは笑いかけると速歩きでその場を去った。
ローリはゆっくりと風呂場に向かった。
「ロー君」
廊下の突き当りにガウカが佇んでいた。
「なんだい?」
「今日は一緒に寝るんじゃな?」
「入浴後、またタバコ吸いに行くから、先に寝てくれて構わないよ」
「ロー君と一緒じゃなくちゃ嫌じゃ」
「すまないが、そんな気分ではないんだ。過去を清算するためにも」
「何を言ってるのじゃ?」
「腹心の部下が亡くなって気を病んでいるんだ。すまないが、一人の時間をもらいたいのだよ」
ローリは無表情で質問をいなす。
「わ、わかったのじゃ。湯冷めしない程度に風に当たるといいのじゃ」
ガウカはローリのどんな質問でも無に帰す態度に怖気づく。
「ありがとう」
ローリは口だけ動かした。そして少し歩き、風呂場に入る。全裸になってシャワーを浴びた。
照明は上にはないが所々、花に魔法がかかっていて、光を放ちつつ浮いている。
「死人の分身は作ることができないと父上が言っていたなあ」
ローリは温めの露天風呂へ入った。
(もうネニュファールはラ・フォリア以外では生き返らせない。しかし、たった三日生き返るためだけに僕が寿命を半分とられるのも、故人は望んでいないだろう)
「あの時、僕がさっさと月影に気づいていれば!」
「陛下? どうかなされました?」
ドーリーが様子を見に風呂場のドアを開ける。
ローリはお湯を叩きながら、風呂から上がった。
ドライヤーで髪を乾かす。
「またパイプタバコを廻縁へ持ってきてくれるかい?」
「わかりました」
若い執事は走って持ってきた。
移動したローリは先程と同じ要領でパイプタバコに火をつけた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる