スイセイ桜歌

五月萌

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第1章 太陽の歩く世界

15 ラウレスクとの会話

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十九時すぎ、明るみが消えていく時間になった。

「やっぱり、日本から見た空模様だな」

雲はもくもくと太陽を隠し、月がうっすらみえる。
太陽は皆をムーン宝石まで引き連れていく。

「やっぱり、ローリにはユウキにかけたエーアイとアイに関する呪いを解く事だけを相談しよう。ローリも一国の王様だ。裏で囁かれている事を明るみに出してしまうんじゃないかと思って」

ルフランは悲しそうな顔をする。

「ああ、ラ・フォリアのことは内緒な」

太陽はルフランに頼られているような気がしたので力強く言った。
「着いたぞ」

エクが話しかけた。
ムーン宝石についた。入り口付近をライトが照らしていた。
便箋とボールペンを買う。

「ローリ様だといけないよな」

太陽は散々迷った挙げ句、拝啓陛下様、と書き出した。
その後、太陽は精霊の踊りをピアノで弾く。

精霊に手紙を持たせて、大方使いの人物に手紙を渡した。
小舟が波を立てて、太陽達の方へきた。
(太陽のみ許す)
そう太陽が渡した手紙の余白に書いてあった。

「俺のみ許すって」
「行ってきな、俺らはギルドにいるから」
「はい、でも俺明日バイトがあるから日本の埼玉まで一人で帰ろうかな、なんて」
「じゃあとりあえず宿屋見つけて休むよ」
「そうだ、アイのケータイの電話番号を教えてよ」

太陽が言うと、耳を貸してほしいというようにアイはジェスチャーし、こそこそ話のように番号を聞いた。

「太陽、気をつけて」
「ありがとう」

  太陽はその小舟に乗り込んだ。せせこましいがなんとか一人分の場所が確保できた。木の船のようで、オールも木で作られたような粗末な船だ。使いのものはロープを身につけて、顔を見られたくないのかフードを深く被っている。小舟は時間をかけて城内に入っていった。小舟は城の一階の階段のある所に横付けされた。

「降りろ」

ぼうとしている太陽に声をかけたのは使いの一人だった。

「あーはいはい」

 太陽は不安定な足場から安定した足場に移動した。スリッパを履く。
 使いのものが太陽の先を歩く。キラキラした内部に再び入り込んだ。
 煌びやかな廊下には、つきあたりのところに造花が飾られている。
 しばらく誰も、一言も発さず歩き続けた。

「王と女王の間でございます」

 使いの内二人が引き戸を開けた。

「やあ、太陽君」
「ロ―、いや、陛下」
「太陽君、僕が日本の付近、詳しく言うと東京湾にリコヨーテを落とした事に気を荒立てているのか?」

 ローリは詰めるように太陽に近寄ってきた。

「それはいいんですけど、ネニュファールはどこですか?」

 太陽はいつもそばにいるネニュファールがいないので訝しむ。

「君がなぜ敵国の兵士と一緒にいるのか詳細に教えてくれたら、話そう」
「ああ、そのことですか。彼らとはリコヨーテへ向かう途中、何も知らなかった俺がドラゴンの口を開けて、空中にとどまっている兵士達たちがいるのをみて、皆で助けたんです。砂漠などに落ちていた願い石を使って」
「ほおう。ネニュファールは任務のためテイアにいる。なぜ君はフェルニカ兵と仲良くしようとする? 奴らは悪魔だ、甘い言葉に騙されてないか?」
「ルフランは違うでしょう?」
「ルフラン……。彼女も日付をわざと違う日に設定して、戦争を始めようとした」
「え?」
「それでやむなく、リコヨーテを地上に落としたわけだ。砂漠の底なし沼状態も二十四日の夜には無くなる。リコヨーテに入るためだった元のドラゴンの白骨も砂となる。完全に砂漠化するんだ。それにしても君には失望したよ」
「な、なぜですか?」
「フェルニカ兵を全員しめだすのにどれほどの労力を使ったか知らないね」
「そ、そうか。それは悪かったです。あの恐れながら申し上げますが、宙ぶらりんの彼らを助けることのほうが大事だと思って」

「リコヨーテに送る必要はなかったんだ」
「そ、それは皆が行きたがっている様に見えたから……ご、ごめんなさい」

 太陽はローリに屈するよう謝った。

「これでは、彼らが日本に行けないという前提がひっくり返ってしまったじゃないか」

 ローリは物腰は冷静に声を発しているのだが怒気に満ちた目をしていた。

「あ、ですがケータイは、今テイアにいる、俺の仲間たちが奪ったらしいです」
「そんなもの誰かから借りれば、リコヨーテの様子がわかってしまうではないか……テイアに残って、リコヨーテに住んでいて締め出しを食らったリコヨーテ人に願い石でここにこさせているネニュファールになんと言ったらいい……」

 ローリはこめかみをおさえてその場に倒れ込んだ。

「ロ、陛下」

 太陽はすぐにローリに触ろうとすると、使いのものに手をがんじがらめにされた。

「陛下、ご無事ですか?」

 そう、周りの兵士や使いのものが聞く中、太陽は部屋の外に出され、城の内部に連れて行かれる。

「皇太后に会わせてくれ」
「皇太后様は非常に忙しい。だが、帝王様に処分を任せる。失礼を働いたら八つ裂きにしてやる」

(ローリの父親のことだな)
 太陽はしばらく引きずられるように移動した。そして大きな輝かしいベッドのある部屋に連れ込まれた。畳の部屋に豪華な絨毯が敷いてあった。

 誰かが眠っている。点滴を打っていて、尿バックも付いている。
(具合が悪そうだ)

「お初にお目にかかります、私は石井太陽と申します」
「ふむ、ローレライの友人か。かけた手錠を外してやってくれ」

 彼はむっくりと上半身起き上がる。
 体は筋肉質の中肉中背と言っていいだろう。落ち窪んだ青い瞳には光る意思を感じる。肩ほどある白髪頭だ。いかり肩はローリと同じだが、すごく顔色は悪いがバランスの良い顔た。

「陛下が倒れこみました。この男はリコヨーテに敵国のフェルニカ兵を引き入れた、大罪人です。その心労のせいで陛下は倒れられたのだと。処罰はいかがなさいましょう?」
「主ら、ひとまず呼ぶまで下がれ、こやつと吾輩が話すのだ」
「はい、拷問の準備もしてまいります」
 使いのものはいなくなった。手鎖も外され自由になった。
「よきかな、ネニュファール以外にも仲のいい者もおったのか。誠によきかな」
「あのう、私には使命があってこの城に来ました」
「ほおう、直々に何を願うのかい?」
「そうです、皇太后様と陛下様がかけたキノコ人間の呪いを解いてほしいのです、かいつまんで話すとエーアイと十分おきに喋らせるのと、アイという娘に触られたり、目があったりした際に爆発することが起こされている人がいて、皇后様の呪いで。それをやめて差し上げていただきたいのです」
「ああ、いいだろう。俺がいる限り、妻に話してやめさせよう」
「ありがとうございます」
「名は何という」
「へ? 石井太陽です」
「そうではない。その呪いにかかっている者の名だ」
「すみません。水見ユウキです。失礼ながら申し上げます、帝王様の名前はなんとおっしゃいますか?」
「ラウレスク、だ。ふむ、太陽は……見たところ日本人だな。武楽器は何だ?」
「ピアノです」

 太陽はドギマギして答える。

「吾輩は見ての通り虚弱である、体が病に蝕まれている。持って一年くらいだ。その前に色んな人の演奏を聞きたい。ローレライのことは気にしなくて構わぬ。吾輩もそなたの願いを叶えるのだ。一曲願おう」
「陛下のことを? お戯れを」
「まあな。心配してないといえば虚偽になるが、やつは吾輩の息子、分身を作る技術を教えたのも吾輩だ。まさか日本につけると知って喜び、リコヨーテの人にだけ日本に行くことを伝え歩いて全然眠っていなかったのだろう。これでも弾いてくれないのなら不敬罪で牢屋行きだぞ」
「わかりました、ネニュファールはいつ戻られるのでしょうか?」
「ほおう、二四日までには戻ってくる。任務はアーガイルチェック柄の文様をつけた人しか助けない決まりらしいな」

 ラウレスクが咳き込む。

「大丈夫ですか?」
 そう言いつつ太陽は思想を巡らせた。
(ネニュファールはガウカのアーガイルチェックの帽子に反応して砂漠のところに願い石を置いたのでは?)
 太陽はネニュファールのことが頭から離れなくなった。
 ラウレスクは手で何でもないというように合図した。

「わかりました。それでは一曲。……ウォレット・ストリングス」
「ここは防音になっている、好きに弾くが良い」
「ヘンデルでファンタジア ハ短調」

太陽は肩の力を抜いて弾ききった。ピアノを弾くと高揚感が高まり、何より楽しかった。

「弾きましたが……」
「久々に良いピアニストに出会えたよ」

 ラウレスクは手を包みこむような拍手をした。

「アップライトピアノですけど、それが新鮮だったようですかね」

 太陽は照れ隠しに呟いた。

「はっはっは。上手い人は何の楽器でも上手い」
「あ、帝王様は武楽器を弾いたりできないのですか」
「吾輩はトロンボーン奏者だったが、見ての通りこの体では、な」

 ラウレスクは注射によって紫色になった腕をちらりと見せる。
(見るからに痛そうだ)

「ロ、陛下はバイオリンだからバイオリン弾くのかと思いましたよ」
「吾輩の妻はバイオリニストだ」
「怒らせたら怖いらしいですね」
「ああ、お主には会わぬようにセッティングする。お主が帰ったら呼ぶよ。呪いを解くための魔法曲は鳥にでも運ばせる、ついてはなにか匂いがわかる物を持っておるか?」

 太陽はショルダーバッグからハンカチを取り出して手渡した。
「しばらくの間預からせてもらうが良いか?」
「はい、じゃあこのへんでお暇させてもらいます。えっと、勝手に出て良いんですかね?」

 ラウレスクは枕元にある白いスイッチを押した。

 兵士が二人来た。

「ロ、陛下に会いたいんですけど」

「「断固拒否だ、さあ帰った。中庭に行くか、湖を渡るか、選んでもらうぞ」」

 鎧を着た兵士はふたりとも声が被さった。
 ラウレスクは穏やかに手をふった。

「ありがとうございました。あ、じゃあ中庭に行きます」

 太陽は部屋を出る前に一礼した。
 
 使いのものがこれまた二人廊下に立っていて、太陽は挟まれる形で歩を進める事になった。それには、どこにも逃げ場がないぞと警告しているかのように思えてならなかった。
 そして、中庭へ到着。

「ありがとう、ございました」

 太陽は深々と頭を下げた。

「陛下からの伝言。フェルニカ兵は信用するな。また来れたら話をしよう。僕のことも心配はいらない。だそうだ」

 太陽は兵士に赤色の丸い空間へ押されて入った。

「乱暴だなあ、ウォレット・ストリングス」

 太陽は武楽器をだすと孤独にグリーンスリーブスを弾いた。

 木々の生え茂る美亜の家の裏の丘に出た。
 太陽はあたりを見渡す。蛇がニョロニョロと太陽の目の前に来た。うねりながら逃げていく。
(俺自身は何も問題はない。桜歌達はどうだろうか?)
 太陽は美亜の家まで走った。蚊に刺された左腕をかきつつ、美亜の家のインターフォンを押す。

『はい?』

 遥の声がした。

「すいません、俺です、石井太陽です。美亜……さん、今居ります?」

 太陽は返事を待ったが、なかなか返ってこない。

(いないのかな)
 太陽が諦めかけたその時、玄関のドアが開く。

「遅かったじゃないの」

 美亜がしたり顔で太陽を見た。
「よかったー、美優と桜歌は?」

「何時間も前に帰ったわよ。桜歌ちゃんは美優が送ってったわ」
「そっか、じゃあな」
「待ちなさいよ」
「まだ何かあるのか?」
「美優に告白されたでしょ、なんて返事したのよ?」
「お前に言う必要性……、俺は一刻も早く帰って、桜歌に会いたいんだけど」
「いいから」
「お前から俺がお断りすると言っといてくれ。じゃあ」
「えええーなんでよ、あんなに仲良かったじゃん」
「他に好きな人いるの?」
「知るか」
「ちょっと待ってなさい」

(?)
 太陽は美亜に言われて少しの間、待っていた。

「太陽」

 太陽は名前を呼ばれて驚いた。
 美優が顔を半分玄関から出して身構えながら、太陽を見た。

「美亜と恋愛トークしてたら盛り上がってさ。あ、桜歌ちゃんは家に送り届けたよ。……お断りってさ、私じゃ隣に立つ事もできないの?」
「……俺には好きな人を作る資格ないから」
「好きな人を作るのに資格なんてない、人間は誰を好きになっても良いんだよ。男同士でも」
「いやいや、俺は別にそういうわけじゃ」
「ちょっと、一緒に帰りなさいよ」
 美亜は美優の手を引いて軒先まで出てきた。
「美亜、またおしゃべりしようね」
「全然いいわよ」
「今度こそ帰るわ、またな」
 太陽は成り行きで美優と帰ることになった。
「あのさ、まだ父親とうまく行ってない感じ?」
「おう。頑張っても仲良くできる気がしない」
「そういうときは金的よ、それで腹を割って話す。一発かませばちゃんと言葉に出せるよ、きっと」

 美優はアイデアを出した。

「美優は強いな、振ったっていうのに俺の事まで考えられて」
「いい? 仲直りして、お父さんの気持ちを汲んであげなさい。あなたにしかできない、事だよ、一回リセットしてもう一度、自分の人生を決めなさい。寂しそうなあなたに忠告だよ」
「もう一度、お父さんと仲良くなれるかな」
「なれるよ、あなたなら必ず」
 美優の言葉に太陽は惹かれていくのを感じた。
 太陽はケータイを取り出した。もうすぐ家まで百メートルくらいだ。

「お父さんに電話して外でぶちかます。桜歌が真似したら嫌だから」

 太陽は番号が変わっていないか不安になりながら、通話ボタンを押した。

「あ、美優お前はどうする。帰りの方向一緒だけど、美優の家、俺んち通り過ぎるじゃないかよ」
「あなたの勇姿をこっそり見させてもらうね」

 そう美優が言った時、電話が通じた。

『もしもし、太陽、どうしたんだ、電話』
「話したい事があって、家の外にきてくれるか。桜歌には秘密で」
『わかった』

 電話が切れた。

「なんかドキドキしてきた。美優、電信柱だ、ここに隠れろ」
 太陽は家から近くの電信柱を指さした。

「じゃ、頑張ってね」

 美優は太陽の手を握って、離した。
 太陽はずんずんと進む。

 ちょうど家から響が出てきた。
 太陽はこれより家の近辺から少し離れ、美優に見せようと思い、響に手でおいでとジェスチャーした。

「太陽?」

 響の声は幼い頃から聞いている、胸が温かくなるような声だった。

「ダァアアアアア」

 太陽は近所迷惑などお構いなしに叫んだ。そして、響の股間に思い切り蹴りを入れた。
 予想だにしていなかった蹴りで響はうずくまった。

「……うう、ち、ちょ、これは、うううんん、なに」

 響はあまりの痛さに悶え苦しみ、テンパっている。

「これで浮気や罪の件はもう咎めないから仲直りだ、…ずっと無視して悪かったな。家に戻れよ、俺はもう少し夜風に当たってくる」

 太陽が言っている間に響は立ち上がっていた。
(突き飛ばされる)
 太陽は反射的に避けようとする。
 しかし、それを予測していたのか、横にずれた響は太陽をギュッと抱きしめた。

「今までごめん。太陽も家に帰ったら、その、なんだ、また、俺達の家なんだから、遠慮するなよ」

 響はしどろもどろになって離すと、家へ入っていった。
 太陽はうつむいていて、響の表情を読むことができなかった。
(幼き頃嗅いで安心した匂いだった)

「たーいよっ」
「美優、どうだった、俺のキック」

 太陽は鼻の奥がツンとしているのをごまかすように右足を軽く上げた。

「めちゃくちゃかっこよかったよ」
「お父さんはすべてがチャラになるわけでもないけど、少しは許容しようと思った」
「良かったね」
「うん、じゃ、送っていくよ」
「そういえば、ラ・フォリアがどうとか言っていたけど、何だったの」
「こないだ会ったキノコ人間のことでさ。なんかさ、まずは分身を作って頭を入れ替えて、それだと一日しか持たないじゃん? ラ・フォリアを大人数で弾けば、弾いてもらった人の寿命が長寿になるうえに、奏者達の寿命の減りは少なくなり、キノコ人間の人の寿命を伸ばすために皆で弾いて助けてやろうと思って」
「そうなんだ」
「皆で協力してやろうよ」
「うーん、太陽がやるなら」
「決定な。皆も集めてくれよ、マリン分隊長とか」
「翔斗と気まずいなあ」
「翔斗には俺から離しとくよ」
「あのさ、太陽」
「何?」
「告白の返事待ってるよ、直接言われてないもの」
「……いいよ、こちらからもお願いします」
「え? ほんとに?」
「うん」
 二人はゆっくり歩いていたが、美優の家まですぐについた。
「じゃあな」
「待って、ラ・フォリアはいつ吹くの?」
「アイと話しておくよ。来週までにはわかると思うよ」
「わかったー、明日、お父さんと話すけど太陽も来る?」
「行くよ」
「じゃあバイト終わったらうちおいでよ。美亜には内緒ね。それと、いつまでその格好をしてるの?」
 美優に言われて太陽は自分の姿をかえりみた。耳には彗星証、左腕にはギンガムチェックのリボンをつけていた。ショルダーバックの中にすべてをしまった。
「またね」
「おう、ありがとう」

 帰った太陽は気になっていた情報がテレビでやっているのを見た。

『突然現れた大陸は日本風味の大陸です。規制線ははられておらず、どなたでも入れます、ここ東京湾を覆い尽くしております。住んでいる方たちに電撃インタビューいたします』
「大変な騒ぎになってるな」
 充電中のケータイのニュース速報が鳴り止まない。テレビを消してアイに電話をかけた。
 三コール目でアイが電話に出た。

「俺だ、太陽だ」
『太陽、今うちらホテル内にいるんだけど、日本の人もたくさんいるよ』
「元々日本語が流通していたのが幸いしたな。よく聞こえるよアイの声」
「何かあった、妙に清々しい声だけど」
「あ、えーと。色々? これからはもっと素直になってみようと思って。そんなことより、ラ・フォリアいつ弾くか決まった?」
『二十四日の二十時に演奏する、だからなるべく人を集めて!
「わかった」
『おやすみ、ありがとう。太陽』

 アイの感謝の言葉に擦り切れていた太陽の心がまたもや癒やされた。

「おやすみ」

(リコヨーテに入ってきた人が、音楽を奏でて半月人の血を宝石や硬貨に変えられる力があることがバレたらどうしよう)
 太陽は天気予報をチェックした。どうやら降水確率は二十パーセントだ。夏らしい猛暑日になりそうだ。梅雨が明けたのか、最近は雨は降らないようだ。
  そして、太陽はいつものルーティンをこなして、勉強の時間を多く取った。眠りに落ちたのは一時頃だった。
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