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ぬいぐるみの独白
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あぁ、今日はなんて幸せな日だろう。
永遠の命を与えられて、これから今日から、ボクは真の永遠の命と真の永遠の幸せを手に入れるんだ。ありがとう、神サマ。有り難う、みんな。みんなにもいつかこの時が訪れることを祈って、ボクは彼女と逝くよ。今まで、キミたちも何度か同じ思いしてるけど、この気持ちも同じ日が来るといいな。ボクの5代目の主が死んだ。今日、ボクも棺に入った。これから幸せなところへ一緒にいけるんだ。熱風も心地いい。全てがボクたちを祝福してくれてる。
ボクがぬいぐるみとして初めてこの世に永遠の命を与えられ、店に並んだ日。かわいい少女がボクを抱え、優しい両親に迎えられ、温かい店主に見送られ、ボクが少女の涙をぬぐう日々を過ごした。それも一瞬の一時で少女は女性になり老婆になってもボクを呼んだ。「私の大切な孫をよろしくね。」ボクは彼女の最後の涙をぬぐって、彼女の孫の隣で彼女を見送った。
彼女の孫はボクには見向きもしなかった。時々冷めた目でボクを見てため息をついていた。それでもボクは彼女のために孫のそばにいた。その日は珍しく、孫がボクを連れて出かけた。鞄に入る感覚は懐かしくて、外を見たのは久しぶりだった。やって来たのは、とても明るい店で流行りの曲がかかってたまにラジオのようなお話が聴こえる店だった。孫は店を回るのか、ボクを冷たい目をした店員に預けてボクと離れた。どれだけ待っても、孫がボクを迎えに来ることはなくて、ボクは冷たいアルミの棚に座って次の主を待っていた。
次の主が来たのはボクが店のラジオを暗記した頃だった。次の主は爽やかな青年だった。ごつごつした手で無造作にボクをカゴに入れ、冷たい店主にビニールに入れられてボクは店を出た。青年の部屋は殺風景で、ボクはソファーに座らされた。ソファーに座っているとキレイな若い女性がやって来て、ボクを可愛がってくれた。その女の人は何度もボクに会いに来ては可愛がって帰って行った。ボクはある日その女の人に抱えられ、どんよりした空気の中その女の人の涙をぬぐった。それ以来その女の人はボクに会いに来てくれなくなった。青年はボクを殴って、悲しそうな顔でカメラを向けビニールに入れて箱にボクを仕舞った。箱入る前にビニールの隙間から見えた青年の涙をぬぐうことはできずに暗闇が訪れた。
真っ暗な日はあっけなく終わって、三日後のお昼、とても優しい光といっぱいの仲間たちがボクを迎えてくれた。少し骨ばった細い指が震えながら、鋭いけど優しくて綺麗な目をした金髪の青年が大事そうにボクを箱から取り出して抱きしめてくれた。「いらっしゃい、みんなと仲良くしてね。」彼は咳込みながらそう言って、ボクをベッドに座らせてくれた。彼は毎晩ボクたちを撫でて、たまにお風呂に入れてくれた。彼の留守はみんなで彼を褒めて過ごした。彼と寝ていたある夜、大きな揺れがボクたちを起こした。彼だけは守らなくてはならない。みんなもそう思ったのか、彼の元へ飛んで集まって本棚から彼を守った。それから三日経っても本棚は退かなかった。どんどん彼は弱っていき、掠れた声で「有り難う。」と逝った。
彼を見送った日、女性が、そう、今ボクと一緒に燃やされてる彼女と出会った。彼女は彼のことをいつも嬉しそうに誇らしそうに語ってはボクは彼女の涙をぬぐった。彼女はボクを鞄に入れて、彼との思い出の場所へ何度も連れて行ってくれては、ボクも湿気った。その日々は毎日で、何十年も続いた。晴れた日はお線香の香りを体に染み込ませ、雨の日はボクも湿気りながら彼女の焼くアップルパイの香りを楽しみ、彼女と幸せな日々を過ごした。彼女はふくよかだったのに、泣きすぎたせいか年々痩せ細り、衰弱していった。そしてボクに最後の涙を滴らせ「一緒に彼のところへ逝こうね。」と笑った。ボクも笑顔で彼女のそばへ寄り添った。
ついに今日、ボクは彼女と彼と三人で笑顔の毎日を迎えることになったのだ。ぬいぐるみの仕事を終えて、二人の息子として、幸せに過ごす日々に今から逝くんだ。永遠はない。誰かがそう言っていたけれど、ボクは信じてる。三人ならきっと永遠に一緒だと。「久しぶり。」そう言って笑い合うボクたちは、きっと…。
end.
永遠の命を与えられて、これから今日から、ボクは真の永遠の命と真の永遠の幸せを手に入れるんだ。ありがとう、神サマ。有り難う、みんな。みんなにもいつかこの時が訪れることを祈って、ボクは彼女と逝くよ。今まで、キミたちも何度か同じ思いしてるけど、この気持ちも同じ日が来るといいな。ボクの5代目の主が死んだ。今日、ボクも棺に入った。これから幸せなところへ一緒にいけるんだ。熱風も心地いい。全てがボクたちを祝福してくれてる。
ボクがぬいぐるみとして初めてこの世に永遠の命を与えられ、店に並んだ日。かわいい少女がボクを抱え、優しい両親に迎えられ、温かい店主に見送られ、ボクが少女の涙をぬぐう日々を過ごした。それも一瞬の一時で少女は女性になり老婆になってもボクを呼んだ。「私の大切な孫をよろしくね。」ボクは彼女の最後の涙をぬぐって、彼女の孫の隣で彼女を見送った。
彼女の孫はボクには見向きもしなかった。時々冷めた目でボクを見てため息をついていた。それでもボクは彼女のために孫のそばにいた。その日は珍しく、孫がボクを連れて出かけた。鞄に入る感覚は懐かしくて、外を見たのは久しぶりだった。やって来たのは、とても明るい店で流行りの曲がかかってたまにラジオのようなお話が聴こえる店だった。孫は店を回るのか、ボクを冷たい目をした店員に預けてボクと離れた。どれだけ待っても、孫がボクを迎えに来ることはなくて、ボクは冷たいアルミの棚に座って次の主を待っていた。
次の主が来たのはボクが店のラジオを暗記した頃だった。次の主は爽やかな青年だった。ごつごつした手で無造作にボクをカゴに入れ、冷たい店主にビニールに入れられてボクは店を出た。青年の部屋は殺風景で、ボクはソファーに座らされた。ソファーに座っているとキレイな若い女性がやって来て、ボクを可愛がってくれた。その女の人は何度もボクに会いに来ては可愛がって帰って行った。ボクはある日その女の人に抱えられ、どんよりした空気の中その女の人の涙をぬぐった。それ以来その女の人はボクに会いに来てくれなくなった。青年はボクを殴って、悲しそうな顔でカメラを向けビニールに入れて箱にボクを仕舞った。箱入る前にビニールの隙間から見えた青年の涙をぬぐうことはできずに暗闇が訪れた。
真っ暗な日はあっけなく終わって、三日後のお昼、とても優しい光といっぱいの仲間たちがボクを迎えてくれた。少し骨ばった細い指が震えながら、鋭いけど優しくて綺麗な目をした金髪の青年が大事そうにボクを箱から取り出して抱きしめてくれた。「いらっしゃい、みんなと仲良くしてね。」彼は咳込みながらそう言って、ボクをベッドに座らせてくれた。彼は毎晩ボクたちを撫でて、たまにお風呂に入れてくれた。彼の留守はみんなで彼を褒めて過ごした。彼と寝ていたある夜、大きな揺れがボクたちを起こした。彼だけは守らなくてはならない。みんなもそう思ったのか、彼の元へ飛んで集まって本棚から彼を守った。それから三日経っても本棚は退かなかった。どんどん彼は弱っていき、掠れた声で「有り難う。」と逝った。
彼を見送った日、女性が、そう、今ボクと一緒に燃やされてる彼女と出会った。彼女は彼のことをいつも嬉しそうに誇らしそうに語ってはボクは彼女の涙をぬぐった。彼女はボクを鞄に入れて、彼との思い出の場所へ何度も連れて行ってくれては、ボクも湿気った。その日々は毎日で、何十年も続いた。晴れた日はお線香の香りを体に染み込ませ、雨の日はボクも湿気りながら彼女の焼くアップルパイの香りを楽しみ、彼女と幸せな日々を過ごした。彼女はふくよかだったのに、泣きすぎたせいか年々痩せ細り、衰弱していった。そしてボクに最後の涙を滴らせ「一緒に彼のところへ逝こうね。」と笑った。ボクも笑顔で彼女のそばへ寄り添った。
ついに今日、ボクは彼女と彼と三人で笑顔の毎日を迎えることになったのだ。ぬいぐるみの仕事を終えて、二人の息子として、幸せに過ごす日々に今から逝くんだ。永遠はない。誰かがそう言っていたけれど、ボクは信じてる。三人ならきっと永遠に一緒だと。「久しぶり。」そう言って笑い合うボクたちは、きっと…。
end.
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