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2章

23話 最悪な事態

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「う~ん、これはまずいね」


遠くの状況を見て、僕は唸ってしまいます。
どうしてそんな事が出来るのかと、フィナは不思議そうに見て来たね。


「そう言えば言ってなかったけど、隣の森に枝を繋げて、それをずっと遠くまで続けていたんだ」
「そ、そうだったの?」
「うん、さすがに勇者たちが乗っていた高速船よりは遅かったんだけど、それでも輸送船が戻って来る前には分かったんだ」


勇者の船は、そんな僕の索敵範囲を抜けて、1月後にはここに到着する。
でも一番の問題は、森が段々と異様な姿をしたモンスターに侵食されてる事で、木々が腐って崩壊を始めてるんだ。


「ま、まずいじゃない!?」
「そうなんだよフィナ、それに悪い事にね、そいつらは勇者たちを追いかけてるんだ」


浸食されてる方角はただ一点のみで、その方角は勇者の船しか理由がなかった。
勇者たちは、虎の尾を踏んでしまった様で、森の攻撃も勢いに負けてる。


「一点に集中してるから余計だね」
「な、何を他人事みたいに言ってるのよリキト」
「落ち着いてよフィナ、僕の意識化になってからは、森も力を上げてそいつらも進めてない」


僕の話を聞いて、フィナは落ち着いたけど、僕は困ってもいたんだ。
倒せても進むことの出来ない戦い、その均衡がいつ崩れるのか分からないんだ。


「リキト、無理してない?」
「そうだね、ちょっと困ったことになってるのはほんとだね」


勇者たちに始末をつけて貰うとしても、それまでには時間がある。
その間に上と話を纏める事も必要だし、正直な所、1つの国だけでは勝てる気がしない。


「他の国にも救援を求める必要があるね」
「じゃあ、ジェンヌにもお願いしないとだね」
「そうだね、他の国に支援してて良かったよ」


きっと協力してくれると信じて、僕は準備を始めた。
ジェンヌに話を持ち掛け、驚かれる中でも対策を相談したんだ。


「そんな事が起きていたの」
「そうなんだよジェンヌ、輸送船よりも戻って来るのが早いから、勇者がどうなったのかもわからない」
「無事だと良いけど、それよりもそいつらは問題ね」


同意見で頷いた僕は、近くの国に援軍を求める様にお願いした。
数はそれだけで武器になるし、移動できる国なのだから、集まって更に支援もしやすくなるんだ。


「そうすると、ここの存在が知られるのね」
「そこは仕方ないよジェンヌ、隣の森からも資源は手に入るし、防衛はここでする事になる」


僕たちが世界の防衛線で、これに負けたら、あのモンスターに世界が支配されることになる。
ジェンヌがそれを理解して、なりふり構っていられない危機だと、島に戻って行ったよ。


「勇者たちが戻って来るのは1ヶ月後、それまでに準備が出来るかな」


出来るだけの事はするし、勇者には今までの分も働いてもらう。
遠くの森での情報を紙に纏める日々を続けて、世界がこんな状態な理由が分かったんだ。


「あいつら、酸を吐いて来るのかよ」


しかも、死んでも土を汚染して消えていく様で、木々を次々に成長させる僕がいなかったらまず勝てなかった。
僕の指示があってこその均衡で、もしかしたら僕はこの為にいるのかもしれないと感じていたよ。


「フィナたちとのんびり暮らしたいだけだし、平和ならいいんだけど、あれは放っておけないよ」


台所で料理をしてるフィナたちを見て、僕は心からそう思えた。
出来るなら、森の力だけで何とかしたいけど、相手の勢いを止めるので精いっぱいだ。


「もっと力が欲しいけど、遠くの指示出しで精一杯なんだよね」


今も無理をしてて、フィナたちを遠ざけたのも心配させない為なんだ。
意識がそっちに吸われる感じで、森と自分が一体化してしまいそうになる。


「そうなってみんなが助かるならそれでも良いけど、防衛に徹してる森だけじゃ勝てないんだよね」


僕が一体化して、今まで通りの攻撃が出来るなら、もしかしたら勝てるかもしれないけど、そんな賭けは出来ないし、そろそろ勇者も到着するんだ。
アイツらはケダモノだけど、この事態を起こした責任は取ってもらう。


「あれが他の島?」
「そうよリキト」


フィナが教えてくれたのは、デリンジャルとアーベラスと言う国で、島同士の連結が始まってるのが見えた。
他の島ももう直ぐ到着するそうで、いよいよな雰囲気がして来たよ。


「でも、それにはまず会議でしょうね」
「そうだね、ジェンヌがんばれ」


人任せな僕だけど、支援は前よりも出来ていて、近くの森からどんどんと生産していた。
そして、更に3つ(テテン・オーン・パンデ)の島が連結する頃に、いよいよな船が飛んで来た。


「来たわね」
「そうだね、ジェンヌがんばれ」


前にも見た大型船で、勇者の帰還だとみんなが注目したね。
話し合いが上手く行きますように、そんな願いを込めて手を合わせたけど、数時間後にジェンヌが焦って来訪したから、僕たちはかなり深刻なんだと、覚悟して聞く事になった。


「う、嘘でしょ!?」
「フィナ、申し訳ないですけどほんとよ、だからリキトにお願いしに来たの」
「勇者が戦えない状態かぁ~」


それは予想外だと、あいつらの心配はしないでがっかりだ。
でも、得られた情報もあって、加護を持った勇者でも、隕石の近くでは生きて行けないのが分かったんだ。


「空気も汚染されてる感じかな?」
「はい、勇者たちは、身体の中から汚染されてる感じで、リキトの薬があったから一命は取り留めたわ」
「良くここまで持ったね」


船が到着して、誰も出てこなかったから心配したらしく、加護のおかげとジェンヌは言ってきた。
数ヶ月飲まず食わずとか、ほんとに加護の力は凄いと思ったけど、同時に汚染の強さも再確認した。


「そうすると、近づいて戦うのは問題が多そうだね」
「はい、リキトの武器を使うしかないかもしれません」
「接近戦なしかぁ~」


それは、勇者が使えないよりも問題で、獣人たちの力を除外する事になってしまったんだ。
そこで提案したのは、獣人の目を利用した超長距離砲の使用だ。


「これなら、遠くからの攻撃が出来るから、倒せるかもしれないね」
「へぇ~どれくらい遠くまで撃てるの?」


手のひらサイズの模型を見て、ジェンヌからの質問が飛んできたけど、僕の答えに信じられないって顔をされてしまった。
僕の大好きなアニメの兵器で、土台付きのバスターキャノンがその兵器だ。


「せ、千キロって!?」
「まぁ驚くよね、でもそれ位は狙える」
「し、信じられないわ」


使って見れば分かると、模型をまじまじと見てるふたりに説明したけど、実物の大きさを知ったらもっと驚くかもしれない。
あれは、大型のロボットが使う奴で、木々を集結させて実現させるんだ。


「本番は、上の会議が終わってからだけど、ジェンヌにはその説明もお願いする事になる」
「そうですのね・・・リキトは来てくれませんか?」
「ごめんねジェンヌ、それは出来ないよ」


人見知り以前に、僕はもう森から離れられない、それだけの力を注いでて、何時意識が無くなってもおかしくない。
別れの時は近いのかもしれないと、僕は不安だけど、それでもみんなの為に頑張るんだ。
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