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2章

22話 裏の何者か

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「良い国だったねぇ」
「飯が美味かった」


西さんと西島君は、あの国で暮らしたいとか言う程に気に入っていたけど、西郷君はそれに対して反対で、鎧を脱いで堅苦しかったと嫌そうです。
それには二人も同意してて、重いだけの使えない鎧を脱いで体操を始めたわ。


「いつ反撃をされるか心配だったけど、それもなかったわ」


それが不幸中の幸いと言うやつだけど、それを相手がしなかったのも疑問で、アタシはそこに一番不満だったの。
旅に出発させられたのも、その何かの力が作用したのだろうけど、アタシはそれにしてやられたのよ。


「知恵の勇者なんて、肩書だけね」


旅から戻ったら、今度は勝つと誓ったけど、アタシも負けたとは思ってないわ。
実験は十分行って成功していたし、問題は量産だけだから、物資を送ってくれる約束で勝ち取っているのよ。


「みんなも手伝ってね」
「それは良いけどよ委員長、戻れるのかよ」
「その心配はいらないわ西郷君」


船の自動運転は解除できなかったけど、戻る為のプログラムは作って入力する事が出来たわ。
だから、失敗しても逃げる事が出来るんだと、これからの死地に向かう皆に教えたのよ。


「じゃ、じゃあワタシたち帰れるの?」
「そうよ西さん、だからみんなで帰りましょ」
「さすがだぜ委員長」


みんなは元気になってくれて、アタシも笑顔を見せたけど、それが嘘なのはアタシだけの秘密よ。
それを知られたら、きっとみんなに殺されるでしょうけど、隕石爆破までは命を長らえたのよ。


「ホッとしたけど、果たして成功するのかしら」


隕石の爆破破壊なんて、知恵の勇者でも分からない。
威力は十分と分かってるけど、それは机上の空論で、現実は大抵上手く行かないわ。


「だから、アタシは3倍を用意したわ」


これで成功するはず、そんな言葉を口から出さないで、アタシは爆弾を作っていったの。
そして、幾つもの国を経由し、3ヶ月を費やしたアタシたちは、問題の隕石に直面したのよ


「嘘っ!?」


アタシは、現実を受け入れられず、声に出して絶望してしまったわ。
それと言うのも、隕石の規模が予想以上で、周りの景色も他と違ったの。


「土が黒いどころか、腐ってる?」


とても人が入れる場所には見えず、クレーターを森が守ってるように見えたわ。
隕石は、見える範囲で10キロくらいだけど、クレーターから見える範囲でそれだったから、地表に埋まった部分はもっと大きなモノと考えられたの。


「これは、プランBかしら」
「あれがそうか」
「随分大きいね」


西島君と西さんは、あれが大きいように見えるみたいだけど、大きいなんてモノじゃないと、アタシは何も言えずに冷汗が出ているわ。
土の中の規模を予想し、3倍を用意した爆弾が足りないかもと、頭を抱えてしまったのよ。


「委員長、どうするんだ」
「西郷君・・・兎に角降りて調べましょう」


勇者の装備を着こんで、マスクをしっかりと付けて降りると、直ぐに気分が悪くなってきたのよ。
空気中にも毒があるのかもしれないけど、それでも爆弾の設置はテスト的にも必要と、みんなにお願いしたわ。


「委員長はどうするんだ?」
「みんなが倒れた時の保険よ、船を飛ばして助けに向かうわ」
「だけど、場所が分からないよ?」
「そうだぞ、案内してくれよ」


皆のお願いを聞き入れて、アタシは案内をする事になったけど、最初の保険が失敗に終わってしまい、ちょっと不安よ。
でも同行するのは許容範囲で、船を降りて足元がジュージュー音が鳴っても進み、段々怖くなったわ。


「へ、平気なのかな?」
「西、絶対に転ぶなよ」
「分かってるわよ西島」


うっかり乙女とか西島君は笑っているけど、加護を受けてる装備だから、皮膚で触らなければきっと平気よ。
空気を吸っても平気なのも、アタシたちが勇者だからとみんなを安心させて、更に進んだわ。


「しかし、ほんとに死の世界って感じだな」
「何だか、身体が動かしにくくなってきたわ」


爆弾を設置しながら進むと、西島君と西さんが気づき始め、そろそろ潮時を感じたわ。
奥に進んで、1キロもなかったけど、アタシたちは船に戻る事にしたの。


「待て、何か気配がするぞ」
「「「え!?」」」


西郷君は、剣を抜いて後ろを気にし始めたから、アタシたちも警戒したけど、こんな場所に生き物がいるとは思えなかったわね。
西郷君の向いてる方向は、さっきまで進んでいた隕石の奥側で、その姿が見えてゾッとしたのよ。


「な、なんだあれは!?」
「西郷君、逃げるわよ」
「しかし委員長」
「剣が効くか分からないし、第一爆弾が暴発するかもしれないでしょ」


兎に角撤退とみんなに言い聞かせて、アタシたちは一目散に逃げだしたの。
アタシたちの後方には、映画で見た事のある、あのモンスターにソックリな存在が走って来てて、絶対勝てないと涙が出て来たわ。


「エイリアンとか止めてよね」


色は違うし、少し骨っぽいけどソックリでした。
あの映画の通りとも思えないけど、もしそうだとしたら、下手に攻撃しても自滅するし、森が囲んでいた理由も理解したのよ。


「森が攻撃してくると聞いたけど、それはあいつらと戦う為だったのよ」


森が世界を守っていて、それは知らない間も繰り広げられていた。
世界の誰もが空に逃げたのに、木々たちはずっと戦っていたのよ。


「エイリアンに似てるけど、あれはさしずめ汚染獣ね」


アタシ達でさえ装備がないと生きて行けない世界で、奴らは生存してそれを広げようとしていた。
少しでも爆破をして生息範囲を減らしてやると、船に戻って浮上と同時に爆破のスイッチを押したわ。


「お、おい委員長」
「黙って西郷君、衝撃が来るわよ」
「い、いやそうじゃなくてな・・・爆発してないぞ」


窓から外を見ていた西郷君が教えてくれたけど、そんなはずないとアタシは操縦席を立って外を見たわ。
奥で爆発しても、そこから崩れて衝撃と煙が凄いはずだった。
だけど、隕石は崩れる事もなく、爆発の煙も衝撃もない感じだったわ。


「そんな!?」
「も、もしかして、これってまずいんじゃない?」


隕石から汚染獣が湧き出して、どんどん森に進んで行くのが見えて、西さんが青ざめていたけど、きっとアタシたち全員がそうだったでしょうね。
そいつらは森を飲み込み始め、木々が倒れて行くのが見えたわね。


「木々も攻撃してるけど、数が違うみたいね」
「どどど、どうするんだ委員長」
「落ち着きなさい西島君、森が時間を稼いでいる内に撤退よ」


自動で戻る船だから、対策を考える為にも休憩しましょうと提案したけど、アタシたちはその場に倒れてしまったわ。
意識はあるけど身体が動かなくて、一体どうして?っと答えを考えたわ。


「う、動けねぇ~」
「もしかして、あそこの空気が原因じゃない」
「嘘でしょ、このままじゃアタシたち」


段々と意識が薄れて来て、アタシは考えの足りなさを後悔したわ。
でも、次はそうはいかないっと、気を失っても諦めなかったのよ。
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