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2章

18話 勇者の試み

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「ここがグングニル」


まだ3つしか見ていない浮遊する島国ですが、3つ目のそこは、低高度にいて今にも森にくっ付きそうでした。
それを見て、ミホルさんは予定していた地上の探索を決めて、滞在中に降りられないかの交渉をしようと言ってきます。


「ミホルさん、やっぱり危険じゃないかな?」
「何を言ってるのよマホ、爆弾の材料もまだ揃わないし、調べられるうちにしておかないと困るわよ」
「そうですけど、肺に入っただけで腐敗するとか、怖いじゃないですか」


有名なあの映画の様で、アタシはとても怖かったの。
それでも、調べる事は必要だから、アタシも協力を決めたわ。
島に着陸すると、そこの王族の人が歓迎してくれて、ミホルさんが先頭で握手をしましたね。


「お待ちしていました勇者様方、自分はアルドノと申します」
「よろしくアルドノさん、早速で申し訳ないのだけど、お話しいいですか?」
「勿論です、どうぞこちらに」


アルドノさんに案内され、私たちは会議室の様な部屋に通され、ミホルさんが話しを切り出したわ。
それを聞いて、アルドノさんは了承してくれたけど、ちょっと嫌そうね。


「何かあるんですか?」
「いえ、危険なので十分注意してくださいね」
「勿論です、私たちの目的はあくまでも隕石破壊です」
「分かりました、直ぐに準備しますので、食事の後にいたしましょう」


この世界の食事は口に合わないけど、ミホルさんは笑顔で賛成したの。
だけど、この場所の食事は他と違い、とても美味しくてビックリです。


「美味しい」
「お口に合って良かった、最近良くなったのですよ」
「そうなんですね・・・あのアルドノさん、この国は随分低高度にいますよね、どうしてですか?」


食事を進めながら、ここの情報も得ようとする、流石ミホルさんと思いながらお肉で包んだ野菜を食べていました。
そして、アルドノさんは収穫の為と言って来たんです。


「確かに、船で降りるよりも効率は良いですね」
「ええ、本来は汚染樹が攻撃をしてくるのですが、その攻撃の来ない高度を発見したんです」
「そうなんですね、じゃあこれ以上下だと危ないんですね」


そうですっとアルドノさんは答え、お水を飲んで席を立ったの。
準備が出来たようで、アタシたちは早速昇降船に乗る事になりました。


「私たちの船に似てるわね」
「そうですねミホルさん、きっと基本は同じなんじゃないですか?」
「ミホの言う通りね、じゃあ降ろして貰えますか?」


運転をするのは、この国の兵士の人で、ミホルさんの指示通り、船は降りて行きます。
アタシは窓の外をみて、あれ?っと思ったんだけど、船は少しして着陸したんです。


「どうして遠くに降りたのかな?」
「適当だろ?」
「調査なんだから何処でも良いわよ」
「じゃあ行くわよみんな」


森から離れた場所だったけど、ミホルさんが声を掛けて来て、アタシたちはゴーグルとマスクを着けて外に出ました。
外は空と違って埃が凄くて、これを吸ったら身体を壊すと思うと怖くなってきました。


「死の世界ってこんな感じなのかな?」


黒い土だから余計怖くて、ミホルさんが先頭で船を降りたけど、アタシは降りる前に躊躇ったの。
でも、みんなはどんどん進んで行くから、アタシは勢いよく踏み出したけど、そこで沢山の土が舞い上がったわ。


「ちょっ、これはまずいわ!?」


防護してない部分に触れてしまい、アタシの髪と皮膚が少し焦げてしまったの。
少しだから平気だったけど、埃が立たない程度に速足で歩く様にしました。
でも、それは間違いだったみたいで、体調に異変が起き始めたんです。


「ミホ、平気?」
「ミホルさん・・・な、なんだが身体が重いです」


土を採取してて、アタシは段々体が動かなくなってきて、しゃがんだ後立ち上がるのが辛くなっていったの。
ミホルさんたちが気づいて心配してくれたけど、息切れはしないのに立ち上がれなかったわ。


「これが魔土の影響なのね」
「ご、ごめんなさいミホルさん」
「何言ってるのよミホ、これは貴重な資料になるわ」


逆に感謝してもらえたんだけど、それでも立ち上がる力はもう出なくて、ミホルさんの手を借りてしまったわ。
ニッコリとしたミホルさんに、アタシは謝りながらお礼も伝え、こんなアタシでも役に立てて嬉しかったわ。


「謝罪とお礼を一緒とか、変よマホ」
「エヘヘ、でもありがとうございます」
「良いのよ、これからも良い実験体になってね」
「え!?」


ミホルさんが、アタシの付けてた手袋を外して来て、ちょっと怖い言葉を聞いたの。
でも、言葉だけじゃなくて、ミホルさんはアタシの手を地面に付けて来たんです。


「きゃあぁぁーー!!」
「ふむふむ、直接だと痛みも受けるのね、それに黒く変色する部分がどんどん広がって行くわ」
「痛いっ!痛いっ!や、止めてミホルさん」


アタシがどんなに騒いでも、ミホルさんは手を離してくれなくて、手首から下が落ちてしまったの。
それを見て、アタシは意識が薄れ倒れてしまったの。


「あらあら、もうダウンなのね、使えない」
「そういや生徒会長、回復魔法とかねぇのな」
「そうね、それに勇者でも魔土には勝てないのが分かったわ」
「ど、どう、して」


薄れゆく意識の中、アタシは何とかそれだけを言えたの。
その言葉を聞いて、ミホルさんたちは笑っていて、最初からそのつもりと言って来たの。


「そ、そん、な」
「だってお前、それ位しか使えねぇだろ」
「そうよ、料理もダメで戦闘にも使えないとか、ハッキリ言って足手まといよ」


西島君と西さんの声が聞こえたけど、アタシにはもう返事をする力は残ってなくて、みんなが船に戻るのを見ながら意識が無くなったわ。
アタシは皆に置いて行かれ、魔土の汚染が進んで死ぬんだと、この時諦めたの。


「死にたくない」


涙が零れて目が覚めたんだけど、そこはあの黒い土の上じゃなかったわ。
木が積み重なった家の中で、天井が緑でいっぱいだったの。


「あれって、もしかして葉っぱ?」


よく見ると、枝が幾つも交差してて、葉っぱが敷き詰められていたの。
何処なんだろうと起き上がった時、アタシはいつもの様に起きれたからドキッとしたわ。


「アタシの右手・・・右手がある」


ゾッとしたあの瞬間、アタシはもう怖くて仕方なかったから、あれが夢とは思えなかったの。
だから、今が夢なんだと周りを見回して、やっぱりと思える光景が広がってたわ
ログハウスの様な家がこの世界に存在するわけもないし、幸せな夢だなぁ~っと目覚めたくなくて泣けてきました。


「うぅ~怖いよぉ~」


このまま天国に行ければ良いのにと、アタシはベッドに横になったの。
何時目が覚めて、右手のない現実に戻るのか怖くなってきたけど、そんな時部屋の扉が開かれて、アタシはやっぱり夢なんだと確信したわ。
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