心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

文字の大きさ
上 下
59 / 63
3章 知名度戦争でもアゲアゲ

59話 第3試合は剣技の戦い

しおりを挟む
1勝1敗になり、自分は内心で焦っていた。


「アシャラ、勝つのですわよ」
「勿論ですロベリア様」


腰に剣を一度叩き、自分は主であるロベリア様に一礼した。
皆も応援してくれたが、自分はとても緊張していたよ。


「相手も剣技を使うようだが、果たして自分の剣技が通用するのか」


10歳の自分は、父上にも称賛してもらうほどの腕ではあったが、その剣技もリューブ先生はおろか、金のタマゴのメンバーにすら敵わず、当てた事すら無かった。
だから自信が無くなっていて、この代表に選ばれても同じだったんだ。


「ほう、そちが相手か」
「アシャラと言う、よろしく」
「うむ、セッシャは四天王シャバラサジャ様1の配下、4刀流の四竜斬の使い手シロウジャだ」
「4刀流って、持ってないじゃないか」


相手の腕は1本しか見えず、容姿は海の生物のタツノオトシゴの様で、どういう事なんだと聞かずにはいられなかった。
それを聞いて、相手は見えない自分にガッカリしてきたわ。


「戦う気が失せるな、セッシャはとてもガッカリだ」
「まだ戦ってもいないだろう」
「やらなくても分かる、そちではセッシャには勝てぬよ」
「どうかな、見えなくてもやりようはあるんだよ」


見えない腕が3本あるのが分かり、見ていろっとスキル【領域展開】を使った。
範囲内に何かが入ってくれば、見えなくても感知できるスキルで、気功術と合わせて感知度を上げた自分の必殺技だ。


「ほう、そのスキルを使うか、それならばまだ楽しめるかもしれぬな」
「知っていたか、それなら話は早い」
「しかしな、それではセッシャには勝てぬのだよ」


開始の合図がなされ、自分は剣を腰から抜き先制攻撃の斬撃武技【スラッシュアロー】を放ったんだ。
相手を驚かす為の技だったんだが、何事もなく粉砕され自分の方が驚いてしまった。


「ふむ、どうやらセッシャは過大評価していた様だ、そちは弱い」
「な、なんだと、もう一度言ってみろ」
「そちは未熟なのだ、そんな歳では無理もない」


歳の事を言うなら、初戦のアラサスだってそうだし、パーミュだって負けたが良い戦いだった。
それなのに、こいつは自分を弱いと言ってガッカリして来て、そんなにも差があるのかと苛立ってきた。


「まだまだ自分はこんなモノではない」
「いいや、もう分かったのだよ、気を使っても闘気を使っても、セッシャの半分にも満たない」
「なっ!そんなはずはない、自分は毎日鍛錬して来た」
「そうであろうな、だがセッシャも同じだし、そちは分かっておらんのだよ」


何を分かってないのか、それすら自分は分からなかったが、それが原因でこいつには勝てないと言わせた理由だった。
それが何なのか、それを見せてやると言って来て、相手が初めて剣を構え、自分はそれを見て背筋がゾクッとした。


「なっ!」
「分かったかな?これがそちの超えてない壁、実戦を味わってない結果なのだよ」


確かに、自分は未だに実戦を行った事は無く、いつも訓練しかこなしていなかった。
それはロベリア様の護衛をしていたからでもあり、アラサスに差を付けられた原因だ。


「勿体ないな、そちが実戦を味わっていれば、もう少し楽しめただろうに、本当に勿体ない」
「ま、まだ分からないだろう、剣技なら負けない」
「その手でか?」


相手に指摘され、自分の手が震えている事に気づき、自分は怖がっているを知った。
相手には勝てないと本能的に理解してしまったが、手を叩いて震えを止めたよ。


「そういう事だ、もう降参するのだな」
「くっ・・・自分は」
「アシャラ様っ!先生の言葉を思い出してください」


降参しようとした時、アラサスに叫ばれて自分は司会者の席に視線を向けた。
そこにいたリューブ先生は、相手よりも強くて重い圧力を飛ばしていて、怒られているのが分かったんだ。


「降参しようとしたのがいけなかったんですね、すみませんリューブ先生」
「何を言っている、早く降参しろ」
「あいにくだが、自分たちは負けて当然と言われてここにいるんだ、何もしないで降参なんて出来るかよ」


そこからは、領域展開も解除して剣を構えて突撃した。
剣が見えようがそうでなかろうが、剣を振り続ければ道は開けると思っての事で、自分は剣を相手に振り続けたんだ。


「なんともがむしゃらな剣だ、流派も何もない」
「それで良いのさ、父上には叱られるだろうが、未熟な自分の剣なんて型にはまっていたら勝てる訳がない」
「確かに・・・しかし、それでも実力差は埋められぬよ」
「くっ」


見えない腕の剣が自分を襲い、剣で1撃は防いだが両肩を斬られてしまった。
それでも、自分は攻撃を止めなかったんだが、明らかに速度も力も落ちてしまったよ。


「それ見た事か、全然話しにならないではないか」
「そ、それで良いんだよ、自分にはこれしかない、剣しかないんだよ」


血が流れ、手にも力が入らなくなっていくが、それでも自分は剣を振り続けた。
相手に呆れられても剣を振り、観客からは可哀そうと言う声まで出てきてしまったんだ。


「もういい、見るに堪えぬから一撃で終わらせてやる」


息を切らせた自分から一瞬で離れた相手は、体勢を低くして剣を前に構えて来た。
それは、見えずとも分かる攻撃だったから、好機と思い自分は剣を上段に構えたんだ。


「み、見えなくても分かるぞ、すべての剣を前に突き出しているな」
「それがどうした、それが分かってもそちには防げぬよ」
「知っているか、騎士は主を守れれば命はいらないんだよ」
「何を言っている?」


不思議そうな相手だが、その答えを出さずに相手は攻撃して来て、その剣は自分の腹に見事に命中した。
本来なら、その衝撃で自分は後方に吹き飛ばされたんだろうが、そうならない為に気を使って踏ん張っていたんだ。


「がはっ」
「そ、そち、死ぬ気か」
「そうでもしないと、お前には勝てないからな」


闘気を残していたので、自分は最後の力を振り絞り剣を振り下ろした。
相手の剣は4本とも自分の腹に刺さっていて、自分の一撃は防がれず勝ったと思ったよ。


「くくく、惜しかったな」
「ど、どうし、て」
「セッシャも昔、そちと同じ事をしたから良く分かるのだ、そして、その時こうして防がれたのだよ」


相手は足を使い、自分が振り下ろした剣を弾いて来た。
自分の剣は宙を舞い、相手の足はそのまま顎をかち上げて来て、自分は後方に飛ばされてしまったよ。


「ああ、もう勝てないんだな」


飛ばされている時、ゆっくり時間が流れていて、負けたんだと実感して涙が出て来た。
精いっぱい力を出し切ったし、もう良いかとそのまま地面に落ちるのを待ったんだが、硬い地面には落ちず身体がふわりと浮いて止まったんだ。


「良くやったなアシャラ、偉かったぞ」
「リューブ、先生・・・自分は」
「良い経験になっただろう?今度は実戦もしような」
「はい・・・自分、頑張ります」


リューブ先生の腕の中で、自分は涙を流して意識を失った。
今までこんなに悔しかった事は無く、もう二度と負けたくないと思ったんだ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...