心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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3章 知名度戦争でもアゲアゲ

57話 世界を左右する試合開始

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「それでは、これより魔族との世界大戦試合を開始します、司会はこのアタシ、戦場の語り手のケロルちゃんと」
「お、おい、本当に言わないといけないのか」


アタシがせっかくノリノリなのに、相方のイバラス君が恥ずかしがってしまって進みません。
いい加減覚悟すれば良いのに、どうしてそこまで恥ずかしいのよっと、アタシは背中を叩いてあげたのよ。


「ほら、皆さんが待ってるわよ」
「だって、別に言わなくて良いじゃないか、名前だけで良いだろう」
「あら、旦那様が先導してくれないのかしら?」
「おおお、お前言ってるじゃないか」


あははっと笑って誤魔化したけど、隣のイバラス君はアタシの肩をポカポカと叩いて来たわ。
もう放送してしまったけど、改めてアタシは全世界にイバラス君と婚約した事を宣言したのよ。


「まったく、別に言わなくても良いだろうケロル」
「そんな事無いわよ、これからも司会をするのよ、アタシたちのファンに報告するのは当然じゃない」
「それはケロルのファンだけだろう、オレにはいない」
「ぬふふ~そう思うかもしれないけど、アタシの旦那様はけっこう人気なのよ」


知らぬは本人のみであるとは言うけれど、本当に人気があって手紙も結構届いていたわ。
アタシと同じくらいで、それもあって婚約を決めたのだけど、世界戦の前にどうしても宣言したかったのよ。


「それでは、個人の事はこの辺にして、選手入場です」


お仕事の時間になったので、アタシと旦那様は選手の説明をしながら紹介し、自分たち個人の予想も入れていきました。
そして、選手が出そろうとお互いのリーダーが前に出て来て、選手宣誓をしたわ。


「さぁ宣言も終わりましたので、最初の試合です、選手は」
「魔族側は怪力で有名な四天王リキゴロンだな」
「さすがはダーリン、良く知ってるわね」
「くっつくな鬱陶しい、それくらい情報としてもらっているだろう」


それは分かっていたけど、和ませるためのお茶目だったのに、アタシの旦那様はまじめに対応してしまったわ。
そして、アタシたち側の選手は、王都の魔法学園でリーダーのリューブ選手に指導を受けた一人、アラサス選手だったわ。


「魔法学園でかなりの成績って話だけど、ダーリンは知ってるのかしら?」
「ダーリン言うなっ!・・・オレは何も知らないぞ」
「はいはい、悔しいのねイイコイイコ」


旦那様を撫でて、舞台に上がる選手に拍手を送るように伝えたわ。
会場でも、観客に当選した5万人の人々が拍手を送ってくれたけど、そんな中で待ったの声が掛ったのよ。


「人種の選手、その役目猫獣人族のナリュミャが代わる」


飛び入りの登場に、会場は大いに盛り上がったのだけど、それを許可するかは代表を決めたミローナ様であり、どうするのかをアタシは聞いてみました。
ミローナ様は、強い者が代表になるのは当然と言う事で許可したので、魔族の代表には少し待ってもらったわ。


「しかし良いのか、こちら側の選手が疲れてしまうぞ」
「それも踏まえているんでしょうけど、不利なのは確実ね」
「それを許可したと言う事は、それだけアラサスが強いか、それ以降に期待しているかだな」
「これは楽しみな展開です、さぁどちらが勝つのか皆さん応援しましょう」


楽しみにしながら開始の合図をすると、開始直後にナリュミャが拳を繰り出したはずのナリュミャが場外に飛ばされたのよ。
何が起きたのか分からず、アタシたちは何も言えなかったのだけど、それを助けてくれたのは人種のリーダーをしてるリューブ選手で、わざわざ司会の席に来てくれたの。


「拳を避けてその勢いを使って投げたんですか」
「そうだ、相手の力を利用した見事な投げだったな」
「それは凄いですね、これはもう決まったでしょうか」
「いや見てみろケロル、ナリュミャはまだ立ち上がったぞ」


旦那様が指を差すと、その先で立ち上がったナリュミャ選手がいたわ。
かなりダメージを受けてフラフラだけど、まだ戦う気でいたのよ。


「や、やるじゃないか、こうでなくては楽しくないね」
「そちらは楽しいのかもしれませんが、ボクはそうでもないです」
「言うじゃないか、ならこれはどうだ【身体強化】【超身体強化】」


ナリュミャ選手が難しいとされる身体強化と超身体強化を使い、アタシは凄いと盛り上げました。
攻撃に移ったナリュミャ選手は姿が消えるほどの速度で、アタシたちは「あっ」っと叫んだんだけど、その直後にさっきと同じく投げ飛ばされたナリュミャ選手が場外で倒れていたんです。


「こ、これはいったい」
「お、オレを見るな、リューブ選手どうなんだ」
「あの速度に達したのは確かに凄いんだが、アラサス選手が使っている技はその速度に対応したんだよ」


そんな事が可能なのかっと、アタシと旦那様が顔を見合って聞いたら、その答えが今の状態と言われ「確かに」っと声を揃えてしまいました。
ナリュミャ選手は、スキルが解除され倒れたままだから、それほどのダメージを受けていて、これで終わりそうな雰囲気が会場を包みました。


「これで終わりか、あっけないな」
「それにしても、アラサス選手は凄いですね、どうやったらあの攻撃を同じように返せるんですかリューブ選手?」
「なに、簡単な事な事さ、アラサス選手はそれ以上の速度で動いている、実力の差が出ていただけなんだ」


だから選手に選ばれたんだと言われ、あの小さな体にはそれだけの力が宿っているとアタシは答えを会場に伝えました。
結局人種の選手はアラサス選手に決まり、やっと本戦が開始できるようになり、魔族側の選手が舞台に上がりましたよ。


「しかし、ナリュミャ選手も強くなったな」
「そうなのですかリューブ選手」
「ああ、獣化も使ってないし、あれほどの速度を出せる者はそうはいない」


戦う選手が20人であれば、絶対に入っていたとリューブ選手が褒めていて、それを個人で身に付けた事を称賛していました。
さすが獣人とアタシも称賛の言葉を贈り、担架で運ばれるナリュミャ選手に会場から拍手が送られましたよ。


「それでは、本戦始めてください」


あれだけの力を発揮したアラサス選手にどう対抗するのか、とても興味が出て来た所、魔族のリキゴロン選手はニヤリと笑っていました。
リキゴロン選手は、アラサス選手を好敵手と認めたのか、真の力を見せると言って闘気を高めてきたんです。


「ボクは嬉しくはないよ」
「それは残念だ、しかしこれを見てもそう言えるかな【真身体強化】」


会場から「おお~」っと言う声があがり、アタシも凄すぎて声になりませんでした。
そんな中、旦那様だけが解説をしてくれて、伝説のスキルと言ってくれたんです。


「あれが出来るのは勇者だけだった、これはアラサス選手が危険ではないか」
「ま、まずいじゃないですか、いきなり死人は困りますよ、リューブ選手止めてください」
「悪いんだがそれは出来ない、この試合はそう言った戦いなんだ・・・だが、心配はいらないよ」


リューブ選手は全然動揺してなくて、舞台を見る様に言って来たので恐る恐る視線を向けると、アラサス選手は身体強化と超身体強化と真身体強化を使ったんです。
そして、ナリュミャ選手の時に真身体強化を使っていたことをリューブ選手が教えてくれて、アタシと旦那様は凄いと声を揃えましたよ。


「凄すぎますアラサス選手、これはまだまだ分かりませんよ」
「し、しかし、ナリュミャ選手との戦いではスキルを唱えていなかったぞ、どうやって使ったんだ」
「なに簡単な事さ、ほんの一瞬スキルを使った為、気づかなかっただけなんだ」


そうすることで、身体に掛かる負担が軽減されるとリューブ選手は教えてくれて、投げ飛ばされたナリュミャ選手の欠点はそこと指摘したのよ。
3つのスキルを同時に使えるのも、そんな負担を減らしているからで、凄いの一言でした。


「さぁどうなるのか、見どころですね」
「勝負は一瞬だ、だから見逃さない様にな」
「とはいっても、オレたちには見えないんじゃないか?」


旦那様の言葉の後、2人の選手が消えて舞台に衝撃が発生しました。
2人がぶつかったのだとリューブ選手が教えてくれて、煙が収まった後に立っていた者が勝者と解説してくれましたよ。


「い、一撃ですか」
「そうだ、それだけの力を両者が込めていた・・・出て来るぞ」
「さぁどちらが立っているんでしょう」


とてもワクワクして土煙が収まるのを待っていると、その姿が見えて来てアタシは勝者の名前を叫びました。
勝者はアラサス選手で、会場からも拍手が沸き上がりましたよ。


「それにしても、あの体格差で良く勝てたな」
「本当ですね、リューブ選手そこの所教えてくださいよ」
「体格差は確かにかなりのハンデだが、アラサス選手は身体の軸を地に固定していたんだ」
「「地に固定?」」


良く分からない事だったけど、軸を固定した事で3mはあるリキゴロン選手の体格差はなくなったそうです。
体格差が無くなれば、後はスキルの多い方が勝つのは当たり前とリューブ選手が頷いていました。


「し、しかし、力だってリキゴロン選手の方が強いだろう、あれだけの筋肉があるんだぞ」
「ふむ、確かに10の筋肉と100の筋肉では100が勝つんだろう」
「そうだよな、それなら何でなんだ?」
「簡単な事さ、10の筋肉を他のモノで補い100以上にしたのさ」


身体強化と超身体強化の差として結果に出たと教えてくれました。
一回戦からとつもない戦いを見て、会場は大盛り上がりだけど、まだまだ続くのでアタシは次の選手も期待と締めくくりました。
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