心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

文字の大きさ
上 下
53 / 63
3章 知名度戦争でもアゲアゲ

53話 ザナルカド戦は魔族の独壇場

しおりを挟む
あたいは、リュウとの約束を果たして、ニコニコして部隊に戻ったんや。


「隊長、どうでしたか?」
「成功やでグラサーもういつでも攻めてヨシや」
「そうですか、部下も久しぶりに発散できると喜んでいます」


空に集まるあたいの部隊100人は、鍛錬の成果を早く見せたいと息巻いていたんや。
勇者に負けて、プライドは打ち砕かれたあたいたちやけど、気功術の使い方をその勇者に教わり自信を取り戻したんや。


「さぁ行くでお前たち」
「イエス・マム」


部下の返事を聞き、あたいは先頭で敵に向かい飛んで行ったんや。
人種の鐘も鳴っていたから、後方からも大砲が飛んできていたし、教会の飛空艇からも飛んできていて、あたいたちは双方から攻撃されている様な状態やった。


「だがしかし、魔族の力を見せつけるには持って来いやっ!」


前方の弾を素手でぶち壊し、あたいはさらに前進したんや。
部下も同じく弾を粉砕し、後方から向かって来た大砲は、振り向きもしないで躱して見せたんや。


「いいでお前たち、鍛錬の成果が十分に出ているやないか」
「当然ですよ隊長、これは我らの救世主リュウ様も見ているのです、無様な姿など見せられません」
「せやなグラサーその通りや」


この戦いは、人種に再戦を伝えると同時に教会を駆逐する事で、間違っても失敗なんて許されなかったんや。
計画では、この戦いが終わった後になる予定やったけど、前倒しになったから部下たちの鍛錬不足が心配やったが、いらぬ心配やった。


「そうと分かれば、予定通りツーマンセルで各個撃破するんや」
「了解、聞いたなお前たち、敵の飛空艇を打ち漏らすなよ」
「「「「「イエス・マイロード」」」」」


部下が別れ、各自の目標である飛空艇に突撃していき、あたいは副隊長のグラサーと共に一番大きな飛空艇に向かい飛んだんや。
大砲も一番多く飛んできたけど、二人で全て砕いて見せ、これで終わりかと突撃して飛空艇に風穴を開けてやったんや。


「どうや、これが魔族の力やっ!」
「隊長、さすがに大きいからまだ飛んでいます、もう一度行きましょう」
「そうやな・・・っと言いたかったんやが、出てきたでグラサー」


動力源部分を貫けば終わっていたんやけど、わざとそうしないであいつらが出て来るのをあたいは待っていたんや。
見事にそいつらは出て来て、あたいはその姿を見て怒りがこみ上げて来たで。


「あれが超化人種ですか、なんともおぞましい」
「せやな、こんな物に同胞が使われていたなんて、本当に胸糞が悪いで」
「早く屠って解放してあげましょう、見ているだけでも辛いです」


グラサーの言う通り、超化人種の中から苦しいと聞こえて来ていて、早く楽にしてやらなくてはいけなかったんや。
身体はデカく気もかなり持っていたんやが、知性は無く攻撃が単調で一撃を躱して反撃すると倒せるが、倒せば倒しただけ悔しくてたまらなかったんや。


「弱い、弱すぎるでこいつら」
「確かに、こんな物を作る為に同胞が犠牲になったと思うと、怒りしかこみ上げてきませんね」
「そうや、戦いとは相手との競り合いが楽しいんや、それなのにこいつらからは何も感じない、胸糞悪いだけや」


同胞の声も聞いてて良い感情は持てないし、戦いが楽しくないなんて初めてだったんや。
勇者との戦いはとても楽しかったし、負けても清々しかったのを思い出し、これが終わればまた楽しい戦いが出来ると心を切り替えたんや。


「これで全部です隊長」
「ヨシ、それなら落としにかかるでグラサー」
「イエス・ユア・ハイネス」


グラサーが所定の位置に着き、あたいは気を口に集めて高め始めたんや。
前に立つグラサーは、両手を上にあげて魔法陣を展開し、あたいはその大きな魔法陣に向けて、新たな必殺技【孤高波】を口から発射し、魔法陣で更に威力を上げて巨大な飛空艇を丸ごと飲み込んだんや。


「跡形もないですね、さすがです隊長」
「はぁっはぁっはぁっ・・・どんなもんや」


大量の気を使う技で、空を飛ぶのもきつくなるほどに大変なんやけど、これをリュウに見せるのがあたいの第一目標やから、無理してでも達成したんや。
部下の方も全て飛空艇を落としていて、後は島に降りて掃討戦だけが残ったんや。


「ちょっと休みたいけど、まだまだいくでグラサー」
「部下に任せて休まれた方が」
「何を言うんやグラサーこれはあたいたちの復活戦やで、そんな無様なマネが出来るわけないやろう」
「それもそうですね、では自分が補佐をいたします」


気を極力使わずに戦えば良いだけで、超化人種を倒した今それも可能だったんだ。
島に降りて、普通の兵士が囲んで来たんやけど、グラサーの軽めの気功波で一掃出来たんや。


「何年たっても弱いですね人種は」
「せやな・・・でも、リュウの率いる部隊はそうはいかんで」
「分かっています、試合が楽しみですね」


予定では、10人の代表者を出す予定で、グラサーもその一人だったんや。
1対1でのバトルでは、溜めの長い孤高波も使えないから、どんな戦いが出来るのか楽しみで仕方なかったんや。


「そうや、こんな奴らで時間を使っている場合ではないでグラサー」
「あれですか、ですがそれを使ったら、もう気は使えませんよ」
「グラサー今使わずにいつ使うんや」
「ど、どうなっても知りませんからね」


ザコ兵士なんていくら来ても怖くなかったあたいは、止めてくれたグラサーの作った魔法陣の上に乗り、地面に気を放出したんや。
魔法陣から多数の気功弾が出現し空に飛んで行き、あたいの気は全てそれに使ってしまったんや。


「はぁっはぁっはぁっ・・・こ、これでどうや」
「教会も他の建物も全て壊れました、成功ですよ隊長」
「そ、それは良かった」


これで復讐も終わったと思ったあたいは、その場に膝を付いて息を整えたんやけど、それは油断になったんや。
遠くから火魔法の矢が飛んできて、あたいはそれに気づくのが遅れ避ける事が出来ず、グラサーが身代わりに矢を受けてしまったんや。


「グラサー!」
「ぐっ!この矢、気の障壁を貫いてきました、お気を付けください隊長」
「だれや、誰がこんな事を」
「くっくっく、それはワタクシよ」


瓦礫の影から出てきたのは、あたいが見た事のある奴で、怒りが一気に上昇したんや。
その女は、リューブと名前を変え冒険者として頑張っていたあたいたちの救世主を追放したPTの女で、名前はミューンと言う奴やった。


「お前、良くもグラサーをやってくれたな」
「安心してくださいまし、あなたも同じく動けなくして差し上げますわ、この破魔矢でね」
「くそっ!気を使い過ぎて身体が動かへん」


矢を向けられ、今にも放たれそうなのに、あたいはもう動く事が出来なかったんや。
グラサーの忠告を聞いて、普通に殲滅戦をしていれば良かったのに、相手を甘く見てしまったんや。


「そんなに悲しそうな顔をしないで、直ぐに改造して最強の化け物にしてあげる」
「まさか、仲間が捉えられるようになったのは、その矢のせいか」
「そうよ、魔族の癖に頭が良いじゃない、これなら良い実験体になるわね」


矢はあたいに向けて放たれ、グラサーが何とか動いてまたかばってくれたけど、次はないのがグラサーの気の低さで分かったんや。
更なる矢が引かれ、あたいはおしまいと女を睨みつけたら女は笑ってきたんや。


「ゾクゾクするわねその顔、最高よあなた、ワタクシのペットにならない?」
「絶対にごめんやね、死んでも嫌や」
「あら残念、でも安心して、改造した後ワタクシが可愛がってあげるわ」


笑いながら女は矢を放ってきて、ゆっくりに見える矢がだんだん近づいて来て、自分の身体に刺さるまでを見ていたんやけど、その矢はあたいには届かなかったんや。
女も驚いていたんやけど、あたいは嬉しくて動かない身体が口惜しかったで。


「どどど、どうしてあなたがここにいますの」
「ミューン、俺は言ったよな、二度と顔を見せるなと」
「ひっ!待って」
「待てるかよ、死ね」


あたいの孤高波並みの気功波があの女に放たれ、女は島の半分と共に消えていったんや。
振り返るそのお方を見て、あたいは敵わないと思う前にかっこいいと思ってしまったんや。


「良かった、何とか間に合ったな」
「リュウ様、どうしてここに」
「グリーナスたちを助けに来たのさ、そっちの部下を治したら逃げるぞ」


人種の部隊が島に降りてあたいたちを探そうとしていて、捕虜になるわけにはいかないからリュウ様が来たんや。
部下は殲滅戦で忙しく動いていて、グラサーを治したリュウ様はあたいとグラサーを担いで飛んで逃げたんや。


「リュウ様、誰かに見られたら」
「それはない、今飛んでる映像板は、俺の作った折り鶴だからな」
「で、でも飛空艇からとか見られる可能性が」
「お前たちが捕まるよりマシだ、平気だから黙って捕まっていろ」


なんだか怒っている感じで、リュウ様もこんな風になるのかと意外だったんや。
結局、誰にも見られずに済み、あたいは無事部隊に戻る事が出来たんやけど、せっかくリュウ様に運ばれたのに抱き着いてなかった自分に後悔したんや。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...