心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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3章 知名度戦争でもアゲアゲ

44話 リューブさんのいない初めての日

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朝起きた私は、王宮で借りている部屋を見渡してガッカリしてしまったわ。


「そうか、リューブさんは今日いないのよね」


私が金のタマゴPTに入って、初めてリューブさんと離れたから、心の支えを失った気分です。
途中で入った私がこんな気分だから、メメルちゃんたちはもっと重い気分を味わっているはずと、隣のベッドを見るとメメルちゃんは寝てなかったわ。


「もう起きてるのかしら?」


いつもなら寝ていて、リューブさんに起こしてもらってるはずなのに、どうして今日は起きてるんだろうと気を探ってみたわ。
メメルちゃんは、みんなと一緒に飛空艇の発着場にいて、リューブさんを待っているのが分かったから、私も朝食を持って向かったのよ。


「ちゃんと寝てはいるみたいだけど、やっぱり寂しいわよね」


数日いなくなると言うだけでこれでは、離れて旅なんて絶対に出来ないと思ったわ。
私もそうだから分かるんだけど、早く帰ってきてほしいと思っていました。


「でも、索敵の範囲には感じないし、もっと遠くにいるのよね」


リューブさんが空を飛んだ事も驚いたけど、みんなも行くと言うのを止めるのも大変だったわ。
今も泣いているんだろうと思っていたら、みんなはそんな事無く訓練をしていたのよ。


「め、メメルちゃん」
「マリューナ、遅かったね」
「な、何をしてるの?」
「何って、リューブ師匠が見せてくれた飛空術を覚えたいのよ」


覚えれば一緒に行けると思って頑張っているらしく、みんなは強いと私は自分が情けなくなってきました。
寂しいのは一緒だけど、昨晩必死に考えて答えを出していて、私も前を向こうと一緒に訓練することを決めました。


「それで、どうやったら空を飛べるのかしら?」
「それは・・・分からない」
「そうよね、あの時リューブさんが見せてくれたけど、それどころじゃなかったものね」
「そうなんです、気を使ってるのは分かってるけど、足から放出してもリューブ師匠みたいに飛べないんです」


足から放出だと、ジャンプした感じで飛び上がるだけで、宙に浮く感じではないらしく、もうそこまで分かっているのかと感心したわ。
何でも吸収してそれを自分たちの力に変える、それはリューブさんの教え通りで凄いと思ったけど、愛がそうさせていると感じました。


「それでね、なかなかうまく行かなくて困っていたのよ」
「そうだったのね、じゃあ私も考えるわ」
「お願いマリューナ、ワタシたちだけじゃもう限界なのよ」
「それなら、ちょっと休憩しましょうよ、朝食を持ってきたわ」


みんなが何時から行っているのか分からなかったけど、気の消費を見る限りかなり前からなのは分かっていて、無理をしているのを感じました。
これでリューブさんが戻ってきたら、きっと叱られると思ったけどそれは皆には言わず、食事を進めながら空の飛び方を話し合ったわ。


「リューブさんは、あの時体勢を変えてなかったし、身体全体じゃないかしら」
「それはアタシが最初にやってみたわよマリューナ、でもダメなのよ」
「そうなの?」
「ええ、全身からだと飛べないのよ」


下向きに気を放出しても同じで、何が違うのかと唸って悩んでしまいました。
そこで、考えを変えて物を浮かせてみようと提案し、みんなでコップを浮かせる練習を始めたわ。


「むむむ~」
「これは難しい」
「二人とも、全然動いてないわよ」


気を放出させるだけで、コップには何も起きません。
それを見て、ブラヌちゃんは放出ではないのかもと言い出し、気の弾を指先に出してコップを覆って見せたの。


「ほらね、気の弾なら自在に操れるわよ」
「本当」
「これなら行けるかも」
「ちょっとやってみましょうか」


全身を気の弾で覆う練習を始めたけど、凄く気を消費してしまい、浮くまでには至りませんでした。
そこで、気を纏うのと同じように弾を身体に纏わせてみると、ちょっとだけ浮く事が出来たのよ。


「やったわ、消費もそれほどじゃない」
「すごいわマリューナ、流石年長者ね」
「ちょっとブラヌ、それだと若くない様に聞こえるわよ」
「ふふふ、そんな事無いわよお姉さま」


とてもそうは思えない返しをして来たけど、これで皆も浮けるようになり、そこからは早かったわ。
ちょっとだけ飛べるようになったのは昼を過ぎた頃で、流石に疲れて座り込んでしまったわ。


「みんな、今日はもう休みましょう」
「そうですね、明日気を回復させれば、きっとリューブ師匠の様に飛べるようになりますね」
「やってやるわ、帰ってきたリューブ師匠を驚かせるのよ」


みんな、戻って来た時に空で抱き付く気でいて、その為に訓練していたのかと笑ってしまったわ。
でも、頑張っているのは確かだし、リューブさんが大好きなのは一緒だったんです。


「でも、無理をして倒れたら、逆に怒られるわよ」
「うっ」
「それは絶対イヤ」
「そうよね、だから無理はしちゃだめだから、しっかりと寝ましょうね」


目の下に黒いクマも出来ていて、みんなが無理をしているのが見て取れたわ。
だからこそ、しっかりと寝て頑張ろうと注意したけど、みんなは良い返事をして素直に従ってくれた。


「良い子たちなのよね、私もそんな純粋さが欲しいわ」


大人の私は、皆みたいに真っすぐではないし、もう戻る事は出来ません。
だから、一人だけ違う感じはあるけど、リューブさんに対しての思いだけは一緒だったわ。


「だから分かるわ、みんなリューブさんにおいて行かれたくないのよね」


リューブさんが空に飛んで行ってしまったあの時、どうして自分たちは飛べないんだろうと絶望感を味わったんです。
だからみんなは練習を始め、次はおいて行かれない様に頑張っています。


「次は絶対に一緒に行く、私もおいて行かれたくないわ」


昼食を摂って休んだ後、夜は外での練習ではなく空を飛んだ時の陣形をどうするのかを話し合ったのよ。
空の場合、上下にも注意しなくてはいけなくなり、固まるのではなく散らばって戦おうと提案したわ。


「確かに、今までの戦い方じゃ通用しないわね」
「でも、バラバラで戦うなんて危ないわよ」
「メメルちゃん、普通の冒険者なら職業で不利な部分があるけど、私たちは違うでしょう」
「そうですけど、リューブ師匠にはそんな指導されてません」


教えて貰ってないと言うのは確かにそうだけど、今回の事でみんなの弱点を見つけてしまったわ。
教えて貰った事と応用は効くけど、それに接点がないとどうすれば良いのか分からない、そんな時の為に私がいるのだと直感したわ。


「メメルちゃん、今私たちがやっているのは、リューブさんが帰ってきてから教えてくれるモノなのよ、教えて貰ってないのは当然なの」
「そうですけど、だからってバラバラになって戦うなんて」
「バラバラに聞こえるけどそうじゃない、陣形を広げているだけよ」


その考えならば、ダンジョンで目隠しで護衛をした時にやっていて、あの感覚かっとメメルちゃんは納得しました。
その笑顔を見て、こんな時の為に私がいて、リューブさんに背中を押された気分でしたよ。


「じゃあ、さっそく位置取りを決めましょう」
「そうね、これなら確かにいけるわ」
「気功弾も仲間に当たらない様にしないとですね」


作戦を色々と決めていき、夜はぐっすり寝る事が出来た私たちは、次の日には自在に飛べるようになりました。
でも、速度を出すと大変で、残りの時間は早く飛べる練習をして過ごし、リューブさんが帰ってきた時、みんなで空を飛んで驚かせる事に成功したんですよ。
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