心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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2章 知名度広がる

39話 勘違い男の復讐

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村の復興が決まり、俺たちは王都に向かって戻り始めたんだが、途中で隊列を組んでいる部隊に止められ、サリーヌ様が話をしても聞く耳を持たなかった。


「参ったな、まさかここまでバカとは思わなかったよ」
「リューブ殿、あの者を知ってるのか?」
「イヤですが知っています、今叫んでいるのはベベールドの冒険者ギルドでギルドマスターをしていた男です」


名前は知らないけど、貴族の位を持っていたから、家の力を使って復讐に来たのが叫ばれている内容で分かったんだ。
しかし、王族のサリーヌ様が止めているのにそれを聞かず、投降しなければ5分後に攻撃を開始するとか言って来ていたから、俺たちは呆れてしまっていたんだ。


「ワタクシの国の貴族にこんなバカがいたのも問題であるが、王族と言ってるのに確認も取らないのが一番の問題であるな」
「まったくですね・・・ここはひとつ、俺がせん滅してきます」
「すまぬが頼んだぞリューブ殿」
「元々俺に用がある奴ですから、兵は残してあいつは処罰してきます」


あの時、次は容赦しないと言ったので、もう手心は加えないし、俺も怒っていたから許す気はなかった。
兵の数は100人で、完全武装のフルアーマーを纏い、歩いて俺だけが近づいても隊列を崩さないから、訓練は十分にされているのが分かった。


「だからこそ惜しいな、ここまで出来る家なら、さぞ国に貢献できるだろうに」


後継者が優秀でなければそれも意味がなく、あいつが継いだらおしまいなんだろうとがっかりしたよ。
ある程度に距離を縮めた俺を見て、あの男が前に出て来て投降するのかと笑って言ってきたが、俺は直ぐに否定して見せたよ。


「ほう、この数に勝てるつもりかな?」
「お前こそ分かってないな、魔族と対等に戦える俺に対して、この数で勝てると思っているのか?」
「くっくっく、その対策をしてないと思ったのか、この者たちは対魔族用に訓練された者たちなんだよ」
「ほう、それはまた勿体ないな」


装備が普通じゃないとは思っていたが、戦い方も違うらしく、元ギルドマスターが手を俺に向けると兵士たちが剣を抜いて来た。
その剣先の一つから火の魔法が発射され、俺はそれを腕ではじいて見せたよ。


「魔剣か」
「くっくっく、分かっても遅いぞ、全員ならまず防げないだろう、やってしまえっ!」


元ギルドマスターが命令を下し、100人の兵から火の玉が射出された。
しかし、俺は呆れる感情が増してがっかりしていた。


「この程度で魔族に勝てるなら、俺はあの時ケーオンたちを突き放してはいない」


下級の魔族なら、30発で1体くらいは倒せるかもしれないが、中級はまず倒せないし、上級や四天王クラスになったら足止めにもならない。
それだけ気を纏っている相手は強いし、それを知らない者が多すぎると思ったんだ。


「俺が魔王を倒したのは失敗だったかな」


被害を受けても、みんなで強くなって兵と協力して戦う選択をしていればっと、そんな後悔が押し寄せてきたよ。
火の玉を弾きながら、魔族が再度襲ってくる危険性を想像してしまったよ。


「それに、空も飛べる魔族が相手だから更に困る」


飛空艇で応戦しても勝てないから、こちらの部隊は戦う前に船を落とされてやられてしまう。
こちら側の対策がこの程度と分かり、気功術以外にも対策を考えないといけないのが良く分かったよ。


「教えてくれたお礼に、せめて苦しまない様にしてやるよ」


気を指先に集め、元ギルドマスターに向けて指差して放出した。
収束させた気は、元ギルドマスターの眉間を貫いても勢いは衰えず、被っていた兜も貫き遥か後方の山にまで飛んでいた。


「これで終わりだが、後ろの指揮してる奴がまだ残ってるな」


気を探ると、そいつだけとても弱くあいつに似てるので、協力してる家の者なのが分かったよ。
魔剣の攻撃が止み、俺は撤退するように伝えたんだが、姿を現さないそいつは遠くから投降を要求して来た。


「姿を見せないで良く言うな」
「分かっているぞ、カゲーシがやられたのは姿を見せていたからだ、このまま魔法を撃ち続ければオレたちが勝つ」
「なんとも楽観的だな、だったら魔剣が撃てなくなるまで続ければ良い」
「言われなくてもそうするさ、皆の者攻撃を開始しろ」


声だけで指示を出し、兵士が魔剣を使った攻撃を再開した。
しかし、俺のガッカリな感情は、持久性の無い対策を見て更に増してしまった。


「なんだよ、10分も打ち続けられないじゃないか、そんなので魔族に勝てると思ってるのか?」
「そ、そんな馬鹿な、教会の超化人種も倒せる攻撃だぞ」
「そうか、あいつらの呼び名は超化人種って言うんだな」


聞く前に倒してしまったし、底辺な研究の競い合いをしているとがっかりしてしまった。
これだから、あの時仲間になったのはエルフと獣人で、人種はあの時唯一の10星冒険者のケーオンだったんだ。


「そうか、もう出会っていたのか」
「超なんて呼ぶほどの奴らじゃなかったが、そんなだから俺の様な被害者を産むんだよ」
「何を訳の分からない事を言っている」


他の世界から召喚するとか、相手の事情関係なく強引過ぎと言いたかったが、正直元の世界に未練のなかった俺にはどうでも良かった。
倒れる兵士のおかげで標的は見えるし、もう倒してしまおうと指を向けたら、奥の手とか言って禍々しいオーラを出している剣を抜いて来た。


「おいおい、魔剣の中でも相当な代物だな」
「クックック、こいつは使用者の魂を食って力に変えるんだ」
「そうか、だったら早くしろよ」


魂を食わせる程度で魔族と対等になるのなら、ケンスダは超化人種になってないし、そもそも扱う奴の基本スペックが低すぎた。
剣と一体化し始める男は、確かに巨大になって力も凄そうだが、理性は残らず言葉も発する事の出来ない化け物になったよ。


「やれやれ、これなら超化人種の方がマシだな」
「ここ、ココココ~」


変な鳴き声を発し、触手の様な腕を伸ばして攻撃して来たから、俺はそれを避けて情報を集め始めた。
動きは超化人種よりは劣り、力も半分程度と分かったが、基本スペックの差を考えるとアリかもしれないと思ってしまった。


「しかし、あの魔剣の希少性を考えると、足りないんだよな」


兵士の使っていた魔剣1万本並みの希少性で、兵士が使っていた魔剣も希少だからダメだったんだ。
魔剣を作れる腕の鍛冶師を酷使したのは言うまでもなく、どれだけの資金を使ったのか想像できなかったよ。


「もう分かったから、お前は消えろよ」


触手攻撃から食らいつきに変えたのか、身体の上部が半分に分かれて内部が見えた所で、俺は有名なあの構えをして気を集中させて発射した。
化け物は吹き飛び跡形もなくなったが、俺の気功波は空に浮かんでいた雲を吹き飛ばし空を貫いて行ったよ。


「ちょっとやり過ぎたか」


せっかくだからみんなにも見て貰いたくて張り切ったんだが、メメルたちは凄すぎてマネできないと言って来たよ。
あの威力にならなくても、あの気功波は有効に使えるので教えたが、近くの岩を破壊する程度の威力しか出せなかった。


「もう少し威力を上げないとダメだが、上手く出来てるぞ」


ヨシヨシと撫でていくと、みんなも喜んでくれたんだが、サリーヌ様たちはそれどころではなく、国の政策が間違っている事の問題点を挙げていた。
教会とは関係はないが、もっと研究して強くならなくてはいけないっと、俺に何か案はないかと聞いて来たよ。


「そう言われても、魔剣は専門外だし、魔道具も作った事無いな」
「しかし、ワフウの装備は凄いであるから、専門家と話してみてはくれないであるか」
「まぁ王都にいる間なら良いですが、力になれないかもしれませんよ」
「それでもかまわん、何がきっかけになるかもしれないであるし、魔族との戦いは避けられないのである」


良く分かっているサリーヌ様は、急いで他の対策を見つけたい様で、戻ったらすぐに専門家を呼ぶことが決まった。
皆を鍛えるのに忙しいのだが、この国に腰を下ろす事を決めたわけだし、これくらいは仕方ないっと、王都に戻る移動を開始した。
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