心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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2章 知名度広がる

37話 規格外過ぎる

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ハウスの地下には訓練場があって、アタシとピューミは金のタマゴPTと共に戦技の訓練に入ったのだけど、ただ座って目を閉じるように言われたわ。


「よし、みんな準備は良いな」
「「「「「はいリューブ師匠」」」」」
「あの、この後は何をするのですか?」
「ピューミさん、リューブ師匠はお返事を待っていますよ」
「そうだけど、目を閉じて座っているだけなのよメメルちゃん」


金のタマゴPT全員にジッと見られ、アタシもピューミも返事を返しました。
なんだか、子供の頃にお勉強をした教会を思い出したけど、内容は全然違くて驚いて目を開けてしまったのよ。


「おいおい、目を開けたら解除されてしまうだろう、もう一度閉じて座ってくれ」
「で、でも・・・何なのよあの空間」
「あれは、イメージ空間と呼んでる場所で、頭の中で訓練が出来るんだ」


だから疲れなくて済むとリューブ殿は得意げだけど、本来戦技は数年かけて会得する物だからビックリです。
投稿されている映像でも剣術を簡単に覚えていたし、規格外なのは分かっていたけど、ここまでとは思いませんでしたよ。


「まさかここまでなんて」
「悪いんだが、驚くのはこれからでまだ先があるんだぞ」
「え!・・・それってどういう事ですか?」
「あの空間ではな、時間がとても早く進むんだ」


この部屋限定で、リューブさんの誘導が無いといけない場所らしく、ここでの1時間は1年になるそうです。
それを聞いて、アタシはもう驚きを通り越して呆れてしまったわ。


「そんな顔をするなよマリネル殿、これでも君たちを信じてここに招いてるんだぞ」
「それは分かるわ、こんな事を知ったら誰でも使いたくて殺到するわよ」
「そうなんだが、実は簡単には使えないんだよ」


アタシたちは普通に入って来たし、ただ座って目を閉じただけに感じていたけど、何か条件があるのが分かったわ。
とても幸運なのだから、アタシは信じて目を閉じてみんなが待つイメージ空間に入ったわ。


「遅かったわねマリネル」
「ピューミ、あなたどうしてそんなに落ち着いてるのよ」
「だって、夢の中にいる感じでホワホワして気持ち良いじゃない」
「まったく、呑気ねあなた」


同僚に呆れてしまったけど、メメルちゃんたちも落ち着いていて、その気持ちがだんだんアタシにも流れて来るのが分かったわ。
この空間では、精神がとても穏やかになるようで、リューブさんが姿を見せても質問をしないで待っていました。


「それでは、みんなに中級スキルである【闘気上昇】を教える」
「と、闘気上昇って、あの闘気上昇?」
「ああ、上位の冒険者が5年かけて会得するスキルで、これを覚えないと上級武技は扱えない」
「闘気を溜めるのに時間が掛かるからよね」


その通りっと、リューブさんは基本スキルで必須と言ってきますが、ここでの時間が特別でも5年(5時間)は掛かり過ぎると思ったのよ。
でも、リューブさんは半年(30分)で覚えると言って来て、心が安定してたアタシも流石に動揺したのよ。


「不可能です、そんなに簡単に覚える事が出来るなら、他の人たちにも教えるべきですよ」
「そうしたいんだが、これを公表すると魔族が強くなるからダメなんだ」
「魔族って、魔王がいないからもう平気なのではないですか?」
「そうじゃないんだピューミ殿、魔族は今力を蓄えている状態で、実力のある者が現れれば必ずまた襲って来る」


その手助けはしたくないっと、気功術を外で教えない訳も理解できました。
そして、今回の訓練が一番魔族には危険で、上昇の仕方を教えたら気功術の次の段階を会得されると教えて貰ったわ。


「通常の場合、闘気は身体の中で溜めるモノだが、この訓練では外に放出して高める練習をするんだ」
「つまり、身体の闘気を減らして負荷を与え、上昇する速度を上げるんですね」
「正解だマリネル殿、外に放出する速度が早ければ早いほど良い」


放出する速度が予定の速度になればスキルを覚える事が出来て、アタシたちは闘気上昇を覚えて外に出れると指示を受け、早速闘気を手の平から出す練習に入りました。
武器に闘気を流すのとは違い、なかなか出す事が出来なくて、こんなに難しいのかと思ったわ。


「ダメ、全然できないわ、ピューミはどう?」
「ワタシもまだ出来ないわ、何かコツはないかしらね」
「やった事無いから分からないわ、メメルちゃんたちは・・・出来てるわね」


ウソっと、ピューミと一緒にみんなに視線を向け、なんで出来るのかと驚いたわ。
その答えは、気功術でいつもやっている事と似ているからで、アタシとピューミは気功術を覚えたくてリューブさんにお願いしました。


「二人なら良いが、セバサス殿とラキン殿も一緒に受けるよな」
「それでも良いです、サリーヌ様を守る為、どうしても強くなりたいんです」
「その気持ちは分かるし、今後必要だな」
「もしかしてリューブさん、ワタシたちがそれに気づくのを待っていました?」


自らが答えを出し理解するのが一番早いっと、リューブさんが笑いながら答えて来て、教えて貰った方が早いと二人で同時に返しました。
でも、リューブさんはそれでは理解できないと言って来て、何が違うのか分からなかったわ。


「良いか二人とも、知識で知ってる事と体験するのとは違うだろう、それと同じなんだ」
「つまり、自分で答えを見つけた時は、体験したのと同じって事ですか?」
「そうだ、君たちは主を守る為に必要な必死さが足りなかった」


この先、サリーヌ様を守れるのは4人だけで、その危険性に気づいていればもっと早く訓練に参加していたと言われたの。
それがなかったから、アタシたちが今の状況を分かってないと知り、ちょっと困っていたと笑われたわ。


「それなら言ってよ、じゃないと分からないわ」
「実はな、この場所に来るには心構えも大切で、本当に自分に必要と思っていないと入れないんだ」
「なるほど、だから自分で答えを出さないといけなかったんですね」
「そういう事だピューミ殿、サリーヌ様にお願いすれば訓練の参加は出来た、しかしそれではここには来れず、通常の訓練で半年も時間を掛けなくてはいけない」


訓練は他にもしたいのに、それでは間に合わないとリューブさんは難しい顔をしていたわ。
心の問題は難しく、前の仲間の時に苦労したとリューブさんは悲しそうだったわね。


「そういう事だから、二人もセバサス殿とラキン殿に言ってはダメだぞ」
「も、もしかして、アタシたちって凄いことしたのかしら」
「実はそうなんだ、あの二人は何か抵抗を感じている様で、俺に指導をお願いしてこない」
「あの二人は元貴族だから、きっとプライドが邪魔をしているのね」


気功術は教えられるけど、それ以上にはなれないとガッカリしていて、アタシとピューミには期待してるとかジッと見られたわ。
とても真剣な目で見られてかなりドキドキしたけど、期待を背負ってちょっと緊張しましたよ。


「そんなに緊張するな、君たちなら出来るさ」
「そんなの分からないじゃない」
「そうですよ、未来は誰にも見えません」
「だから努力するのさ、君たちはその一歩を踏み出した、それは大きな一歩だぞ」


まだ立ち止まっているセバサス殿とラキン殿とは違うと言って貰えて、アタシはちょっとだけ自信が付きました。
でも、放出はまだ出来ないし、訓練の成果は出てないから不安だったわ。


「でも、不安ですよリューブ殿」
「ピューミ、不安ならば尚更努力を止めてはダメだ、まず訓練だよ」
「そうでしょうか?・・・そうですね」
「ああ、真剣に努力すれば裏切らない」


強い言葉を貰い、アタシたちは訓練を再開し、イメージ空間の中で半年を掛けてスキル【闘気上昇】を覚えました。
そして、元の空間に戻って来て、リューブ殿にお礼を伝えたんです。


「お礼を言うのはこっちだよ、おかげでメメルたちも学ぶことが出来た」
「アタシたちは何も教えてないですよ」
「いいや、二人の覚悟はとても大切だ、今後の護衛でそれが出るだろう」


今までのダンジョンでの護衛は、それなりに守る意識はあったと思っていたけど、リューブ殿はそれでは足りないと思っていた様で、これで更に真剣に護衛をしてくれるとメメルちゃんたちに期待していて、サリーヌ様もアタシたちにそんな期待を持ってくれていると感じたのよ。
それに気づかせてもらえて、リューブ殿にはとても大きな恩が出来てしまったわ。


「これが自らが理解すると言う事なのね」
「選ばれた4人の中に入ったのだから、ワタシたち覚悟はしていたけど、そうじゃなかったのね」
「ほんとねピューミ・・・ありがとうございましたリューブ殿」
「良い目をするようになった、これならサリーヌ様は大丈夫だな」


命を賭けてサリーヌ様を守る覚悟はあったけど、それでも足りない事が分かり、アタシたちは前に進む覚悟が出来ました。
死ぬ覚悟ではなく、その命を使って出来る事を考えるのが大切で、どんなことをしても強くなろうと思ったわ。


「これからもご指導お願いしますリューブ殿」
「こちらこそだ・・・っと言いたいが、別に自分を犠牲にする必要はないから、無理は絶対にするなよ」
「でも、そうしないとサリーヌ様を守れませんよ」
「それはそこまでの窮地になった場合だ、今はまだその時じゃない」


そんな場面になる前に訓練が必要で、リューブ殿はその為の力を与えてくれると約束してくれたわ。
その一言はとても重く心に染み込んで来て、メメルちゃんたちが信頼するのが理解でき、アタシたちはリューブ殿の生徒になりました。
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